携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

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第四十九話-ひび割れる希望-

バンギラスとの死闘を制し、

救急車で去りゆく炎帝とリザードンを見送った雷光たちの背中に、

休息の時間は一秒たりとも与えられなかった。

戦場は今、バンギラスや狂暴化した野生魔獣の執拗な波状攻撃にさらされ、

陸上自衛隊の防衛線は既に半分以上の戦力を喪失。

鉄の棺桶と化した戦車が骸を晒し、絶望的な消耗戦が続いていた。

 

現状、人類側に残された唯一の希望とも呼べる兵器は、

空を舞う大悟空佐の「翼竜」――最新鋭の攻撃ヘリ部隊のみ。

だが、その希望すらも、惑星規模の「怒り」の前では陽炎のように儚いものだった。

 

突然、世界が鳴動した。

足元の岩盤が、まるで巨大な心臓が脈打つように上下に激しく波打つ。

地割れが走り、大気を切り裂くような轟音が火山帯に響き渡った。

 

「……ッ、なんだ、この揺れは!?」

 

哲がハッと顔を上げ、背後にそびえる活火山を見上げたその瞬間。

山頂が内側から爆発するように吹き飛び、

天を突くような火柱とともにドロドロとした溶岩が溢れ出した。

 

その紅蓮の滝の中から、「それ」は姿を現した。

超古代から眠りについていた、大地を司る絶対神――グラードン。

 

「な……んだ、あのデカさは……」

 

雷光は息を呑んだ。

その全長は優に40メートルを超え、全身を覆う深紅の甲殻は、

溶岩の熱を孕んで不気味な黒光りを放っている。

一歩足を踏み出すごとに地響きが起き、その威圧感だけで周囲の野生魔獣たちが、

恐怖のあまり次々と逃げ出していく。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「陸上にグラードンが出現しました!!第一目標を確認!!」

 

本部のオペレーターの悲鳴に近い報告に、正人一佐は拳を固めて無線機を掴んだ。

 

「全部隊に告ぐ!!雑魚は構うな!

グラードンを最重要脅威と設定、全火力をあいつに集中させろ!!」

「了解!!」

 

哲、茂、そして雷光が、神の足元へと肉薄する。

上空からは大悟の「翼竜」が、

死神の鎌のようなガトリング砲を唸らせながら援護に駆けつけた。

 

グラードンが天を仰ぎ、空気を震わせる雄叫びを上げた。

その瞬間、雲一つなかった空が、不自然なほどに眩く、白濁した光に包まれた。

グラードンの特殊能力――『日照り』。

猛烈な熱波がフィールドを襲い、地表の水分が一瞬にして蒸発していく。

肌を刺すような乾燥と熱気が、人類側のスタミナを削り取り、

グラードンのための「戦場」を作り上げていく。

 

「……怯むな!眠らせてしまえば、神様だってただの置き物だ!」

 

雷光は起死回生を狙い、再びプリンを繰り出した。

 

「プリン、『歌う』!!」

 

戦場に不似合いな、澄んだ音色のメロディが流れる。

だが、奇跡は起きなかった。グラードンはその旋律を、

耳障りなノイズとすら思っていない。

眠りに落ちるどころか、鬱陶しそうに低く唸っただけで、

音波そのものが熱風でかき消されてしまった。

 

グラードンのあまりの威圧感に、プリンは歌を中断。

自らの生存本能に突き動かされるように、

指示を待たず勝手にモンスターボールの中へと逃げ戻ってしまった。

 

雷光の手元に残る戦力は、ライチュウ、ピジョット、そしてフシギバナ。

しかし、ライチュウは電気型。地面を司るグラードンにとって、

電撃は「効かない」以前に「存在しない」に等しい。

雷光は苦渋の決断でライチュウを戻し、唯一の「弱点」を突ける相棒を前に出した。

 

「日照りは、こっちにとっても好都合だ!フシギバナ、『ソーラービーム』!!」

 

『日照り』による過剰な太陽光を吸い込み、フシギバナの背中の大輪が、

目が眩むほどの緑光を放った。チャージなしの連続発射。

草属性の極大魔法が、グラードンの眉間に向けて放たれた。

だが、神は動じない。

グラードンもまた、その巨大な口腔内に太陽光を収束させ、

全く同じ技――『ソーラービーム』を解き放ったのだ。

 

緑と緑の閃光が、戦場の中央で激突した。

拮抗したのは、ほんの一瞬。

グラードンの放った光線は、フシギバナのそれを紙屑のように押し戻し、

その巨躯を真正面から呑み込んだ。

 

「フシギバナァ!!」

 

爆炎が晴れたとき、そこには焦げた花びらを散らし、

力尽きたフシギバナが横たわっていた。戦闘不能。

 

「いけ!! オーダイル!!」

「いってこいっ!! ウインディ!!」

 

哲と茂が、それぞれの相棒を解き放つ。

水、そして炎の牙。だが、極限の乾燥状態では水の威力は半減し、

逆にグラードンの火力は跳ね上がっている。

 

「ピジョット、合わせろ!『鋼の翼』!!」

 

雷光の指示に合わせ、ピジョットが『電光石火』で加速。

銀色に輝く翼を鋭い刃と化し、グラードンの頬へとクリーンヒットさせた。

キンッという硬質な音が響く。

しかし、神の皮膚は傷つくどころか、微かな擦り傷がついただけ。

 

グラードンの赤い瞳が、上空を舞う「羽虫」を捉えた。

奴は地を蹴り、無数の岩塊を空中に浮かび上がらせる。

『原始の力』。

超古代の魔力に満ちた岩石が、逃げるピジョットを正確に追尾し、その背中を強打した。

悲鳴を上げる間もなく、ピジョットは翼を折られ、錐揉み状態で地上へと叩きつけられた。

岩属性の一撃は、飛行する鳥にとって致命的な一撃だった。

 

「……そんな、嘘だろ……」

雷光は立ち尽くした。

フシギバナに続き、空の相棒であるピジョットまでもが、

神の一瞥にも満たない攻撃で沈められてしまったのだ。

 

足元を流れる溶岩。空を焼き尽くす烈日。

そして、眼前に立ち塞がる、巨大な「大地の神」。

雷光は、震える手で最後のボールを握りしめた。

人類に、この神を殺す手段など、果たして存在するのだろうか。




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