戦国転生 4歳から始める十種影法術 作:匿名希望
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——11月18日
▫️禪院恵
天元のところから戻った恵は影久から声をかけられた。
「恵、伝えておかなければいけないことがある。万と宿儺が同時に術式を使える。それが事実なら、防戦だけなら五条と鹿紫雲でも可能だろう」
恵は息を呑む、目の前で術師の言葉はあまりにも重い。
「……それは」
「勝ち筋を作れるのは……おそらく俺だけだ。問題は、俺は君の影からあまり遠くまで離れられないということ」
「……影久さんが宿儺と戦うことになったとき、俺が近くにいると巻き込まれるってことですか」
「そうならないように君には影を『伸ばす』だけじゃなく離れた場所に展開できるようになってほしい」
——12月24日
鹿紫雲が宿儺と相対する前のこと。
「実践テストできるのは最初で最後、恵。準備はいいな?」
「大丈夫です。このくらいの距離なら何度も試しましたからね」
「頼もしい限りだ」
影久が恵の影へと沈んでゆく。
一瞬、恵の足元に広がっていた影がわずかに揺らぐ。
だが、次の瞬間には何事もなかったかのように元へ戻った。
そして数分後、裏梅を掴んで影久が恵の元まで戻ってきた。
無造作に裏梅を投げ放った。
轟音と共に瓦礫が砕け、土煙が舞い上がる。
影久は静かに着地すると、恵へを視線を向けた。
「さて恵、レッスン1『影の解釈を広げよう』だ」
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▫️禪院影久
新宿は、酷い有様だった。
ビル群は軒並み崩れ、アスファルトは抉れ、至る所に鹿紫雲と宿儺がぶつかった跡が刻まれている。
黒く焦げた地面、硝子化したクレーター、崩壊した高層ビルの残骸。
(あいつ本当好き勝手暴れたもんだな)
「そうか、お前が禪院影久か」
影久がなんとなく感慨深い気持ちになっていると宿儺が声をかけてくる。
「宿儺。羂索から聞いてるようだが一応自己紹介しておくと、俺は禪院影久。400年前の術師だよ。んで、一応聞いておくけど大人しくして生きていくつもりなんてないよな?」
「……随分とつまらん質問をする。貴様、答えが分かっていて聞いているんだろう?」
「まーそうだな、でもこの世界では、俺が聞いておくべきかと思ってな」
「……何を言っている?」
「いやこっちの話だ」
この世界線において宿儺は十種影法術の詳細を知ることはなかった。だからこの後の魔虚羅の絶望の宣言の意味を理解できない。
「構築術式、及び宿儺の呪力にはすでに適応が完了している」
「そういうわけで、始めようか」
直後、影久の姿が消え宿儺を蹴りつけた。
防御した宿儺の頭にあったのは、早い、でも重いでもない。
理解できない何かが起きた、ということだけ。
——虫の鎧が溶けるようにして消え、呪力強化が弱まっており、腕が砕け、体の半ばまで足がめりこんでいた。吹き飛んで衝撃を逃がすことも、逆側にいつの間にか召喚されていた満象の体と挟まれたことで不可能となった。
吐血。
宿儺は即座に反転術式を回す。
砕けた腕が戻る。
『なんで!?』万が虫の鎧を再構築しようとして失敗。
「!?」腹に減り込んだ足が動かない、腹が治らない。
直後。
魔虚羅によって膝から下が切り飛ばされた。
宿儺は再び反転術式を回し倒れることを防いだ。
『このっ!』
最接近した状態、万の構築術式による真球。
当たれば必殺の攻撃、しかし影久と魔虚羅は気にした様子もない。
宿儺の顔が掴まれ、後頭部からアスファルトに叩きつけられる。
真球が影久と魔虚羅に重なる、瞬間ほどけて消えた。『はぁ!?』
ボコッ、ボコッ。
リズムよく宿儺の頭が叩きつけられる。
構築術式で作った腕はすでに分解されている。
残った宿儺の腕はたった今玉犬によって噛みちぎられた。
ボコッ、ボコッ、ボコッ。
「は、んて、んが……」
宿儺も、万も呪力を練ることができないでいる。
完全適応に、神域顕現を用いて、呪力吸収。
「羂索はさ。逃げ切られる可能性があったからほんと厄介だったんだよ。予備の体とか土壇場で「やっぱやめた千年後にしよ」とか言い出しかねない。お前が万の体に入り込むのも予想外すぎたし」
ボコッ、ボコッ、ボコッ、ボコッ。
「な、に……を」
「一番厄介だったのは羂索だったんだよな。その処理が終わった。要するに、魔虚羅の言う通り、事ここに至ってはお前はもう餌でしかないってことだな」
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▫️高専
理解が追いつかない。
モニタの中には、先ほどまで鹿紫雲一と死闘を繰り広げ、五条悟と互角以上に渡り合っていた呪いの王がいた。
手足がない宿儺の頭が何度も地面へ叩きつけられている。
誰かが呟いた。
「…………禪院影久って、あんなやべえのかよ」
その場にいる全員の総意。
五条悟ですら、領域と肉弾戦を組み合わせて三分間削り続け、ようやく勝機を作った相手。
鹿紫雲一は命を燃やして真正面からぶつかり、一度は宿儺へ届かせた。
禪院影久は、その相手を……。
「何だよ……あれ。宿儺が……」
虎杖が呟く、言葉が続かない。複雑な心持ちだっただろう。半年間自分を苦しめてきた相手だ。
でも、だからといって、こんな姿を見ることになろうとは。
「あの、すみません。みなさん俺に呪力を分けてもらえませんか。微弱ですけど、俺の呪力特性吸収らしくて、影久さんを、あそこに置いておくための呪力消費がきつくて」
恵の視線がモニターへ向く。
「遠隔で影を繋げてるんです」
その言葉に張り詰めていた空気が少しだけ弛緩する、誰かのため息や、思わずといった笑い声が漏れた。
「いいぜ!」「私も」「使ってくれ」
「ありがとうございます。じゃあ、借ります」
「なんつーかすげえやべーけど。一応お前って言う弱点?はあるんだな。ちょっと安心したぜ」
「一方的にはなってますが、万が一がありますからね、領域出されたら巻き込まれるかもしれませんし」
恵が呪力を吸わせてもらいながらモニタを見ていると、五条が戻ってきた。
「やー、やっぱりこうなったか」
五条が、モニターを見ながら呟いた。
「五条先生!」
虎杖が振り返る。
「やっぱりって……五条先生は、こうなるって分かってたんですか?」
その問いに、五条は少しだけ考えるように顎へ手を当てた。
「分かっていた、というよりは……体験したことがあるんだよね。前に影久と模擬戦をしてね。だから、今宿儺に何が起きているのかは分かる」
「模擬戦って……あの影久さんと?」
乙骨が驚いたように聞き返す、その目線は五条とモニタを行き来していた。
五条は軽く笑った。
「まあ、普通の模擬戦とは言いにくいけどね」
画面の中では、宿儺が再び地面へ叩きつけられていた。
「勘違いしないでほしいんだけど、宿儺が弱いわけじゃない。僕と鹿紫雲が命懸けで相手をした存在だ。今でもそこは変わらない」
「じゃあ、どうして……」
あんなに、の言葉を虎杖は飲み込んだ。
五条は静かに答える。
「相手が悪すぎるんだよね」
五条が言葉を選び直す、少し間を置いて続けた。
「あーいや、悪いって言い方も違うかな。そもそもさ、影久は同じステージで戦ってないんだよね」
「……?」
わかっていない様子の虎杖に説明をやり直す。
「なんて言うかね、天元様が開発、運営するゲームのプレイヤーが僕たちや宿儺で、影久は天元様と同じ、個人でだけどゲームを開発して運営するような場所にいるんだよ」
「それって……」
「そう、もう勝ち負けじゃないんだよ。一応取っといた指、一本は完全に無駄だったね」
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宿儺がろくな抵抗をできないまま溶かし尽くされ、魔虚羅の餌になった。
その一番の要因を挙げるならば呪物のままだったことだろう。
原作において、完全受肉した宿儺は邪去侮の梯子を明らかに長時間耐えていた。
「万と共存していたのが仇になったな」
魔虚羅が静かに顔を上げた。
「ごちそうさま」
そこに残っていたのは、宿儺を失い、手足を失い、一人横たわる女だけだった。
「宿儺?」
返事が返ってくることはもう二度とない。
さっきまで自分の中にいた存在。
自分を利用し、利用されることすら許した相手が、跡形もなく消えていた。
「嘘……」
万は初めて理解する。
宿儺は敗北したのではない。
処理された。
「一応、お前にも聞いておく。大人しくして生きていくつもりなんてないよな?」
万は答えない。いや、答えられなかった。
彼女の瞳から生気が失われ、泥のように意識が深く沈んでいく。
愛した男が完全に消滅したという絶望が、彼女の魂の形そのものを崩壊させていた。
自ら殺した、あるいは自分の外で死んだならこうはならなかっただろう。
自分の中にいたまま完全に、跡形もなく消滅しその過程を余すところなく感じ取ってしまった。
万の呪力が、自壊によって完全に霧散する。
完全に終わったか、と一息ついていると魔虚羅から一言。
「主、伏黒津美紀を治しておいた方がいい」
「えっ?あ、ええっ!?もしかして、そういうこと?」
影久が戸惑っている間に円鹿が津美紀の肉体を治療していた。
口元に手を当てる、生きている。万の呪力はもう感じない。しかし——
「この子も、呪術師になってる可能性あるよな」
「物理的に作り替えられた、脳と体の記憶は残る、おそらく万と同じポテンシャルを持った構築術式もちの呪術師になる」
死ぬよりはいいか、と連れ帰ることにした。
影久がモニタに向かって手を振る。
万の器になった娘を連れてくから接続を切るのはもうちょっと待って、と恵に伝えているようだった。
——後日、構築術式のこともあり伏黒津美紀は禪院家に保護される形になる。
影久が宿儺を消滅させて高専へ戻ると、五条以外の全員から少し距離を置かれていた。
「……ただいま?」
「おかえりー」
「「「お、おかえりなさい」」」
一歩近付くと五条を除く全員が一歩下がる。
さらに一歩、また揃って一歩下がった。
「何かあったか?」
ようやく虎杖が気まずそうに口を開く。
「いや、その……ちょっと今は、頭の整理が追いついてなくて」
乙骨も苦笑いする。
「影久さんが悪いわけじゃないんです。でも、さっきまでモニターで見てたものが、そのまま目の前に来ると……」
真希は腕を組んだまま頷く。
「普通に怖ぇよ、あんた」
「……えぇ」
そんな空気を気にする様子もなく、声をかける人物(?)がいた。天使である。
『お疲れ様だ、禪院影久。無事に堕天——宿儺を殺せたようで何より』
「ああ、受肉も中途半端だったしな、やりやすくて助かったよ」
ごく自然に会話が始まる。
器である来栖華が引き攣った顔で天使に話しかけた。
(えっ、ちょっと待ってください。普通に話せるんですか?)
『何か問題があるのか?』
(いやだって……さっきの見ましたよね!?あれ見てそんな平然としてられるんです!?)
『彼は無力化してから堕天を殺し切った、私より効率的で素晴らしい手際だとは思うが?』
静かにそう答えた。
華は返す言葉を失い、もう一度影久を見る。
「……小声でも聞こえてる、気にしないから普通に話していいぞ」
「……やっぱり怖いです」
その呟きに、影久が肩を落とした。
これ自体が後日談ではあるんですけど、さらにその後日談で終わりな感じになりそうです。
おまけが随分と長くなってしまいましたが、お付き合いありがとうございます!
ちなみに五条は、無制限の虚式で自爆すれば大打撃も与えられて領域も吹き飛ばせました。
しかしその後の万の領域を考えると、飲まれないようにするために距離を取る作戦が有効と考えていました。
1:1で勝てるのかと言うと、影久が語った通り無理じゃないかなと思います。
影久が羂索と対面したらもう逃すことはないとわかっていたので、前回サクッと引いた感じです。
この五条はあまりにもメンタルに余裕ができすぎたので、南に行くメンタルで北に向かうクソガキ教師になってしまいました。
この万宿儺、二人がかりでやる必要があるんですよね。
このSSなら五条+鹿紫雲が共闘OKならもちろん勝てますが、でもそれをしたら鹿紫雲じゃないですし。
あと一応病み上がりでないなら、禪院扇+五条でも勝てました。
原作の無量空処によるデバフをかけられてない完全受肉宿儺って戦いが成立するのが、原作だと五条しかいませんよね。
このSSだと扇を含めれば三人いますが戦いになるだけでそんなに長くは持たないですし。
扇は多分二回目の領域戦で終わり。
鹿紫雲は2、3回目をしのいで呪力切れ。
五条も同じく2、3回目宿儺の領域を崩せずに終わりそう。
と、思うんですけどデバフなしの完全宿儺ってどのくらい領域持つんでしょうね、何となく十〜十五分くらいかなと勝手に思っています。
呪力自体は余裕だと思うんですけど、回路の負担の問題で一回休ませる必要がある、みたいな。
そんで個人的には万の三重疾苦もかなりやばいと思ってて、真球の必中って領域勝負や鹿紫雲みたいな対処できなかったらどうするんだろ。
触った瞬間触れた箇所消し飛ぶ、みたいなイメージあるのでどうしようもなくない?って思います。
強さのイメージ
理論上伏黒宿儺>完全受肉宿儺>万宿儺>五条悟>完全受肉宿儺(デバフ)>伏黒宿儺=鹿紫雲(このSS)>渋谷宿儺=禪院扇
くらいでやってました。
伏黒宿儺は、魔虚羅次第で上がっていきます。
こうして考えると閉じない領域がアホすぎる。
というのをダラダラ考えるのが本当に楽しい……。