携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

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第四十八話-神罰の足音-

バンギラスという「暴君」が崩れ落ちた戦場には、

勝利の歓喜よりも重苦しい喪失感が漂っていた。

救急部隊の装甲車両が砂塵を巻き上げて到着し、

意識を失ったままのリザードンが慎重に、

かつ迅速にストレッチャーで運び込まれる。

引き千切られた片翼の断面には止血剤が塗り込まれているが、

そこから滴る鮮血は止まることを知らない。

 

「リザードン……、クソッ、死ぬんじゃねぇぞ……!」

 

炎帝は、返り血で汚れ、震える手で相棒の太い腕を握りしめた。

彼は雷光を一瞥し、短く「……後は頼む」とだけ告げると、救急車に飛び乗った。

走り去る車両のテールランプが、

暗転しつつある戦場に残された最後の希望の灯火のように見えた。

 

だが、地上の戦士たちが一息つく暇もなく、

物語の天秤は人類の滅亡へと大きく傾き始めていた。

 

同時刻、陸上自衛隊中央本部――通称「城塞」。

そこでは、最前線の死闘とはまた別の、静かな、

しかしより絶望的な戦いが繰り広げられていた。

巨大なモニターには、衛星が捉えた地球の姿が映し出されている。

かつての美しい青は、無数の噴煙、巨大な台風の渦、

そして海岸線を飲み込む白濁した波によって塗り潰されていた。

 

「博士、説明を。なぜ、これほどの天変地異が同時に起きている?」

 

正人一佐の問いに、古代生物学の権威である博士は、震える手で資料をデスクに広げた。

その顔は、真理に触れた者の悦びではなく、禁忌を犯した者の恐怖に染まっている。

 

「……伝承によれば、グラードン、カイオーガ、レックウザの三体は、

それぞれ地・海・天を司る『自然そのもの』の権現。

彼らは地球の自浄作用そのものであり、

生態系の均衡を保つための守護神として君臨してきました。

しかし、その均衡が……今、完全に崩壊したのです」

 

博士がキーボードを叩くと、

三羽の神鳥――ファイヤー、フリーザー、サンダーのデータが表示される。

「火、氷、雷。これら三つの属性は、気象の安定を司る『歯車』でした。

しかし、人類がこれらを次々と打ち倒し、捕獲、あるいは排除した。

特に、サンダーが雷光くんに敗北したあの瞬間、

自然界のバイタルサインは『レッドゾーン』を超えたのです」

「守護神が、なぜ牙を剥く? 伝記には、彼らは人間をも守ると……」

 

幹部の一人が食い下がるが、正人は冷淡な声でそれを遮った。

 

「その伝記を書いたのは誰だ? ……人間だろう。

自然界にとって、均衡を乱すウイルスが『人間』であるならば、

守護神が行うべきは治療ではない。――『切除』だ」

 

その言葉が、重く指令室に響く。

神獣たちにとって、人類はもはや守るべき生物ではなく、

地球という巨大な有機体を蝕む「病根」と見做されたのだ。

 

「では、なぜ世界中に現れた三神獣の化身たちが、

一様にこの日本――我々の戦場へと集結しているんだ?」

「原因は明白です。均衡を崩した最大要因……即ち、神鳥を討った戦士たちと、

それを組織した我々自衛隊がここにいるからです。彼らは『病の根源』を叩きに来ている」

 

正人は、深く椅子に身を沈め、モニターの端に表示されている数字に目を向けた。

 

「……人類の、現存戦力は?」

 

オペレーターの手が止まる。

報告を躊躇うような沈黙の後、掠れた声がスピーカーから流れた。

 

「……算出しました。米軍、欧州連合軍、大陸軍共に連絡が途絶。

衛星画像からの推測による残存戦力……

陸軍 0.39%、空軍 0.26%、海軍 1.14%。……事実上の壊滅です」

「世界の全人口は……」

「も、もういい……!」

 

正人が声を荒らげ、報告を遮った。

かつて文明を誇った人類は、今やこの島国の一角に立てこもる自衛隊の残党と、

数人の少年少女たちを残すのみ。

国外からの無線は、数時間前から不気味なノイズに変わっている。

世界は、既に終わっていた。今ここで繰り広げられているのは、

人類という種の「葬送儀礼」に過ぎないのだ。

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