「ヒ゛ロ゛ち゛ゃ゛ん゛か゛わ゛い゛い゛!!」
「僕にノアくんを殺せと?!!?!?!」
「ゴクチョーさんとどうやって連絡すればいいんでしょう…」
何も起きないかもしれない…
ホノカちゃんかわいいなと思ったので書きました。
───ちがう!
桜羽エマは叫び、起き上がった
悪夢を見たせいだろう、呼吸はひどく乱れ、汗ばんでいる。
そして夢だったことに安堵したのも束の間…周囲の様子が違うことに気づき、その目はみるみる見開かれていく…見知らぬ天井!牢獄!鉄格子!!
そしてついでに自分の状態に気づく
「えっ?」
そう、彼女は転生者であった。
この前世でよく見た背景、服、そしてこの声…
彼女が全てを把握するのに時間はかからないだろう…
そう!ここは『魔法少女ノ魔女裁判』の世界!そして彼女は牢屋敷で目覚めるまさにその瞬間に憑依転生してしまった!!
彼女はこれから桜羽エマとしてこの世界をハッピーエンドへ導かなくてはならない!
ああ!神よ!!なんて残酷な試練をお与えになったのです!!
とりあえず気持ちを整理しようと深呼吸、
吸って〜吐いて〜吸って〜「えーっと確か…何を考えいますの!わたくしをこんなところに閉じこめるなんて!!」
他の房から声が聞こえてくる。ちなみに桜羽エマはびっくりしてむせていた。深呼吸のタイミングが悪かったらしい…
(なんかむせてる…エマちゃんかわいいなぁ……)
そんな桜羽エマを2段ベッドの上から見張る怪しげな影!!
魔法少女ノ魔女裁判の第2の主人公!二階堂=スゴクタダシイ=ヒロだ!!!
彼女もまた、憑依転生者であった。あらすじにも書いてあるし全部言ってしまうが彼女以外も全員憑依転生者であった。
氷上メルルが睡眠薬の量をミスり、普通に起きていたが寝たフリをして攫われた空気の読める女、二階堂ヒロだ!!
彼女はこれから二階堂ヒロとしてこの世界をハッピーエンドに導かなくてはならない!!
「静かにしてくれないか?」
「騒がしいのは───正しくない」
一言一句違わぬ完璧なセリフ!これなら大丈夫、放っておいてもハッピーエンドだ!
「!!(ヒロちゃん───!!)」
桜羽エマもいい演技だ!もの凄く驚いている!!
(───凄くニコニコしてる!!!)
二階堂ヒロの表情筋はゆるゆるであった。
「かわいい」
「えっ?」
「あっ…」
瞬間、流れる気まずい空気。死ぬほど憎んでいるのにニコニコ笑顔の奴と、それに正直にかわいいと言う奴。
(やっべやっべやっべやっべ)
(どうしよどうしよどうしよどうしよ)
口に出てた事に気付いてパニックになる桜羽エマ、ゆるゆるな表情筋に気付いて何とか言い訳を考える二階堂ヒロ。とりあえずキリッとしといた。
少しでも相手の顔を見ればあれ?なにかおかしいぞ…?となる所だが自分のことでいっぱいいっぱいでそれどころではなかった。
「あ、もしもし?映像って見えてます…?」
壁のモニターから聞こえるアナウンス!
まさに蜘蛛の糸!!全力で壁のモニターを見てさっきのことを無かったことにする!!!
モニターにはフクロウの化け物が…
「映ってないね…」
「………正しくない」
悲しきかな、画面は黒一色であった。
兎にも角にも後ろのなれはてちゃんを見ながらドナドナとラウンジに向かうことにした。
ヒロエマ2人はやたらと自分たち二人が見られているような気がしたが気のせいだと思うようにした。
─────────────────────
ラウンジに集合し、自己紹介が始まる。
やっぱりゲームで見るのと印象違うな〜と呑気なことを考えながら聞いていた。印象ではなく中身が違うのである。
自己紹介が終わると、天井の通気口から化け物フクロウことゴクチョーが出てくる。
「ええっと……どうも、ゴクチョーです。ここの管理人をしています。申し上げにくいんですが…ここにいる皆さんは【魔女】になる因子を持っていて───」
ぬいぐるみみたいでちょっとかわいいな、と呑気なことを思いながらも大人しく話を聞く桜羽エマ。その隣で二階堂ヒロは奇行に走っていた。
手のひらに『人』の漢字を書いて、飲み込む、また書いて、飲み込む、またまた書いて…
作中基本的に冷静な彼女がここまで動揺するのには理由があった。
彼女はこの後、死ぬ。
『正しくない』存在であるなれはてに立ち向かい、殺される。ハッピーエンドには一周目、つまり自分が死んだ世界線が必須。
『死に戻り』は正確には死に戻りではない。
二階堂ヒロが前世で見た考察だ。
死んだ後、別世界線に記憶を転送するだけで身体は普通に死んでいる。という説だ。
そう、“この”二階堂ヒロは死に戻れないかもしれない。
しかし、それでも。それでも彼女はあの日見たエンディングを、聴きながら号泣したbloomの為に自己犠牲の決心をした。
「間違いです。私は悪では無い」
記憶の中の二階堂ヒロと全く同じ声、同じ姿で一言一句正確に言葉を綴る。
死への恐怖、だがそれを上回る確かな覚悟。
ああブッタ!何たる奇跡か!!先程の失敗が嘘のようにその顔は本編での二階堂ヒロと全く同じ表情であった!!!
火かき棒を手に取り、なれはてへと駆ける
「悪は死ねッ!悪は死ねッ!!」
真に悪なのはどちらか。
二階堂ヒロは未来を知っている。
そこで起きる悲劇も知っている。
全てを知りながらもより良い未来に進もうとしない。原作をなぞらえることしか出来ない自分こそ本当の悪ではないのか!!
脳裏に無意味な問いが浮かぶ。
しかしもうどうすることもできない……
なれはてにより人外の力で振られたその鎌は
………
……………
二階堂ヒロは、疲れていた
なれはてが1ミリも反撃してこない。
ずっと火かき棒を振っている。マジ疲れた。もうぺちぺち叩いてるだけだ。
何故、何故こんなことに…
それはある少女の心を覗けば分かる
(ヒロちゃんを殺す…?そんなの無理ぃ………)
なれはてこと黒部ナノカの姉、最近(執筆時 )名前が出た彼女もまた転生者であった。そして悲しきかな、最推しは二階堂ヒロであった。
彼女の名誉のために言うと二階堂ヒロと黒部ホノカ、彼女達の中身が逆でもきっと同じことになっていた。
殺す覚悟と死ぬ覚悟は別物である。
全員が困惑する中、一際困惑する存在がいた。
普段は90度曲げた首が180度を大きく越えていた。もげちゃう!
ゴクチョー、彼?彼女?もまた転生者であった。
(なんか私が指示しなきゃだっけ…?)と考え頭を物理的に捻っている。そもそも指示の仕方がわからない。
熟考した末のゴクチョーの決断とは!!
「な、なれはて!!やっておしまい!!!」
ヘボな悪役もびっくりな指示であった。よわそう。
しかし、これでホノカの逃げ場が無くなった。
やるしかない。そう!私がやるしかない!!
(わ、わぁ〜〜!!)
許せ二階堂ヒロ。精一杯自分を鼓舞して鎌を振り上げる!!
「わ、わぁ〜〜ッ!!」
心の声が口に出たのか!?いやしかし!この声、桜色の影はッ!!
桜羽エマの脳裏に巡る前世の記憶!
『桜羽エマ』は…いや!魔法少女ノ魔女裁判の登場人物は絶望の中みんな必死に生きていた!!
原作なんてクソ喰らえ!!私が誰も死なないハッピーエンドを創るんだ!!!!
ヒロちゃんを殺させてたまるかッ!!!
その想いが桜羽エマの身体を動かした!
鎌とヒロの間に割り入り仁王立ちするその姿は…
「レッサーパンダの威嚇みてぇですわ〜……」
とってもかわいかった。
多分続かない。あらすじの内容は詐欺です。