携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

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第六十五話-活路邁進-

天空を統べる龍、レックウザ。

その双眸は、地上の喧騒も、人間が積み上げてきた浅知恵も、

すべてを無効化する絶対的な「理(ことわり)」を宿していた。

影分身による攪乱も、必中の『燕返し』も、神の放つ『火炎放射』

という圧倒的な熱量の前には、露と消える運命に過ぎなかった。

 

だが、雷光の心はまだ折れていない。

「(神獣だろうと、命があるなら必ず隙はある。

勝機は待つものじゃない、こじ開けるものだ……!)」

 

ボロボロになったボーマンダを鼓舞し、雷光は再び空へと舞い上がる。

「止まるな、ボーマンダ!『竜の息吹』連射!

ライチュウ、援護だ! 『1000まんボルト』!!」

 

攻めに徹する。守りに回れば、神の速度にすり潰されるだけだと悟っていた。

青白い衝撃波と、黄金の電撃が交差する二重奏。天空を埋め尽くすほどの攻撃の網。

しかし、レックウザはそれらすべてを嘲笑うかのように、巨躯をうねらせて回避した。

物理法則を無視したその身のこなしは、まさに天を泳ぐ龍そのものだ。

 

「……ッ、今だ、くるぞ!!」

 

こちらの攻撃が途切れた、その一瞬。

レックウザの口内に、星の瞬きを凝縮したような白光が収束した。

 

『破壊光線』。

 

これまで戦ってきたどの魔獣のそれとも次元が違う。

放たれた光の柱は大気を焼き、衝撃波だけで雲を消し飛ばした。

 

「避けろォ!!」

 

ボーマンダが絶叫に近い咆哮と共に急旋回し、直撃を免れる。

だが、レックウザは追撃を緩めない。

神は、逃げる獲物に慈悲を与えるほど甘くはなかった。

 

「……速い!!」

 

回避の余韻を狙い澄まし、光速の突進――『神速』がボーマンダの脇腹を抉った。

衝撃波が雷光の鼓膜を震わせる。ボーマンダの高度が目に見えて落ちていく。

速度で勝てないなら、懐に入るしかない。ゼロ距離の接近戦――。

 

「ライチュウ、目眩ましだ!『1000まんボルト』を最大出力で!

ボーマンダ、そのまま突っ込め! 『ドラゴンクロー』!!」

 

視界を埋め尽くす電光の中を、蒼き龍が弾丸となって突き進む。

電撃を難なく受け流すレックウザの目の前、ついにその懐へ。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

ボーマンダの右爪が、渾身の力を込めて振り下ろされた。

だが、レックウザも同時にその鋭い爪を振るう。『逆鱗』。

 

空中で火花が散り、金属音のような打撃音が響き渡る。

力と力の真っ向勝負。……結果は、無惨な力負けだった。

 

ボーマンダの腕の骨が軋む音。神の膂力に弾き飛ばされ、体勢を大きく崩す。

そこへ、追い打ちの『火炎放射』が迫る。

 

「……回避!!」

 

辛うじて炎の渦を抜けた。

しかし、レックウザの狙いはその先――二撃目の『破壊光線』が、

完全に回避不能なタイミングで放たれた。

 

「――――ッ!!」

 

直撃。

凄まじい衝撃が走り、ボーマンダの背中が爆発した。

 

「ボーマンダ!!」

 

死を悟った雷光は、反射的に肩のライチュウを抱きかかえ、

爆炎の中から虚空へと身を投げ出した。

背後で、限界を超えた破壊エネルギーが臨界に達し、大爆発を起こす。

長年、苦楽を共にしてきた相棒、ボーマンダの肉体が、光の中に消えていった。

 

「あああああああッ!!」

 

自由落下。

高度数百メートルから叩きつけられれば、人間など一たまりもない。

死の恐怖が雷光を包もうとしたその時、腕の中のライチュウが動いた。

着地の寸前、ライチュウは雷光を背後に回すと、

その太い尻尾をバネのようにしならせ、全体重を乗せて地面を叩きつけた。

 

辺りに激しい砂埃が舞い上がる。

 

「ゲホッ……ゲホッ……」

 

雷光は激痛に顔を歪めながらも、自分が生きていることを確認した。

ライチュウが己の肉体をクッションにし、衝撃を逃がしてくれたのだ。

だが、見上げた空に、もう蒼き龍の姿はない。

 

手元に残されたのは、ライチュウと、もう一匹。

空中戦の主力を失い、神と戦う術を失ったはずのこの状況で、雷光はゆっくりと立ち上がった。

その眼には、まだ絶望の色はなかった。それどころか、狂気にも似た冴えた光が宿っている。

 

「……よし!!これで行ってみるか!!」

 

雷光が叫び、一つのモンスターボールを投げた。

現れたのは、戦場にはおよそ不釣り合いな、丸くて愛らしいピンク色の魔獣――プリン。

この絶望的な戦場において、勝利の鍵を握るのは、

震える足を必死に踏み締める、この小さなプリンだった。




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