携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

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第六十八話-人は罪を犯す-

天を統べるレックウザの絶望的な蹂躙の前に、雷光の敗北は決定したかに見えた。

しかし、その絶望の淵を力技で抉り開けたのは、

かつての死地から蘇った炎帝と、その半身たるリザードンだった。

 

かつてバンギラスとの死闘で翼をもぎ取られ、

死を待つのみだったリザードンの姿はそこにはない。

軍の禁忌たるサイボーグ改造手術――「プロジェクト・キマイラ」の

被検体となったその肉体は、鈍く光る超硬質セラミックの金属アーマーに覆われ、

背中には鋼に輝く人工の羽が静かに、しかし禍々しく展開されていた。

 

「行くぞリザードン!!こいつでケリつけようぜ!!」

 

炎帝の叫びと共に、メカリザードンがブースターを点火し、垂直に加速する。

迎撃するレックウザの『逆鱗』と、メカリザードンの鋼鉄の爪『メタルクロー』が空中で激突した。

金属と鱗が削り合う不快な音が響き渡り、火花が散る。互いに一歩も譲らぬ力比べ。

かつてのリザードンであれば、その身体能力の差に押し潰されていただろう。

だが、今の彼には機械的に増幅された油圧駆動の筋力がある。

 

【挿絵表示】

 

瞬時に間合いを外したメカリザードンは、喉の奥に内蔵された高出力熱線砲を展開した。

 

「焼き尽くせ!!」

 

口から放たれたのは、通常の火炎放射ではない。

光学的、熱学的エネルギーを収束させた極彩色の破壊光線だ。

レックウザも即座に『破壊光線』を放ち、二つの光の奔流が空中で激しく衝突し、

大気を震わせる爆発を起こした。

 

メカリザードンの攻撃は止まらない。

腕部に装着された複合兵器ユニットから、六発の小型ミサイルが白煙を引いて射出された。

レックウザは空を泳ぐような機動で回避を試みるが、軍の誇る誘導装置が神の気配を逃さない。

レックウザは逃げ切れないと判断し、

至近距離で『火炎放射』を吐きかけ、ミサイルを強制爆破させた。

 

「逃がさねぇよ……ガトリング、展開!!」

 

ミサイルモードからガトリングモードへ瞬時に切り替わり、

弾丸の雨が天空を埋め尽くす。

レックウザは『神速』で弾幕を掻いくぐり、

カウンターの『破壊光線』をメカリザードンの胸部に叩き込んだ。

金属の火花が飛び散る。

しかし、特殊な対衝撃合金アーマーがその威力を強引に減衰させていた。

 

「くっ……!!リザードン、ロックオン機能を……起動しろ!!」

 

炎帝が叫ぶと、リザードンの両眼が不気味な赤い電子光を放った。

もはや、それは生物の瞳ではない。

リザードンの視界には、レックウザの心音、体温、筋肉の収縮から予測される行動パターンが

文字列として流れ、標的を定めるポインターがレックウザの喉元を正確に捉えていた。

 

「計算終了だ……墜ちろ」

 

右肩のロケットランチャーが火を噴く。

レックウザは回避行動に移るが、その移動先には既に次の一撃の着弾予測点が打たれていた。

神の直感を超える、スーパーコンピュータの演算。

避けることも防ぐことも叶わず、高出力ランチャーがレックウザの顔面で爆発した。

 

「……いいぞ、リザードン」

 

攻撃が命中したというのに、炎帝の声には覇気がなかった。

救出された雷光たちもまた、平べったい岩の上で傷を癒しながら、

その異様な光景に言葉を失っていた。

目の前のリザードンは強い。

しかし、それはもはや、共に歩んできた「生き物」としてのリザードンではない。

ただの命令遂行マシンのように見えるのだ。

 

だが、レックウザは「機械の力」程度で屈するほど脆くはなかった。

顔面の煤を振り払い、神は再び天を仰ぐ。

 

咆哮と共に降り注ぐのは、激しい雨。

『雨乞い』。

湿気がメカリザードンの精密機械に負荷を与え、

内蔵された火炎系の出力を強制的に低下させる。

何より、そこは機械化されたリザードンにとって最悪の、

そしてレックウザにとって最高、必中のフィールドだった。

 

「……ッ!?計算外だ、エラーが……!」

 

炎帝が焦りの声を上げる。

機械に頼り、データで世界を切り取ろうとした傲慢さが、神の理の前に露呈する。

空を切り裂く、必中の『雷』。

金属のアーマーが導体となり、メカリザードンの体内回路を焼き切っていく。

悲鳴を上げる間もなく、追い打ちの『水の波動』が直撃。

鋼鉄の巨躯が、重力に従って地面へと叩きつけられた。

 

地面に激突し、火花と油を散らすメカリザードン。

レックウザは容赦なく、とどめの『破壊光線』を収束させる。

その眼光には、神を欺こうとした「偽物の力」に対する冷徹な審判が宿っていた。

 

「やめろ……もう、やめてくれッ!!」

 

炎帝は叫びながら、ボロボロになった相棒の元へ走り寄った。

機械になっても、冷たい装甲に覆われても、この内側にはまだ、

自分と共に旅をしたあの日のリザードンの鼓動があるはずだと。

 

炎帝は、動かなくなったメカリザードンの胸部装甲に、

しがみつくように抱きついた。

冷たい金属の感触。だが、その奥から伝わってくる微かな体温。

 

刹那、レックウザの口から絶望の白光が放たれた。




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