「俺達の奴隷になれ」
俺の言葉に目の前の神崎は、目を大きく開き意味が分からないと言う意思を示す。
やがて、意味を理解したのか、顔を熱した鉄みたいに真っ赤に染めだし
「何で!私があんたに従わなきゃいけないのよ!」
怒鳴り始めた。
まぁ、そうだよな。
いきなり奴隷になれだもんな。
でも、同じことバスでお前も言っているぞ。
「あ~、痛かったなぁ~口の中に親指サイズの口内炎出来ちゃったなぁ~」
わざとらしく神崎に向けて嫌味を込めて口を押さえながら話し掛ける。
実際に出来そうなんだよな。
やっぱり歯で止めるのは無理があった。
俺の言葉に神崎は俺を睨み付つけながら
「あれは、悪かったわよ」
「別に怒ってる訳じゃない。ただお互いに過去の事は水に流して仲良くやろうって話だ」
「其がどう、奴隷に繋がるのよ!」
「まぁ、落ち着けよ」
神崎に俺の持っていた神崎親子に関する事の書かれた紙に印刷された神崎かなえの写真を指差し
「お前の母親………もう直ぐ死ぬかもな」
「何デタラメ言ってムグ!」
神崎の騒ぐ口を先程渡されたももまんで塞ぐ。
其をもぐもぐと食い終わるのを待ってから。
「かもって言ったろ?いちいち怒鳴るな喧しい。人の話は最後まで聞くものだぞ」
「わ、分かったわよ。聞けば良いんでしょ?聞けば」
「聞き分けが良くて嬉しいぞ。其で、お前の母親はえーと、何百年だっけ?菊代」
後ろを振り返り菊代に聞くと、はぁと呆れた様にため息を吐き
「864年。興味無いからって忘れないでよ」
「人は、興味無い事から忘れて行くんだよ。朝のニュースなんか、大体聞き流すだろ?「言い訳しないの」………でだ、まぁ、話を戻すとだな。お前の母親の命は向こうの都合次第で何時でも消せるんだよ」
「そんな、でも裁判だって有るのに」
「そんなもん、獄中で自殺でも病死でも適当に理由つけちまえばいくらでも偽造し放題だ。死人に口無し。俺だったらそうする」
「そんな。じゃあママは………」
自分の母親の死が迫っているのを実感してしまったのか、顔を真っ青にして、今にも崩れ落ちそうになる。
今俺の言った言葉は実際にデタラメだ。
向こうにしても神崎かなえは手離したく無いはずだ。
だけど、アリアの方にあり得ない話では無いと思わせる事が大事なのだ。
目の前の希望は俺達だけ。
そう思わせる事で他の選択肢を潰す。
そして、万が一の裏切りも出来なくする。
だから奴隷なんだ。
今は、此しかない。
「言ったろ。裁判ごっこだってな。法律に頼ってたら何時までたってもお前の母親は助からん。………だから、俺達が協力してやるって言ったんだろ」
「奴隷になれって言ったわよね?私にどうして欲しいの?」
半ばやけになったのか此方を力なく睨み付ける姿は本当に子供の様だった。
良いね本当に。
エルの持ってきた情報通りの性格だ。
プライドが高くて子供ッぽい。
不幸にも、ホームズ家の悪い所を受け継いだ出来損ない。
少し似てるかもな、正義感を失った遠山家の出来損ないの俺と。
ちょっとだけ、親近感沸くよ。
まぁ、どうでも良いけど。
「簡単だ。俺達のやることにどんな事が合っても目を瞑れその変わりに、俺達がお前と組み神崎かなえを救ってやる。勿論報酬付きで」
「……いくらよ」
「チップで良いよ。ただし払わないなんてケチすんなよ。貴族様なら、其処らの人より持ってるだろ?」
神崎は、数秒手を顎に当てて考える素振りをしてから。
「そっちも手を抜かないでよ。私『無理』『疲れた』『めんどくさい』この言葉が大嫌いなの」
「残念だな。無理、疲れた、めんどくさいは俺の大好きな言葉だ。急ぎ過ぎると必ず怪我をする。その言葉を使って休憩したいのさ」
「やっぱり、あんたとは仲良くなれそうにないわ」
「じゃあ母親見捨てるか?」
「其で困るのはあんたでしょ?」
互いに睨み合い今にも撃ち合いそうになった所を
「あんたら、ケンカするんじゃないよ。今、折角和解しようって所でしょ」
「トオヤマ、此はビジネスだ。アリアは、念願のパートナーと母親の救出を、僕達はカナエさんと金、その他諸々其お互いに手に入れて、皆ハッピーエンドだ。何か不満は有るかい?」
少し頭に来ていた、俺に菊代とエルが間に入りその場を納める。
其により冷静に戻った俺は。
「悪かったわよ。話は其だけだ。くれぐれも俺達の邪魔はするなよ」
「一応これ私達の連絡先仕事の時には連絡して」
菊代の渡した連絡先の書かれたメモを引ったくるようにして受け取った神崎は
扉を開けて閉める間際に
「明日………会わせたい人がいるわ。お昼頃あんた達の所に行く。其だけ」
ピシャリと勢い良く扉が閉まるのを見て
「此で良いか?エル」
「まぁ、結果的には良いんじゃないかな?」
「何で交渉がケンカ腰になるのよ」
「和解しろとは言われたが悪魔で表面上だ。様は神崎かなえに接触出来ればいいんだから。ギブアンドテイクの関係を作れば其で良い其に、和解なんて結局どちらかが多く要求すんもんだろ?」
「確かに、そうでしょうけど……」
そう。ギブアンドテイクなんだ。
俺達は、【武偵】
武偵は、金で動く。
金を多く積んだ方に味方する。
其はヤクザも一緒だ。
武偵とヤクザは紙一重。
やっている事は基本同じ。
そして、捕まる側と捕まえる側でも有る。
俺達は武偵だが、ヤクザだ。
捕まえる側と掴まる側の間にいる。
其処は変わることの無い事実だ。
だから、神崎と深く関わる事は出来るだけ避ける必要が有るんだ。
だから、此で良いんだ。
少し仲悪い位でちょうど良いのだ。
「じゃあ、俺はもう行く。もう、此処で寝てる必要も無いからな」
「トウヤマ怪我の方は?」
「何ともねぇよ。強いて言うなら、やっぱり口内炎だな」
「あんた。交わすって選択肢は無かったの?」
「今思うとバカな事したって思うよ。昔、白雪と一緒に閉じ込められた倉を燃やした時の次に反省している」
「君の無茶苦茶は子供の頃からだったんだね」
「理不尽に白雪を閉じ込めた大人が悪い。だから、意地でも花火見に行ってやろうと思ってな」
まぁ、結局失敗したが。
「ま、何にしても後は峰に欠片を渡すだけ」
「だな。俺達が鳳復活させても意味は無いからな【緋鳥】と【眠り姫】の方がよっぽど価値が………あれ?」
「どうしたの?」
俺は、全身のポケットをまさぐるが無い………無いぞ。
バカな。ちゃんと爆弾から取り出して神崎と戦う前に胸ポケットにしまったはず。
「トウヤマ、まさか……」
「いや、いくらあんな爆風だからって……」
「あなた方の探し物は此ですか?」
何時の間にか開いていた扉には肩にに鞄の様にSVD―――ドラグノフ狙撃銃を背負い此方をじっと見つめてくるガラス細工の様な瞳そして、人形の様に感情を見せない、その立ち振舞い。
「お前は、
一目で誰だか分かった。
だが、其よりも気になるのは、彼女の右手に持っている緋色の宝石……欠片【カラット】だ。
何でお前が持っているんだ、レキ。
「あんたぁ、良く此処にのこのこ現れたわね。バスじゃあ遠山を撃ったくせして」
静かに、俺の隣で殺気を放つ菊代は、右手ベレッタM92FSを目の前のレキに向ける。
俺が今目の前のレキに撃たれた?
車じゃなく。
じゃあ、あの時のは狙撃だったと言うのか?
レキは其を否定する様に首を左右に降ると。
「私が撃ったのは爆弾です」
「あんたねぇ……いくら【ウルス】だからってふざけた真似を」
「―――風が困惑しています」
菊代の殺気を無い物の様に扱い、レキは坦々とまるでロボットの様に感情が無いような声で車のナビの様に言葉を発する。
「この欠片は、皆さんが持っていて良いものでは有りません。其と」
顔を少しだけ傾けて俺と目を合わせたレキはやはり感情の込もっていない声で
「遠山さん貴方は【偽者】ですか?【本者】ですか?」
「え?」
その質問は、静かに、そして坦々と、俺の心を抉って来た。
奴隷と主人プレイだったら主人を選びたいですね。
奴隷にあんな事やこんな事を………
けど,奴隷も捨てがたい。
特にピンクのツインテの人に奴隷になれと言われたい。
………すいません黙ります。