携帯魔獣叛乱戦争   作:戦竜

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第二十二話-三色の結束-

静寂が戻ったはずの断崖に、再び「死」の鼓動が響いていた。

三人が去った戦場。そこには、圧倒的な暴力の化身、獄獣バンギラスが佇んでいた。

シャワーズの水流に濡れた皮膚はすでに乾き、

受けたはずのダメージなど微塵も感じさせない。

その瞳に宿るのは、獲物を逃したことへの苛立ちと、底知れぬ怨念。

 

バンギラスは突如、歩みを止めた。

黄金色の眼光が、目の前の分厚い岩壁を射抜く。

咆哮すら上げず、無造作に振り抜かれた剛拳が岩壁を粉砕した。

火花を散らして飛び散る礫は、まるで弾丸のように周囲の樹木をなぎ倒す。

岩を握り潰し、砂へと変えるその腕には、

雷光たち三人の命を塵にせんとする呪詛が籠もっていた。

獄獣は再び、重く、確実な足音を響かせ、獲物の残り香を追って歩き始めた。

その歩みは遅いが、決して止まることはない。

 

一方、バンギラスの脅威から辛うじて逃げ延びた三人は、

夕闇が迫る岩陰で、乱れた呼吸を整えていた。

沈黙を破ったのは、雷光だった。彼は傷ついたピカチュウを労わりながら、

隣でシャワーズの背を撫でる水君を見つめた。

 

「……なぁ、水君。もしよかったら、俺たちと一緒に旅をしないか?」

 

水君は、思いがけない言葉に顔を上げた。

 

「……え?」

「さっきは本当に助かった。お前がいなけりゃ、

俺たちは今頃あいつの餌食になっていた。

借りが出来ちまったっていうのもあるけど……

それ以上に、俺たちにはお前の力が必要なんだと思うんだ」

「そうだよなぁ~!」

 

炎帝が、煤けた顔を綻ばせて割り込んできた。

 

「水君が居なかったら、俺様たち今頃、ひき肉になってたかもしれねーしな!

三人寄れば文句なしの最強チームだぜ!」

 

水君は戸惑ったように視線を落とした。

 

「……で、でも、私なんかが……。二人は凄く強いし、

私はただ、母さんを助けたくて旅に出ただけで……」

「いいんだよ、理由なんて。俺たちと一緒に旅しようぜ。な?」

 

雷光が優しく、だが確かな意志を込めて微笑む。

水君の胸に、かつてない温かな感情が広がった。

これまでの孤独な戦い、家庭での苦しみ、そしてフリーザーとの孤独な対話。

それら全てを包み込んでくれるような、仲間という存在。

 

「……うん!よろしくお願いします!」

 

水君の顔に、弾けるような笑顔が咲いた。

雷光、炎帝、そして水君。

炎、雷、そして水と氷。タイプのバランスは劇的に改善され、戦術の幅は無限に広がった。

だがそれ以上に、男二人で殺伐としていた旅路に、

凛とした「花」が加わったことの意義は大きい。

旅は、分かち合う者が多いほど、その彩りを増すものなのだから。

 

「よっしゃあ!さぁ~、出発するぜぇ~!」

「……炎帝、テンション高すぎ。少しは落ち着こうよ」

 

水君が苦笑いしながら呟くと、雷光が肩をすくめて応える。

 

「水君、あんまり気にしない方がいいよ。こいつに関わると、ろくなことがないからね」

「んだテメー! 冷てーじゃねぇか、相棒!

俺様たち、死線を越えて愛を誓い合った仲じゃねぇか……ポッ」

「な、なにバカなこと言ってるんだ……!誰が誓い合ったんだよ!

ほら、水君、行こう。こんな奴ほっといて」

 

呆れる雷光に引かれるように歩き出そうとした水君が、ふと足を止めた。

 

「え……あ……その前に、ちょっといいかな?」

「「?」」

 

二人が足を止めると、水君はおもむろにリュックの奥深くを探り始めた。

そして取り出されたのは――。

 

「……特大ハンバーグ。それに、バケツサイズの巨大プリン!?」

 

雷光の目が点になり、炎帝の顎が外れそうになる。

水君は、先ほどの死闘などなかったかのような満面の笑顔で、

その山のような料理を「いただきます!」と頬張り始めた。

 

モグモグ、パクパク。

 

「……うーん、美味しい!やっぱり戦った後はこれだよね!」

 

幸せそうに、それでいて凄まじいスピードで平らげていく少女。

その華奢な体のどこにそんなスペースがあるのか。

数分後。あれだけの量を跡形もなく胃袋に収めた水君は、満足げに唇を拭った。

 

「お待たせ!行こう!」

 

呆然と立ち尽くしていた雷光と炎帝は、ようやく我に返ると、

慌ててテントを畳み、身支度を整えた。

 

「……水君、お前の『魔獣』は、実はお前自身なんじゃないか?」

 

炎帝のツッコミを華麗にスルーし、三人は輝く地平へと歩み出す。

 

歩きながら、雷光の表情には再び軍師としての険しさが戻っていた。

「早く次の目的地――『聖なる癒やしの街』へ行かないと。食料も底を突きかけているし、

何よりも……あのバンギラスがまたいつ襲ってくるか分からない」

「ああ。あいつの硬さは異常だった。

リザードンの火炎放射すら、ロウソクの火くらいにしか思ってねぇみたいだったしな」

 

炎帝が悔しそうに拳を握りしめる。

 

「今後は、あの獄獣のような規格外の魔獣に備えて、

俺たちの相棒もさらなるレベルアップが必要だ」

 

水君も、ハクリューのボールを握りしめ、力強く頷いた。

 

「私も、次は負けない。皆を守るために、もっと強くならなきゃ」

 

山脈を渡る風が、三人の背中を押し上げる。

背後には執念の獄獣。目の前には、まだ見ぬ強敵と、大陸を揺るがす戦争の火種。

更なる激戦が、彼らの運命を待ち受けている。

だが、今の彼らなら、どんな闇をも切り裂いて進めるはずだ。

 

三人の足音が、重なり合いながら、新たな伝説の序曲を刻んでいった。




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