お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
【速報】衣替えの季節、始まる
「それで、模型部の部長になるってことなんですか……へへ……」
私の髪を梳きながら、ハレが呟いた。
てっきり部長はミク会長がやってくれると思っていたけど、どうやら生徒会や理事会との交渉とか政治的な案件が多すぎるせいで、部長までとても兼任していられないんだとか。
で、ハレが言った通り私にお鉢が回ってきたわけ。
まあ仕方ないわよね。
ルカはお世辞にも部長向きとは言えない性格だし、シナノちゃんやサヒメちゃんは中等部だし。
正直なところ、面倒だって気持ちはあるけど、あの狭苦しい学園内で大っぴらにガンプラへ没頭できるメリットはある。
交渉とかは正直得意じゃないんだけど、今まで猫被って稼いできたお嬢様ポイントを使ってそこはなんとかしていくしかない。
「お嬢様が実質ヤエザクラの当主にご就任されてから、私たちの待遇もすっかり良くなって……本当に、感謝してます。きっとお嬢様なら、学園にも新しい風を吹き込めるはずですよ」
「そうかしら。でも、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
庶民とお嬢様。
厳重に境界線を引いて教育することで、保ってきた伝統と秩序が百合籠女学園にあることは否定しない。
だけど、もうそんな時代は終わったのだ。世はまさに大ガンプラ時代。
庶民もお嬢様も関係なく没頭できて、参入するハードルもGPDよりは圧倒的に低くなり──もう、社会インフラになりつつあるGBNを知らないで生きていくのは、無理がある。
時代遅れの遺物として後進たちがバカにされないためにも、学園の将来的なブランド価値の向上のためにも、ミク会長の判断は間違っていない。
でも、それに乗っかったのは未来のためとかじゃ断じてない。
「だけど、ハレ。私はただ、私が気持ちよくなるために生きてるだけよ」
そう、ルカと一緒にバカやって、青春を謳歌するために私は生きているのだ。
未来の百合籠女学園がどうとか淑女がどうとか庶民がどうとか──そんなのは、全部建前だし関係ない。
好き、という以外にやる理由はないし、そこに外野があれこれと罵詈雑言をぶつけてきたとしても、やめる理由にはならないのだ。
「お嬢様、学園へ送る支度は完璧にできている」
「ありがと、キョウ。ハレも朝ごはんと髪の毛と服、ありがとうね」
「へへ……もったいないお言葉です。それではお嬢様、行ってらっしゃいませ」
ハレにツインテールを結ってもらって、私はドレッサーの椅子から立ち上がった。
はてさて、冬が近づいてきたのもあって、衣替えの季節だ。
袖を通した冬服に、過ぎていった時間の重みを感じながら、私は学園へと送ってもらった。
†
「ここが新しい模型部の部室……」
放課後、新校舎の部室棟に新しく設けられた広々とした部屋の前で、私は思わず息を呑んでいた。
防音もしっかりしてるし、作例を飾る棚とかを置くスペースも十分に確保されている。
私とルカたちを案内してくれたミク会長は、にこにこと、いつも通りに柔らかく微笑んで、部室の中に通してくれた。
「はい。設備はまだ揃っていませんけれど、そこについては問題ないですよね?」
「そうですね」
「ふふっ、よかったです。では今日の活動は、お引っ越しからですね。ツミキ部長?」
「やめてくださいよミク会長、成り行きでなっただけなんですから……」
「くぁ……なんでもいいですけれど、それよりもバトルフェスの話はどうなったのでしょう?」
私がおだてられた気恥ずかしさで顔を赤くしていると、ルカが退屈そうに欠伸をして、問いかけてくる。こいつ本当に堪え性がないな。
それはさておき、バトルフェス。
ミク会長も、百合星女学園の生徒会長にして、GBN個人ランキング5位のヒオリさんも出場してくる蠱毒の壺。
「テーマが『宇宙海賊』だからなんかそれっぽい装備とかを新調しないといけないのかしらね」
「宇宙海賊といえば……やはりクロスボーン・ガンダムでしょうか」
「他にもGレコのメガファウナ組とか、あとはAGEのビシディアンとか……探せばいっぱいあるわよ」
「鉄血のブルワーズもなのです!」
ぴょこぴょことジャンプしながら、シナノちゃんが手を挙げる。
いたわね、そんなの。
ガンダム・グシオンがカエルっぽかった時代が懐かしいわ。
「では、わたくしたちのガンプラはそういった方向で改修する必要があるのでしょうか? アマガセ会長?」
「ふふっ、宇宙海賊のような装備や意匠──極端な話、ダイバールックさえあればエントリーできますよ? 元々はフェスなので、条件は緩いんです」
「そういえば、ベアッガイフェスも参加条件とかなかったわね……」
リクくんたちはベアッガイの被り物してたけど、あれも強制じゃなかったし。
「あくまでテーマの枠組みの中でどう楽しむか。戦いが持ち込まれても、フェスの本質はそういうものですから」
「じゃあ、別に機体を無理に改修する必要はないんですね。ダイバールックかぁ……衣装ガチャ引かないとなぁ」
「いずれにせよ、お引越しが終わってからですわね」
ルカが言う通りだ。
既にミク会長のおかげでガンダムベースにあるようなGBNの筐体は8台持ち込まれているから、あとは旧音楽室から色々持ってくるだけだ。
なんとなく名残惜しくもあるわね。
──なんて、感傷に浸ってる場合でもないか。
バトルフェスで私たちが喧嘩を売ったのは圧倒的な格上。
今のままで勝てるかどうかでいえば勝てる確率の方が遥かに低いだろう。
一旦、新部室棟を後にしつつ、私は頭の中で考えを巡らせる。
ライトニングゼロは、今の私に詰め込める技術を詰め込めるだけ詰め込んだものだとは自負しているけど、それだけじゃ、きっと足りない。
なんせ、本編でチャンプがリクくんとオーガを相手に戦ったときの塩試合ぶりを見れば、トップ5に入っている相手がどういう戦いをしてくるのかは大体想像がつく。
相手の間合いに絶対に入らないし入れさせない──無慈悲なマジレスに対抗する手段を持たなければ、きっと勝てない。
こればかりは気合いでなんとかならないからこそ、ルカもきっとあれこれと頭の中で考えを巡らせているのだろう。
上等じゃない。
対戦ゲームってのは、ジャイアントキリングしたときが、一番脳汁ドバドバ噴き出てくるんだから。
しゅっしゅっ、とシャドーボクシングしつつ、私は旧音楽室へと歩いていく。
今の自分がどこまでやれるのかを知るためにも──ライトニングゼロに、改造はしないと、心に固く誓って。
第4章開幕です、あと登場人物紹介は気力が出たら作ります
登場人物の設定資料集はあった方がいいですか?
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あった方がいい
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必要ない