携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

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第四十一話-破壊神降臨-

火山帯の荒野に、鉄と血の臭いが混じり合う。

戦局は、一見して人間側の圧倒的優位に進んでいた。

進藤哲二佐率いる陸上自衛隊の本隊が戦域を掌握し、後続の戦車部隊が到着。

90式戦車の120mm滑腔砲が火を噴くたびに、

岩陰に潜む魔獣たちはその肉体ごと粉砕されていた。

 

上空では、雷光がピジョット、ライチュウ、プリンの三位一体による鮮やかな連携を見せ、

大悟のヘリ部隊と呼吸を合わせることで飛行魔獣の第二波を事実上無力化していた。

 

「うっしゃああああぁぁぁ!!!見たかコラァ!俺様たちは無敵だぜ―――!!」

 

炎帝は、愛機とも呼べるザングースを縦横無尽に走らせ、

次々と迫りくるゴーリキーやスピアーを「連続斬り」の塵へと変えていた。

切り札であるリザードンを温存したまま、この戦果。

彼の心には、勝利への確信と、己の力に対する絶対的な自負が満ち溢れていた。

 

だが。

その「余裕」は、一瞬にして凍りついた。

 

「……ん?」

 

返り血を拭い、次の標的を探そうとした炎帝の視界が、ある一点に吸い寄せられた。

燃え盛っていた彼の闘争心は、まるで見えない巨大な氷塊に突き刺されたかのように、

一瞬で熱を失い、絶対零度まで急降下した。

 

まさか、アイツは……。

信じたくねぇ。

奴が、こんな場所にいるはずがない。

まさか……。

まさか……。

まさか。

 

「クソ……クソクソクソクソクソクソクソッ!!」

 

炎帝の歯の根が、ガチガチと音を立てて震え始める。

喉の奥からせり上がってくるのは、酸っぱい胃液と、生存本能が全力で鳴らす警報だった。

脳裏をよぎるのは「勝利」の二文字ではなく、ただ一方的な「蹂躙」と「捕食」のイメージ。

潰される。

殺される。

完膚なきまでに、存在を抹消される。

 

陽炎の向こう側、砂塵が不自然な渦を巻いている場所に、「それ」は居た。

 

そこは、先ほどまで自衛隊の小隊が陣取っていたはずの場所だった。

だが今、そこにあるのは防衛線ではなく、血肉の地獄絵図だ。

鮮血が噴水のように空を舞い、引き千切られた肉片が、

まるで汚れた雪のように地面にバラバラと降り注いでいる。

 

鈍い音を立てて咀嚼されているのは、

人間の、それもつい先ほどまで共に戦っていた隊員の腕だ。

鋭い牙に突き刺さったまま、主を失った指が虚しく痙攣している。

 

その魔獣が、ただそこに「存在」しているだけで、周囲の空気は歪み、

重圧だけで地面に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。

戦う者の背筋を凍りつかせ、戦意を根こそぎ奪い去る、最凶最悪の殺戮兵器。

魔獣図鑑のページを血で塗り潰したかのような、圧倒的な「悪」の化身。

 

その名は――バンギラス。

 

砂漠の暴君。

一歩歩けば山を崩し、怒れば地を割ると言い伝えられる、擬似伝説級の怪生物。

その鋼鉄よりも硬い外殻には、自衛隊の小銃弾はおろか、

戦車の徹甲弾ですら傷一つつけることはできないだろう。

 

バンギラスは、口元から滴る鮮血を無造作に拭うこともせず、

ただ退屈そうに炎帝の方を振り向いた。

その瞳に宿っているのは、知性ではない。

自分以外のすべての生命を「餌」か「ゴミ」としてしか認識していない、

純粋かつ巨大な悪意。

 

「……ア、アァ……」

 

炎帝の喉から、声にならない悲鳴が漏れる。

最強と信じたザングースの爪が、まるでおもちゃのピンセットのように思えた。

目の前に立ちはだかるのは、敵ではない。

それは、抗うことの許されない「絶望」そのものだった。

 

陸上の防衛線に、最大の、そして最悪の「破綻」が訪れようとしていた。




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