携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

67 / 72
第六十七話-まさか-

ボーマンダの尊い犠牲、そしてプリンという意外な切り札の投入。

雷光たちは、ついに「神」という絶対的な壁に風穴を開けた。

しかし、戦況が互角になったという事実は、同時にレックウザという存在から

「神の静謐」を剥ぎ取り、剥き出しの「獣の狂気」を呼び覚ますことと同義であった。

 

雷光は、勝利を確信した瞬間に浮かべたわずかな笑みを、即座に押し殺した。

目の前のレックウザは、もはや万物を司る守護神の顔をしていない。

エメラルドの鱗は逆立ち、濁った黄金の瞳には、

自分を傷つけた羽虫どもを根絶やしにせんとする、悍ましいまでの殺意が渦巻いている。

 

「……来るぞ!!奴の動きをギリギリまで見極めろ、一瞬の判断が生死を分ける!!」

 

雷光の叫びと同時に、大気が凍りついた。

レックウザの口内から放たれたのは、絶対零度の『冷凍光線』。

ライチュウは地を蹴り、『高速移動』の残像を残して回避。

一方、機動力に欠けるプリンは、その丸い体をさらに硬化させ、

間一髪で『守る』の障壁を展開した。

 

「今だ、畳み込め!!」

 

回避の直後、ライチュウの『1000まんボルト』と、

プリンの魂を削るような『ハイパーボイス』が交差する。

直撃。爆炎と音波の奔流がレックウザを包み込むが、神獣は苦悶の咆哮を上げながらも、

その巨躯を止めることはなかった。

 

レックウザは上空を円を描くように高速旋回し始めた。

自らが呼び寄せた雨雲を味方につけ、天から無数の『雷』を振り下ろす。

 

「なっ……!?」

 

激しい雷光がライチュウとプリンを直撃した。

炎、水、氷、そして電気。四つの異なる属性を完璧に使いこなすその姿は、

まさに神獣たちの頂点に君臨する王の威厳そのもの。

その能力は、これまでに戦ってきた三神鳥や神獣を遥かに凌駕している。

 

「まだだ……まだ、心は折れてない!!」

 

雷光の心意気に呼応し、震えていたプリンも必死に眼を見開く。

二体が再び連携を仕掛けようとしたその瞬間、レックウザの全身から乾いた砂塵が噴き出した。

 

『砂嵐』。

 

視界を奪う猛烈な砂の礫。

炎、水、氷、電気に加え、五つ目の属性である「岩」の技までも繰り出してきたのだ。

 

「クソッ、視界が……ライチュウ、もう一度『雨乞い』だ!砂を洗い流せ!!」

 

ライチュウの祈りが通じ、再び降り注ぐ雨が砂嵐を鎮めていく。

視界が開け、雷光たちの眼が再びレックウザを捉えた。

……だが、そこにあったのは、冷徹な勝利を確信した神の微笑だった。

 

砂嵐の向こう側で、レックウザは既に「終わり」の準備を終えていたのだ。

 

『地割れ』。

 

六つ目の技。それは、避けることの叶わぬ一撃必殺の断罪。

大地が冥界へ繋がる裂け目となり、ライチュウとプリンを呑み込んだ。

凄まじい衝撃波が雷光を弾き飛ばし、彼は泥濘の中に無惨に転がった。

 

「(……負けた……)」

 

ライチュウも、プリンも、もはやピクリとも動かない。

雷光自身も全身の骨が軋み、指一本動かす気力さえ奪われていた。

目の前には、止めを刺さんと巨大な口を開け、眩い光を収束させるレックウザの姿。

 

雷光の命を奪うはずだった破壊光線が、

横合いから放たれた「極彩色の輝き」によって力技で弾き飛ばされた。

 

「……え?」

 

予期せぬ衝撃に、レックウザさえも反応が遅れる。

自らの放った光線が跳ね返り、その顔面を直撃。神の巨躯が大きく仰け反った。

 

爆煙の向こう側から、重厚な機械音と共に、一匹の怪物が飛来した。

 

体中を鈍く光るメカパーツと、漆黒のメタル装甲で強化されたリザードン。

もぎ取られたはずの翼は、人工繊維とエネルギー・スラスターによって再構築され、

かつての何倍もの威圧感を放っている。

そして、その背には――。

 

「助けに来たぜぇーーーーーッ!!雷光ッ!!」

 

あの、廊下で肩を落としていた姿が嘘のような、

暑苦しいほどの闘志を漲らせた炎帝の姿があった。

 

「炎帝……」

 

あまりにも遅すぎる登場。

そして、あまりにも空気を読まないハイテンション。

絶望の淵にいたはずの雷光は、思わず、深い溜息と共に微かな笑みを漏らした。




モチベ維持のために感想・評価をもらえると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。