まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
これは、夢だ。ボクは今夢の中にいる。辺りは暗くて何も見えない。
「エマ、こっちだよ」
声の方へボクは顔を向ける。暗闇の中に明かりが灯っていた。
(この声は……)
そこにいたのは、笑顔で手を差し伸べるのはヒロちゃんだ。ボクはなんの迷いもなくその手を取る。
「温かい……」
「まるで私のことを手が冷たい冷血漢とでも言いたいのか?君は」
「違うよ!そうじゃなくて……」
「ふふ、変なエマだな。さて、行こうか」
「……うん」
どこへ?そう聞く事もなく、ヒロちゃんの温かい手を握りしめ、ボクは思い出す。首をはねられ、どんどん体温がなくなっていくヒロちゃんの体を。ボクの手のひらは、抱きしめた体は覚えている。
繋いだ手から伝わってくるヒロちゃんの体温はボクの記憶を上書きするかのようにボクの気持ちも温めていく。
夢の中なら、夢の中だからヒロちゃんと触れ合える。語り合える。笑い合える。
手を引かれて歩き続けるボクはさっき聞かなかったことをヒロちゃんに聞いてみた。
「ねえ、ヒロちゃん……ボクたちどこへ向かってるの?」
「うん?そうだな……まあ、どこでもいいんじゃないか?」
あっけらかんと答えるヒロちゃんにボクはぽかんと口を開けてしまっていた。そんなボクの顔がおかしいのかヒロちゃんはクスクスと笑いだした。
ボクは恥ずかしさとちょっとした怒りでヒロちゃんに抗議をする。
「もー!笑うなんてひどいよ!」
「ふふふ……すまない。おかしくて……ぷっ、ハハハ!」
「ヒロちゃん!」
「さて、ひとしきり笑ったし先へ進もうか」
「もう……」
先を歩くヒロちゃん。ボクはなんだか悔しくてちょっと歩幅を大きくしてヒロちゃんに並んだ。ボクのドヤ顔を見たヒロちゃんがまたクスりと笑った。
しばらく歩くと人影が見えてきた。誰かがおしゃべりをしている。
「ノアちゃんと……レイアちゃん?」
後ろ姿しか見えないけど、あれはきっとノアちゃんとレイアちゃんだ。
「ノアちゃん!レイアちゃん!」
ボクは声をかけてみたけど聞こえてないみたい。
『ノアくん、どうだろう?今度写生大会でも開いてみんなで絵を描いてみないか?もちろん被写体は私で』
『レイアちゃんを?みんなで?わー、面白そうかも』
『誰が私を一番美しくかけるか!ああ!楽しみだよ!』
『ちょっとやる気なくなっちゃった……』
ボクたちに気づいていないのか、ノアちゃんたちはそのまま話しながらどこかへ行っちゃった。
次に現れたのはミリアちゃんとアンアンちゃん。ボクはもう、分かっている。けれど、声をかけずにはいられなかった。
「ミリアちゃん、アンアンちゃん!」
『アンアンちゃん次は何見よっか?できればホラー以外がおじさんいいかなあ、なんて……』
『そうか?では何でもいいぞ。わがはいはミリアが選んだものが見たい』
『それじゃあ、これなんてどうかな?ちょっと古い映画なんだけど……』
『うむ……面白そうだ、わがはいはいいと思う。では娯楽室へ行こうか。みんなも誘って上映会がしたい』
『みんなで?責任重大だなあ……でも、きっとみんなも楽しめると思うな』
「待って!待ってよ!」
またしても二人はどこかへ消えちゃった。追いかけて手を取ろうとしたけどボクは走っても二人に近づけなかった。奥へ、奥へと歩いていたのに辺りは変わらなく感じた。
肩を落としてうつむいていたらポン、とヒロちゃんが肩を叩いていた。
「大丈夫か?エマ」
「うん……大丈夫。ありがとうヒロちゃん……」
お礼を言ったらヒロちゃんはニコりと笑ってもう一度ボクの手を取って歩き出した。ボクも歩き始める。
どれだけ歩いたのか分からないけど前の方から騒がしくて、楽しそうな声が聞こえてくる。次に現れるならあの二人だって分かってた。
『ハンナさーん!』
『待ってましたわよシェリーさん』
『やっと追いつきました!少しの間ですが私がいなくて寂しくありませんでしたか?』
『そ、そんなことねーですわ!全く!むしろ喧しくてかなわなかったのが静かになって良かった』
『えぇー!?そんなあ……シェリーちゃん、ご迷惑かけてましたか……』
『……ああ、もう!そんなしょげないでくださいまし!冗談ですのよ!』
『わーい!ハンナさん大好きです!』
『ぐえっ、苦しっ……もぉ〜!抱きつくなゴリラ女〜!』
「シェリーちゃん……ハンナちゃん……」
二人を見ていてボクは少し泣いちゃった。手を伸ばせば届きそうなほど二人は近くにいるのに、ボクが手を伸ばすと消えてしまう。
立ち止まって、しゃがみ込んでボクはまた涙が出てきた。流れるそれは今の気持ちと一緒で溢れ出して止まらない。
「うぅ……わあああ!わああぁぁ……!!ああぁ……」
「……エマ……」
どれだけ泣いたか分からないけど、ボクは泣き続けた。その間もヒロちゃんは寄り添ってボクの背中を擦ってくれていた。
「……ありがとう、ヒロちゃ……もう、大丈夫だから……」
たくさん泣いて、たくさん叫んで、ようやくボクはヒロちゃんに告白する。
「ボク……ボクね、本当は分かってるんだ……ここが、夢の中だってこと。だってヒロちゃんは……みんなは……シェリーちゃんとハンナちゃんは!」
「エマ、落ち着いて。」
「落ち着いてるよ!でも、ボクは……!」
「エマ……そうだな、こうは考えられないか?」
ヒロちゃんは泣きじゃくる子供を諭すように優しく話し始める。
「ここが夢の中なら、目が覚めるまでここにいたらいいんだと。見ている夢はいつかは目覚めるものなのだから、今は私といよう。」
「ヒロちゃん……」
「いや……私だけじゃない。ほら、みんな来たみたいだよ」
「えっ?本当だ……」
言われて辺りを見回すと、いつの間にか暗闇は晴れて白く眩く輝いていた。その輝きの先から手を振ってこっちへ来る子たちがいる。
「シェリーちゃん、ハンナちゃん!みんなも!」
二人と、さっきどこかへ行ってしまったみんなが集まってくれていた。とても嬉しくて、だけど何かよく分からない気持ちが胸にこみ上げてボクはまた少しだけ泣いちゃったんだ。
「ちょ、ちょっとエマさん!」
「あー!ハンナさんが泣かしました!」
「ちっげーですわよ!ああ、エマさん大丈夫でして!?」
「うっ……ごめんハンナちゃん……ハンナちゃんのせいじゃなくて……なんだか……」
「泣くなエマ。わがはいの裾を貸してやるからこれで拭え」
「あら、アンアンちゃんは紳士ね。裾じゃなくハンカチとかならもっと良かったと思うわ」
「のあもそう思う」
「ありがとうアンアンちゃん……」
気付けばアリサちゃん、ナノカちゃん、マーゴちゃん、ココちゃんも集まってくれていた。
「あれ?そう言えば……」
ボクは辺りを見回して気づいた。そう、12人しかいない。
「ねえ、メルルちゃんは?いないのかな……」
「うふふ、待っていたら来るんじゃないかしら?」
「あーメルっちさあ、どんくさいから遅刻してんじゃね?」
「氷上は優しいからな……きっと顔出してくれんだろ」
「そうね……」
「うん……そうだよね。メルルちゃんだけいないの、寂しいし……すぐ会えたらいいなあ」
ボクはここでメルルちゃんを待つことにした。目を覚ますまでの間……ずっとずっと、どれだけ長くなっても友達と一緒なら待てる気がしたから。
しばらくして、知らない子たちがやって来た。自己紹介をして、仲良くなってボクたちは友達になれた。
友達100人できたらいいな。
シェリーの処刑を終えた次の日、エマは体調不良を感じて医務室のベッドで横になっていた。次の日もエマは眠り、また次の日も、その次の日も──
医務室で眠り続けるエマに寄り添うアリサ、ココ、ナノカ、マーゴ、メルル。毎日エマの顔を見に来ては起きないかと手を握り、祈り続ける。
一人減り、一人が死に、裁判が始まり一人減る。残った二人の内、一人は自ら命を絶った。
見舞いに来る少女はついにメルル一人になってしまった。
「残念ですエマさん……もしも、みなさんがいなくなる前に目が覚めてくれていたら、あなたが大魔女様かどうか分かったかもしれないのに……」
「せっかく仲良くなれて、お友達だと言ってくれたのに……こんなところに閉じ込めることになっちゃいますけど……仕方ないですよね?」
「えー、では……このまま冷凍保存しちゃっていいんですね?」
「はい。お願いしますね?」
「やれやれ……過去の魔法の影響ですか……勘弁して欲しいですね……」
「仕方ないじゃないですか。どこにどんな魔法の影響が残ってるか分からないんですから……」
「それを把握するのはあなたの……おっと、私の仕事ですか?フクロウ使いが荒いですね……」
「褒め言葉として受け取っておきますね……さぁて、次の準備をしなくちゃいけませんね!」
「はあ……それじゃ、運んじゃってください」
ゴクチョーが指示を出し看守がエマを地下へと運んでいく。エマは幸せそうな寝顔のまま、永久に目覚めることなく牢屋敷の地下で氷の布団に包まれて眠り続ける。
牢屋敷の主は言う。ここならお友達になれる子がたくさんいるからきっと寂しくない、と。
朗読劇がめっちゃいい感じだったけどちょこちょこ書いてたのでそのままなんとか継ぎ接ぎしてできあがりってことで…