携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

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第六十四話-正義を決する戦い-

草木も、鉄の巨体も、

そして共に笑い合った仲間たちの命も、すべてが焦土へと還った無人の大地。

雷光、哲、茂の三人は、むき出しの岩肌に腰を下ろし、

ただ静かに、変わり果てた世界の成れの果てを眺めていた。

視界に映るのは、もはや「希望」と呼べるほど輝かしいものではなく、

かといって「絶望」と吐き捨てるほど安易なものでもない。

 

ただ、心臓が動いている。肺が煤混じりの空気を求めている。

生き残ってしまったという事実だけが、鉛のように重く彼らの肩にのしかかっていた。

 

「……これは、俺たちに課せられた『試練』なんだな」

 

雷光が絞り出した声は、風にかき消されそうなほど細かった。

だが、その瞳の奥には、退くことを許さない強固な意志が、残り火のように灯っていた。

 

その時だった。

天が裂けた。

それはグラードンが大地を割った衝撃でも、サンダーが放った雷光の輝きでもなかった。

地上すべてを一瞬で白濁の闇へと塗り替えるような、圧倒的な「純光」。

生物の網膜を焼き、心の深淵に隠した罪悪感さえも暴き立てるような、

万物を見通す神の眼差し。

 

雲を割り、光の渦の中心から姿を現したのは、

天空の支配者にして、この世の調停者――天神龍レックウザ。

レックウザはエメラルドの輝きを放つ長い巨躯をうねらせ、

その冷徹な眼孔で地上の三人を見据えた。

 

【挿絵表示】

 

言葉はなくとも、伝わってくる。神は、彼らの心の中に渦巻く葛藤、殺意、

そして生き延びるために積み上げてきた「破壊」の歴史を、すべて読み取っていた。

 

そして、レックウザは断罪を下すかのように、天を揺るがす雄叫びを上げた。

その咆哮は、彼らに対する「敵意」の表明だった。

 

神さえも、敵に回した。

神の眼には、自然の摂理を乱し、

同胞を犠牲にしながら神獣を屠ってきた雷光たちは、もはや「悪」と映ったのだろう。

自分たちが歩んできた道は、正しかったのか。

それとも、単なる独りよがりの殺戮だったのか。

答えは、出口のない迷宮のように彼らを惑わせる。

だが、立ち止まることは死を意味する。

答えを知る権利があるのは、この地獄を生き残った勝者のみなのだ。

 

「俺たちが例え悪でも、悪が善に勝てない道理なんてない……

神を倒し、俺たち人類は生き続けてやる!!」

 

雷光は叫び、最後の力を振り絞って立ち上がった。

 

「頼むぞ、ボーマンダ!ライチュウ!!」

 

二体の魔獣が、主の覚悟に呼応して咆哮する。

雷光はライチュウを肩に乗せ、ボーマンダの背へと跨った。

勝っても負けても恨みなし。

人類の存亡を懸けた、悔いなき最後の特攻。

 

「ボーマンダ、『竜の息吹』!!」

先制の一撃。蒼い龍の口から放たれた衝撃波がレックウザを襲う。

しかし、レックウザはわずかに身を翻すだけで、その一撃を紙一重で回避した。

避けたというより、まるで攻撃の軌道が最初からそこには無かったかのような、無駄のない動き。

 

「お返しだというのか……!?」

 

次の瞬間、レックウザの姿が視界から消えた。

ボーマンダが悲鳴を上げる。レックウザの『逆鱗』。

目にも止まらぬ速さで繰り出された爪と尾の一撃が、

ボーマンダの側腹部を深く切り裂いた。反応することさえ許されない。

神の速度は、すでに生物の限界を超えていた。

 

「立て直せ!ライチュウ、『1000万ボルト』!!」

 

雷光の指示と共に、ライチュウがその小さな体に蓄積した全エネルギーを解放した。

黄金の雷が網目状に広がり、天空を埋め尽くす。

これまでの戦いであれば、どんな高速移動を誇る敵でも、

この広範囲攻撃を避けることは困難だった。

だが、レックウザは表情一つ変えず、雷の隙間を縫うようにして滑空した。

一万の雷に触れることすらなく、再び攻撃態勢へと移行する。

 

「くるぞ、レックウザの『神速』だ!!」

 

回避の指示を出す暇もなかった。

衝撃波が走り、ボーマンダの背に乗っていた雷光とライチュウに、

凄まじい直接打撃がヒットした。内臓がひっくり返るような衝撃。

ボーマンダの機動力だけに頼らざるを得ないこの状況では、神の速度に対応しきれない。

 

数秒の沈黙の後、雷光は賭けに出た。

 

「ボーマンダ、『影分身』!!」

天空に、十数体のボーマンダが同時に出現した。

レックウザを円形に包囲し、どれが本体か判別不能にする攪乱作戦。

だが、雷光の狙いは攪乱そのものではない。

分身が消える前の一瞬、回避不能の必中技を叩き込む。

 

「今だ!『燕返し』!!」

 

分裂したすべてのボーマンダが、翼を刃のように光らせ、

中心のレックウザへと超高速で突っ込む。

必中の理を持つこの技ならば、神といえども逃げ場はないはずだ。

しかし、レックウザの眼は欺けなかった。

神の双眸は、残像に惑わされることなく、確実に雷光を乗せた「本物」の気配を捉えていた。

 

レックウザが大きく口を開く。

突っ込んでくるボーマンダの眉間を狙い澄まし、

太陽を切り取ったかのような極太の熱線――『火炎放射』を解き放った。

 

「ぐ、あああああぁぁぁぁッ!!!」

 

回避行動の最中に炎を真正面から浴び、ボーマンダの翼が焼ける。

墜落を免れるのが精一杯の状態。攻撃を継続することなど、もはや不可能に近い。

 

一歩、また一歩と。

確実な足取りで、雷光の意識の中に、これまで否定し続けてきた「敗北」の二文字が、

残酷なほど鮮明に浮かび上がっていく。

絶望の影が、再び大地を飲み込もうとしていた。




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