お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
やべぇよやべぇよ。
旧音楽室の無断使用、それも庶民の娯楽であるガンプラを大量に持ち込んでGPDの筐体まで設置してることがバレてるってことは、最悪……いや、十中八九退学案件だ。
お、終わった。私の学生生活が。
「まずはお二人にご説明させていただきたいのですが……旧音楽室の件につきまして、把握しているのは、今のところ私だけです」
アマガセ会長は卓上に置いてあったロイヤルミルクティーへ優雅に口をつけると、あどけなさの残る童顔に楚々とした笑みを浮かべながら、私たちへと言い放った。
会長しか無断使用について把握していない、というのは朗報だったけど、言い換えればそれは、彼女の気分次第で私たちの運命をどうとでもできるということだ。
私とルカが退学になるだけならまだしも、シナノちゃんやサヒメちゃんにまで迷惑がかかる可能性を考えれば、ここでなんとかアマガセ会長を説得するしかない。
「ええ、と。つまり、どういうことでしょう……?」
シラを切るのではなく、恐る恐る会長の真意を問う。
生徒会長がわざわざ「自分しか問題を知らない」という情報を明かしてくれたということは、なにかしら個人として私たちに接触する目的があるということだ。恐らく。
つまるところ、会長は私たちになんらかの取引を持ちかけてくる可能性が高い。
「ふふっ、ご想像の通りです。ですから、私と取引をしましょう。ヤエザクラさん、シロガネさん」
「取引……つまり、わたくしたちはなにを差し出せばよいのでしょう?」
「お金……なんて単純な話じゃありませんよね」
「はい。率直に申し上げるなら、あなたたちお二人の力を貸してほしいのです」
アマガセ会長は、屈託のない笑みを浮かべる。
笑顔は本来攻撃的な云々とは聞くけど、今のところ会長から敵意だとか、私たちを追い詰めようとする意図は感じられない。
あくまでも友好的に接してくれているということは、私たちの身柄をどうこうとか、そういう話ではないだろう。
「力、ですか?」
「はい。この百合籠女学園は、伝統と格式を重んじ、一流の淑女を輩出するために作られた学園です。それ自体はあなたたちもよく知るところだと思います」
「ええ、それはもう」
ルカはどこか会長を挑発するように微笑み返す。
わー、わー! この人めちゃくちゃ偉い人! 機嫌損ねたら私たちどころかロミカやシナノちゃんたちまで迷惑かかりかねない人!
刹那主義を極めているルカには、今この瞬間が全てなんだろうけど、少しは周りや未来のことも考えてほしい。
「シロガネさんは退屈がお嫌いでしたね」
「はい、とても」
「でしたら、どうでしょう? ヤエザクラさんと共に、この学園の伝統へ少しだけ逆らってみるのは」
「ええ、と……?」
困惑する私と、相変わらず会長を見定めるような視線で見据えているルカを交互に見遣って、アマガセ会長は言い放った。
「この百合籠女学園に『模型部』を設立するのです。もちろん、ヤエザクラさんとシロガネさんの活動も遡及した上で公認する形で」
「まあ、素敵なご提案ですね」
「模型部……」
会長の言葉に、夏休みの記憶がよぎる。
確か「姫百合交流会」で行ったことがある姉妹校の「百合星女学園」には模型部があったはずだ。
生徒会役員は「姫百合交流会」に必ず参加しなければいけないから、会長もそこで刺激を受けたんだろうか。
「良くも悪くも百合籠女学園は伝統と秩序を重んじています。ですが、時代に抗うだけでは錆びつき、形骸化する──これからの時代に相応しい、新たな淑女を育てる土壌を、私は作りたいと思っています」
確かに、会長が言う通り、今の百合籠女学園は、カビ臭くて閉塞的な昭和の上流階級社会をそのまま再生産しているだけだ。
庶民との交流を認可した百合星女学園とは文化がまるで違う。
悪く言えば、時代に取り残されている。
「今はガンプラや模型活動も立派な芸事として認められている時代です。そこに百合籠の名を残せないことは、学園にとっても大きな損失となるでしょう。ですから──模型部、作っちゃいましょう♡」
アマガセ会長はいたずらっぽく笑った。
最高にロックな提案ね。
私たちの代だけでなにかが変わるわけではないだろうけど、それでも「模型部ができた」という事実はいつか、この大ガンプラ時代を生きる淑女の卵たちの価値観を少しずつ変えていくことだろう。
「わたくしたちが自由に活動できるのなら、わたくしはなんでも構いませんわ。ミキはどう思います?」
「私も同感。学園のためとか未来のためとか──ぶっちゃけ、建前ですよね?」
私は確信をもって、アマガセ会長に問いかけた。
「はい。お二人やキソジさんにクワジマさんだけがガンプラを楽しんでるなんて、ずるいじゃないですか」
要するに、自分も大っぴらにガンプラを楽しみたい。
それこそが、アマガセ会長の提案であり目的なのだ。
だったら、乗らない手はない。生徒会公認で好き勝手できるなら、もう、こそこそ隠れる必要もないわけだし。
「わかりました。その提案、受け入れます」
「ふふっ、ありがとうございます。模型部が正式に設立した際にはまたお伝えしますので、よろしくお願いしますね」
「「よろしくお願いします」」
私とルカは、カーテシーを添えて生徒会長へと一礼した。
模型部設立の暁には、一代限りとはいえ、アマガセ──ミク会長が部長となるのだろう。
正式に認可されたとなれば生徒会との折衝やら他の部活との交流やら姫百合交流会とか、めんどくさいことも多々あるけど。
ガンプラを一緒に楽しめる同志が増えたってだけで、私は十分満足だった。
「ああ、それと──『ミキ』さん、『ルカ』さん」
「はい?」
「なんでしょう?」
「バトルフェスで相見えること、楽しみにしています」
では、ごきげんよう。
それだけ告げて、ミク会長は仕事に戻っていった。
そうね、まずはバトルフェスよね。
テーマは「宇宙海賊」。
ミク会長だけでなく、ヒオリさんも待っている──そして恐らく原作的に考えて、チャンプが来る可能性もある。
全く、どんな戦いが待っているのか、楽しみで疼いてくるわね。
会長もまだまだ遊びたいお年頃
登場人物の設定資料集はあった方がいいですか?
-
あった方がいい
-
必要ない