ガンダムSEED DESTINY~獅子と悪魔~ 作:天使 鈴
『繰り返しお伝えいたします。本日深夜、オーブの内閣府官邸で爆発があり、一人が死にました...その人はカガリ・ユラ・アスハです』
『犯行声明は無いので、警察は全力で犯人を挙げていく様子を見られます。ちなみにオーブの市民は不安にしておられます』
『外出は控えてください。犯人はどこに潜んでいるかも知れませんので...』
『続いては次のニュースは...』
オーブの平和は少しずつ壊れていく―――――
――――――カガリの部屋に爆発する前、1時間前―――――――
「アレックス・ディノ、入ります」
「ああ、入ってくれ」
アスランは、コンコンと目の前の戸を叩き、
部屋の主がそれに答え、彼はドアノブをまわして部屋に入る。
ユウナ本人は、部屋の中央部に置かれた事務用の机の上につまれた書類と向き合っている最中だった。
「アレックス、来たよね」
「これは...どうしたの?」
「ん?ああ...いつものことだから。席に座ったら?」
そこまで言うとユウナは大きくため息をつき立ち上がる。
「君は何か飲むかな...ウイスキーは飲める?安物だけど...」
「ええ、まあ。しかし、今は仕事中では...」
「いいのいいの...飲まなきゃどうもね」
彼はタンブラーグラスを棚から取り出してロックアイスを入れ、ウイスキーを注ぎ、
炭酸水の小さなボトルと一緒に机の前に置いてあるテーブルに置く。
ソファに座り、アスランに向かいに座るよう言い、アスランもそれに甘え、
「失礼」
アスランも前に置かれたグラスを手に取ると、クッと一口飲み、
それを見てユウナは、少し間をおいて切り出した。
「実は相談があってね...」
「え?何ですが、相談だって?」
彼は机の引き出しから一枚の紙切れを取り出すと、
またソファに向かい、それをテーブルに置きながら座った。
一枚のチケットであった。
「...プラント行きのチケット?」
「うん、これが多分最後の便になると思う。...率直に言おう。君にはプラントに行って欲しい」
「.........」
ユウナの発言にアスランは唖然となって、
「これからオーブはどんどん悪い波の中に飲まれる事になる。君は『アスラン』になれ」
「それは...!?」
「君に『アスラン』に戻って欲しいっていうのは、カガリの為だ」
「カガリの......?」
「そう、『アレックス・ディノ』には出来なくても、『アスラン・ザラ』に出来ること。
多分、君も大凡察しはついてるはずだ...僕は閣僚として、『中』からオーブを守る。
君にはアスラン・ザラとして『外』からオーブを守れるようになって欲しい...
オーブを守ること、それはそのままカガリを守ることに繋がる。そう思わないか?」
「......」
アスランは考えるように俯き、
「頼む、アスラン。......同じ女性を、カガリを愛する男として、どうか、僕の願いを聞いてくれ」
ユウナは出会って初めて、アスランに頭を下げた。
アスランは、胸中でユウナに対する対抗心や嫉妬が熔けていくのを感じた。
目の前の、ついさっきまで嫉妬の対象ですらあった青年の言葉に嘘など微塵もなく、
心底カガリとオーブのことを考えての発言だということもハッキリと感じられる。
もし、これが演技だとすれば、ユウナは稀代の役者であろう。
「......わかりました」
アスランは静かにそう告げると、グラスを手にとって、スッとユウナに差し出す。
ユウナは前までのにやけた笑いでなく、心の底から安堵した表情を浮かべて、
グラスをアスランのそれと打ち付けた。
チンッ......、部屋に響く小さな音が、とても長く大きな音に、二人は聞こえた。
「で...すぐにオーブから出発したほうがいい。伝言はあるか?」
「...『オーブに帰ったら、結婚しよう』と言っといて」
「僕に言ってもいいのか...?」
「信頼しているから」
「ふ...分かった。伝えとく」
アスランは立ち上がって、部屋に出てゆく...
「...アスランとユウナはバカだな...カガリは、結婚する男を前から決まっている...
でも、僕達がオーブを滅ぼすのは運命だから...せいぜい抗ってくれよ」
シンは盗聴器を耳から外しながら言う......