ガンダムSEED DESTINY~獅子と悪魔~ 作:天使 鈴
「――できれば事前にアポの一つでも取ってくれると有難かったのだがね」
数分前に立ったばかりの椅子に再び腰を下ろしながら、ギルバート・デュランダルは穏やかに言った。多忙の塊がようやくひと段落し、僅かな時間の休息を得るべく帰宅しようとした折の出来事だ。ドアを急に開けて現れた二人組に、デュランダルは思わず面食らった。
現れたのは銃を手にした浅黒い男と、日常のひとときであるかのようにた穏やかな微笑を浮かべた少女だった。
内心は表情に出さず、乱暴な来訪者に語りかける。声に震えはなかった。
「そんなことをしたら、こんな会い方は出来ないでしょう?」
押し入った時から持っていた銃を向けながら、隻眼の男は唇を吊り上げる。今をときめく議長殿と正式な手順で顔を合わせるならば、膨大な手続きを経て、その上で護衛やセキュリティの監視、あるいは多数のカメラの下で会うことになる。当然腹を割った話など出来ようはずもない。
相手には会話の意思があるらしい。ならば、この場で撃たれることはない。デュランダルは生命の危機がないことを理解する。若干だが、声が強くなった。
「確かにその通りだが、いささか礼にかけるとは思わなかったのかね?」
「無礼は承知の上ですわ」
少女は急に笑みを消す。語調は、強かった。
デュランダルは短く返事し、椅子から立った。部屋の向かい合ったソファの一方にかけるように促し、自らは反対側のソファに座る。対等の目線での話し合いを受諾した二人は、言葉通りにソファに座った。
会う方法としては最悪の部類だが、無下に扱っていいゲストではない。
「用件を伺おうか、ラクス・クライン」
隠遁していた彼女がプラントまで赴くこと自体が既にリスクを伴う行為なのだ。相応の覚悟を背負った行為であることを察し、デュランダルは口を開く。
アンドリュー・バルトフェルドは銃口を下げた。もともと目的は接触であり、脅迫ではない。相手が撥ね付けるような態度をとらないのならば、銃などは必要のない代物だ。
「では、単刀直入に申し上げましょう。地球から軍を引き、続く争いを止めてください」
言われたデュランダルは一瞬呆け、次に首を傾げた。話の飛び具合もさることながら、まるでプラントが侵略者の側のような物言いだ。
「ザフトが引けば争いは止まると?」
「少なくとも、たった今、亡くなろうとしている方々は助かります」
端を発するのはユニウスセブンの落下だが、セカンドステージ奪取など手を出してきたのは連合が先だ。やられっ放しで手を打っては、もともと不利なプラントの地位を更に貶めることになるだろう。そもそも、コーディネーターそのものを憎む連中が納得するとは思えない。
デュランダルは困惑した。話にならないと思ったが、簡単に意見を曲げるような相手ではないことは百も承知だった。
「それは無理ですよ...ザフトが引いても、『DARK DESTINY』は止まらないですよ」
「『DARK DESTINY』...?」
「知らないですか?『DARK DESTINY』は人類抹殺の為、行動する組織です...ところで...先日、ミネルバから連絡があって...」
「何ですか?」
「あなたの仲間のカガリ・ユラ・アスハは『DARK DESTINY』に入っていたことが知ってますか?...」
「えっ...」
ラクスは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた...
「カガリは一体どういう人間なのか、それを伺いたい」
「ミネルバでお会いになったのではないのですか?」
「あれは短すぎる時間だったのだよ。人を知るにはね」
それが今では平和を乱す連中と手を組み、盗まれた実験のMSまで持ち出して、世界に楯突いている。風評からはおよそ考えられない蛮行だ。何か考えがあってのことだというのなら、彼女が友とする人間ならばその手がかりが掴めるかもしれない。それがデュランダルの考えだ。
期待はあっさりと裏切られた。
「彼女のことは、彼女自身にしかわかりませんわ」
小さく被りを振りながら、ラクスはきっぱりと言う。
「いや、彼女の凶行の理由を教えてくれと言ってるわけではないよ。彼女の性格や嗜好、そういったものにヒントがあるのかもしれない」
「あー、ちょっと言わせてもらえるか?」
黙っていたバルトフェルドが僅かに挙手をしながら言う。デュランダルはそれを許諾した。口調は砕けたものになり、流暢に台詞が続く。
「カガリの行動にはあなたが噛んでる可能性、それもこちらは考えていたんだが...」
「私が?なぜそう思うのだね」
「あなたは地位を磐石にするために両者の同士討ちを狙っているだから...」
「なるほど...でも、それは...」
プルプルプルプル......
突然RRRRRと鳴り出した電話のベル
「ふう...ちょっと待って...」
机の上の電話に手をかける。
「もしもし...何?...『DARK DESTINY』は月面ダイダロス基地を奪われただと!?」
ラクスとバルトフェルドはそれを聞いて雷に打たれたように目を大きく開く...
「情報を集めろ!!地球連合軍のパイプを通して、なんとか協力準備をするべきだ...!!」
デュランダルは顔をしかめながら、受話器を置く...
「すまない...突然この話を中断して...」
「いえ...すみませんが、私達が『DARK DESTINY』を倒す手伝いをしてもらいませんか?」
「ふむ...『DARK DESTINY』は一騎当千だから...しかし、君達と一緒に戦えば、あの機体を倒せるかも...分かった」
デュランダルは頭を下げる
「貴方達の力を貸して、『DARK DESTINY』を一緒に倒しましょう...!」
「ええ...!」
ラクスとデュランダルは握手をする...
―――――――――――――月面ダイダロス基地――――――――――――――
「ようやくこの基地を手に入ったな...」
「ええ、作戦が必要だから。ちょっと新しい情報が来たわ」
「なんだ?」
「ラクスとデュランダルが手を組んだよ。近々地球連合軍と手を組む予定...」
「やっとか...あとは戦いを進めば...僕達の望みを叶えられる...!っと...その前にこいつを処刑しとくか?」
シンは振り向いて、椅子に縛れていた男を見て...その男は、ロード・ジブリールだった。
「うっうう何故だ...この基地を襲ったって、なんの得がある!お前ら何のつもりだ」
「基地の中に隠されている兵器を取る為よ...君はそんな兵器を作ったのは前から知ってたよ」
「うう...」
「そんな目で睨んでも殺せないよ...カガリ、準備は?」
「出来てるわ」
「何...を?」
カガリはニッコリとした笑顔でそう言った...
「処刑よ」
ロードは顔を青ざめてゆく...
「ひっ......!いやだっ...!」
「はいはい。すぐにあの世に逝ってやるから...」
カガリは銃を構えて、ロードの頭に向ける。
「私は死なんぞーーっ!!青き清浄なる世界のために...」
パンッ!
「永遠の闇に落ちろ...」
カガリはそっと呟く。シンに向かって話す。
「私はレクイエムの発射プログラムを変更するから...シンは決戦のために休んでいって」
カガリはシンにキスしてから、レクイエムのコントロールパネルに向けて歩く。
「ふぅ...あとは全てを終わらせるキッカケを待つだけ...」
シンはゆっくりと目を閉じて今までのことを思い返してから、ゆっくりと部屋に戻る...