携帯魔獣叛乱戦争   作:EXTERMINATION

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第七十一話-生きる意味-

地下施設の最深部、静寂は暴力的な破砕音によって切り裂かれた。

ミュウツーを繋ぎ止めていた数多のコードが、

内側から膨れ上がる精神エネルギーの奔流に耐えきれず、

一斉に火花を散らして弾け飛ぶ。

周囲の精密機械は飴細工のように捻じ曲がり、過負荷による爆発が制御室を飲み込んだ。

 

『ミュウツー。どこまでも果てしなく、深い宇宙。』

 

その名は、皮肉にも人類が到達し得ぬ高みを象徴していた。

本来、彼は魔獣という天災から人類を護るために産まれたのではない。

人間が人間を、より効率的に、より無慈悲に抹殺するために設計された「究極の兵器」なのだ。

彼を産み落とした親たちが、互いに銃を向け合い、醜いエゴを剥き出しにして死んでいった。

その光景こそが、ミュウツーにとっての「人類の定義」となった。

 

もはや言葉による対話など成立しない。

彼を止める術は、その存在を消し去る以外に道はなかった。

生命という神秘を弄び、神の領域に土足で踏み込んだ人間たちへ、

彼は今、凄絶なる「罰」を執行する。

 

「ワタシハ ニンゲンヲ ホロボスモノ

スベテヲ オワラセルモノ…… ワタシハ ミュウツー」

 

無機質な思念波が、崩壊する施設内に響き渡る。

次の瞬間、作戦本部ビルは内側から膨張する紫色の光球に包まれ、

跡形もなく消し飛んだ。爆風と共に、一筋の閃光が天高く舞い上がる。

逃げ遅れた者、そして正義を信じて倒れた正人指揮官も、その業火の中に消えた。

生き残った者は、おそらく一人もいないだろう。

 

一方、地上ではレックウザとの死闘が最終局面を迎えていた。

先ほどまで機械の鎧に身を包んでいたリザードンは、

自らの爪で、体に食い込んでいた兵器の残骸を剥ぎ取っていた。

鋼の羽はもうない。剥き出しになった背中の皮膚からは血が滲み、

痛々しい手術痕が連なっている。だが、リザードンと炎帝の表情は、

地獄の淵に立たされているとは思えないほど、清々しく、晴れやかだった。

 

俺は罪を犯した。

己の弱さを隠すために、相棒の命を弄ぶ軍のやり方に加担した。

わがままを通し、守るべき誇りを傷つけた。

 

だが、身体中に刻まれたその「罰」こそが、今、自分が生きている証なのだ。

たとえ、この戦いの先に敗北しか待っていなくても。

 

「……リザードン、俺様はもう逃げねぇ。

ありのままのお前と、魂の最後まで戦ってやる!!

覚悟しろレックウザ!!俺様たちの赤く熱い鼓動を、その網膜に焼き付けろ!!」

 

リザードンの喉の奥から、機械の合成音ではない、魂を震わせる咆哮が上がった。

放たれた『火炎放射』が紅蓮の龍となって宙を舞う。

レックウザはそれを冷徹に『水の波動』で相殺し、

衝撃波でリザードンの足元を突き崩した。

 

吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられるリザードン。

だが、炎帝の鋭い檄が飛ぶ。

 

「負けるかよ!立て、リザードン!!」

 

即座に体勢を立て直し、今度は逃げ場を塞ぐように『炎の渦』を展開した。

渦巻く劫火がレックウザの巨躯を飲み込み、炎の檻に閉じ込める。

 

「やったか……!?」

 

しかし、天空の支配者はその熱量さえも自らの糧とした。

レックウザは猛烈な勢いで周囲の熱を吸収し、その口内にどす黒い輝きを収束させた。

 

『オーバーヒート』。

 

神の放つ、白熱化を通り越した漆黒の熱線。

想像を絶する破壊の光は、回避不能のタイミングでリザードンの胸部を直撃した。

 

爆炎が上がり、リザードンが力なく崩れ落ちる。

哲も茂も、そして雷光も、絶望に息を呑んだ。

レックウザが止めの一撃を放とうと、再び鎌首をもたげた、その刹那だった。

 

――ドォォォォォォォォンッ!!!

 

レックウザの横面に、物理法則を無視した「黒い光の塊」が直撃した。

悲鳴を上げる暇もなく、天空の覇者たるレックウザが紙屑のように弾け飛び、

数百メートル先の岩壁を粉砕しながら埋まった。

 

「……な、なんだ……!?」

 

雷光が空を見上げる。

煙が晴れた空に浮かんでいたのは、かつて人類が「希望」と名付け、

自らの手で「呪い」へと変えた魔獣。

紫色のオーラを纏い、感情を失った瞳で地上のすべてを見下ろす、ミュウツーの姿だった。

 

レックウザという自然の神、そしてミュウツーという人造の神。

それぞれの「生きる意味」と「死への執着」が交錯する中で、

生き残った少年たちは、言葉を失ってその対峙を見つめることしかできなかった。

 

【挿絵表示】

 

今、数多の犠牲と、永きにわたる因縁の果てに。

人間と、人間によって産み落とされた究極の悲劇が、

真っ向からぶつかり合おうとしていた。




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