携帯魔獣叛乱戦争   作:戦竜

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第二十四話-鋼鉄の葬列-

夜の闇を切り裂くアフターバーナーの轟音と、大気を焦がす電鳴。

標高数千メートルの雲海の上で、近代兵器の粋を集めたF-15J戦闘機と、

神話の時代より君臨する雷神鳥サンダーによる、

生存を賭けたドッグファイトが加速していた。

 

三機のイーグルは、正三角形の編隊を維持しながらマッハの速度でサンダーを追跡する。

サンダーの全身から放たれる「1000まんボルト」の巨大な雷光が、

夜空を白銀に染め上げ、網の目のようにイーグルたちへ襲いかかる。

パイロットたちは重力加速度に耐え、操縦桿を限界まで倒して左右へ機体を翻し、

間一髪でその雷撃を回避し続けた。

 

「目標、回避運動を継続中。……今だ、ミサイル発射(フォックス2)!」

 

リード機のパイロットがトリガーを引く。

翼下から放たれた赤外線誘導ミサイルが、サンダーの放電による熱源を捉えて突き進む。

サンダーは翼を鋭くしならせて急上昇し、ミサイルを躱した。

しかし、最新鋭の誘導装置は標的を逃さない。ミサイルは空中で鮮やかなUターンを描き、

再びサンダーの背後から肉薄する。

 

だが、神鳥の反応はそれを上回っていた。

サンダーがその鋭い嘴を後ろへ向けた瞬間、

バチバチという音と共に強力な「電撃波」が放射された。

追尾してきたミサイルは直撃する寸前で過負荷に陥り、

空中でオレンジ色の爆炎となって霧散した。

 

「チッ、迎撃されたか!?」

 

驚愕するパイロットの視界を、青白い光が埋め尽くす。

ミサイルを破壊した余波のまま、サンダーの反撃が放たれたのだ。

回避不能の電磁エネルギー。必中の「電撃波」がリード機の左翼を貫いた。

数万アンペアの電流が機体の電子回路を一瞬で焼き切り、燃料タンクに引火。

F-15は夜空に巨大な火柱を立て、バラバラの破片となって闇へと墜ちていった。

残る機体は二機。

 

「一番機、ロスト!畜生、あの電気技をまともに喰らえば終わりだぞ!」

 

二番機のパイロットが通信に叫ぶ。

サンダーが再び電撃をチャージする前に、こちらが仕留めるしかない。

 

「二番機、三番機、ガトリング砲掃射!奴を弾幕に沈めろ!」

 

機首に搭載された20mmバルカン砲が火を噴いた。

一秒間に百発近い焼夷弾が、サンダーの飛行軌道を埋め尽くすように放たれる。

だが、サンダーはまるで気流そのものと同化したかのような器用さで、

無数の弾丸の間を縫うようにして飛翔した。

 

「当たらん……!ならば、これならどうだ!」

 

二機のF-15が同時に「散弾型多連装ミサイル」を起動。

計40発の小型ミサイルが、サンダーを捕獲する巨大な檻のように広がって迫る。

流石のサンダーも、これだけの面制圧は避けきれない。

着弾の瞬間、勝利を確信したパイロットたちの目に映ったのは、異常な光景だった。

 

サンダーの周囲に、ハニカム状の幾何学模様をした黄金の防壁――「光の壁」が展開されたのだ。

着弾したミサイルの爆圧は、その壁によって無残に減衰され、

サンダーに与えたダメージは本来の半分にも満たなかった。

 

「……バカな、物理法則を無視するのか!」

 

半減されたとはいえ、衝撃を受けたサンダーの動きに僅かな澱みが生じる。

今こそが好機。パイロットが必殺の通常ミサイルの発射ボタンに指をかけた、その刹那だった。

 

サンダーの全身が、太陽のごとき眩い光に包まれた。

 

「1000まんボルト」。

 

先ほどとは比較にならない密度の雷撃が、回避運動へ移る暇も与えず二番機を直撃した。

チタン合金の機体は一瞬で溶断され、パイロットの叫びすら飲み込む大爆発と共に、

二機目もまた夜空の塵となった。

 

もはや、サンダーに恐れるものはなかった。

生き残った最後の一機に対し、雷神鳥は悠然とUターンを決める。

嘴を前方に向け、全身を高速回転させながら、猛烈な勢いで突っ込んできた。

 

「ドリルくちばし」!!

 

マッハの速度で回転する硬質の嘴は、ダイヤモンド以上の硬度と貫通力を秘めている。

F-15は必死に機首を上げて回避を試みたが、サンダーの追撃速度は異常だった。

バリバリッ、と嫌な金属音が響く。

一発、二発。ドリル嘴が主翼と胴体を抉り、火花が激しく散る。

 

「……クソッ、離れろ!離れろッ!!」

 

ついに、サンダーはF-15の背の上に乗り上げた。

重力と磁力で機体に張り付き、ドリル嘴でコックピット周辺の外板を無慈悲に穿ち始める。

風防にヒビが入り、機内に警報が鳴り響く。パイロットは覚悟を決めた。

 

「……刺し違えてやる!」

 

自機に張り付いたサンダーを道連れにするべく、パイロットは全弾発射のトリガーを引いた。

 

しかし、神の判断は非情だった。

サンダーはミサイルが発射口から出る瞬間に、天から巨大な「雷」を招き寄せた。

自機から放たれたミサイルの誘爆と、神の雷。

その二つの破壊力がイーグルを包み込み、最後の鋼鉄の翼は粉々に粉砕された。

 

全ての敵を排除した雷神鳥は、燃え盛る残骸が降り注ぐ雲海の上で、

天を突くような勝利の咆哮を上げた。

全身にバチバチと火花を走らせ、更なる高電圧を纏いながら、

サンダーは戦場を去り、夜の彼方へと消えていった。

 

数分後。

航空自衛隊の作戦本部内は、墓場のような静寂に支配されていた。

巨大なモニターに映し出された三つのロスト・シグナル。

誰もが、近代兵器の結晶がこうも一方的に、

一匹の魔獣に蹂躙されたという事実に唖然としていた。

 

「……三機、全滅。生存者、確認できません」

 

オペレーターの震える声が、絶望を確定させた。

だが、この敗北によって、人類は一つの致命的な事実を理解した。

あの飛行物体「サンダー」は、単なる野生の魔獣ではない。

明確な殺意と敵意を持って人類の領域を侵略する、神の化身なのだと。

 

「……直ちに全自衛隊に警戒レベル5を発令。これは訓練ではない。実戦だ」

 

司令官の低い声が響く。

フリーザーに続き、サンダーの出現。

伝説の三鳥が人類への攻撃を開始した今、

世界はもはや後戻りのできない全面戦争の荒野へと踏み出していた。

雷光、炎帝、水君が地上で感じたあの不穏な予感は、

今や現実の災厄となって世界を焼き尽くそうとしていた。

 

魔獣との戦争は、地上の泥沼から空の果てまで、更なる地獄へと加速していくのである。




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