金次に転生しました。   作:クリティカル

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今回は、菊代視点だけです。
其でも良しと言う方はどうぞ。


36 姉からしてみれば。

今正に、遠山の部屋は、要塞と化しようとしていた。

と言うのも、アタシが今回のユキちゃんを狙う魔剣(デュランダル)についての話をしていた時まで遡る。

突然、数日前に新しくなった扉がその役目を終えたのだ。

文字通り、ある二人によって破壊されたのだ。

 

『や、やっぱりキンちゃん様を狙ってるんだね!この泥棒ネコ!』

 

『だから、違うって言ってるでしょ!しつこいのよ化け乳!』

 

こんな感じで争いながら入って来たのだ。

そんなのに遠山は、戸惑いよりもユキちゃんが来てくれたのが嬉しかったようで、直ぐにユキちゃんはにスライディング土下座して許しを得ようとしていたけど、そう言うのでは無かったようで、寧ろユキちゃんが戸惑っていた。

では、何故目を合わせていなかったのかと言えば、単純に悩みが合ったからだった。

遠山のことである。

いえ、正確には、アリアと遠山の事と言った方が良いわね。

 

あの、アリアの奴隷宣言を聞いたユキちゃんは度々アタシに、キンちゃんは小さい子が好きなのか?とか、胸が小さい方が喜ばれるのかとか、ああいう趣味があるのかとか、危うく弟が、ロリコン認定される所だった。

何とか、誤解は解いたのだが、一難去ってまた一難。

今度は今日の事だ。

魔剣(デュランダル)を捕まえたい&ユキちゃんの弱点を握りたいアリアが、無理矢理ユキちゃんの護衛を買って出たのだ。

 

―――が、ユキちゃんは、アリアに護衛されるのは、嫌だと言いだし、アリアはネクラも一緒だネクラの部屋にと言った。

そしたら、ユキちゃんは、キンちゃん様を巻き込みたくないと言い、アリアが、我儘言うなと言いただの悪口の言い合いになり、そのまま、先程のような事になったらしい。

そして、この部屋に来て何とか遠山がユキちゃんを宥め、現在の要塞作りの話へと至った訳だ。

 

「ちょっと!ネクラ!もっと確り支えなさいよ!」

 

「何言ってるんだ。ちゃんと支えてるだろ?」

 

「何処がよ!」

 

アリアが、脚立に乗り天井に赤外線探知機やカメラ何かを設置している下で、白雪とお互いに誤解が解けて、何時もの調子を取り戻した遠山がソファに寝そべり、部屋の間取り図を見ながら、ソファから足をだしてその足で脚立を挟んで(本人からしたら)支えてる。

そもそもこの部屋は、要塞にする必要があまりない。

と言うのも、ユキちゃんのお陰だ。

ユキちゃんは誰よりもこの部屋の間取りを熟知している。

それこそ部屋の電源のタップまで。

今遠山が見ている間取り図だってユキちゃんが制作したもの。

此処までしているのに、付き合ってないと言うのが、驚きを通り越して呆れてしまう。

セキュリティは、何百とある暗闇でも大丈夫な赤外線カメラとマイクその他の物で充分なのよね。

 

「キンちゃん御免ね。こんなことに巻き込んじゃって」

 

キッチンから戻って来たユキちゃんは、ペコリと90度くらいの深いお辞儀をした。

その反動で胸に付いた二つのボールが、プルンと揺れる。

本当に、羨ましいくらいのデカさ。

アリアが化け乳と言うのも改めて納得ね。

分けて欲しいくらい。

 

「いや、何を言っているんだ白雪。寧ろ此は光栄な事だ。何か合ったらドンドン頼ってくれ」

 

目にも見えない素早さで、ソファから起き上がって脚立を手で押さえていかにもやっていますと、アピールする。

まるで、主人が帰ってきてハシャグ犬みたい。

其も大型犬。そう思うと、遠山の頭とお尻に耳と激しく振る尻尾が見えるような気がする。

匂いに人一倍敏感な所もあるし、案外犬の生まれ変わりだと言われても納得出来そうね。

 

そう言えば、アタシが生まれる前ママが、シェパードと言う大型犬を飼っていたと言っていたのを思い出した。

きっとこんな感じだったんでしょうねぇ。

 

「どうしたんだい?ボーとしちゃってさ」

 

ガラリと、バルコニーから出てきたエルが武偵高の()()()()で話し掛けてきた。

 

「別に、ちょっと考えて事をしてただけ、大したことじゃないさ」

 

そう、少し目の前の三人の光景をいえ………正確には遠山とユキちゃんを少し見ていただけ。

 

「そっか。………所でボクの服に何か突っ込みみたいのはないのかい?」

 

何故男子服なのかと、突っ込みをいれて欲しいらしい。

生憎アタシは、漫才師でもないし、わざわざ分かっていることを分かっていないふりで話すなんてしない。

面倒だもの。

 

「何でわざわざ転装生(チェンジ)の真似事なんかしてるんだい?」

 

転装生(チェンジ)とは、男子が女子フリを、女子が男子のフリをして武偵高に通うこと。

特殊条件下の犯罪に備えて、教務科(マスターズ)から許可を貰って、学校に通う事。

そう言う生徒も少なからずいるもの、何だけど、何故今その格好なのかしら?

その疑問は直ぐに解けた。

 

「いや、君達に聞いた以上に勘の鋭い女性だったからね。ボクもこないだのアリアみたいな目に会いたくは無いのさ」

 

「なるほどね」

 

いや、寧ろ其で誤魔化せているエルは、中々の演技力と変装力があると改めて言えるわね。

ユキちゃんは、遠山に近付く女をまず許さない。

どんなに、変装していようとも、少しの動作等で分かってしまうのだ。

アタシや風魔みたいな特殊な例は別として。

流石遠山に演技指導をしただけの事はあるわね。

 

「此処じゃあれだし、キクヨも此方に来ないかい?………少し話したい事もある」

 

感心していたら、エルが妙に真剣な顔で外(と言ってもバルコニーだけど)に誘って来た。

そのまま、外に出ると、ピシャリと扉を閉めて、エルは遠山達に背を向ける形で、手すりに体を預ける。

アタシも、其に習い同じように背を向ける。

目の前では普段余り意識しない東京湾と、人口島が一望出来た。

でもこの時点で遠山達に聞かれたくない事だと分かった。

 

「今のトウヤマをどう思う?」

 

お互いに目を合わせず、目の前の景色を見ながらの会話だ。

まるで、すぐ近くにいるのに、電話で話している気分だ。

 

「そうね………前よりも、よく感情が顔に出るようになったわね」

 

エルの今と言う言葉の意味は直ぐに理解した。

アタシの弟は、鏡高組本家を失ったショックによって、記憶がその時に戻っている。

正確には、ついこないだの『ベルセ』の使用によって。

今と昔が混ざってしまったのだ。

其が悪いとは、言わない。

 

「何で今其を言うんだい?」

 

アタシは、何故このタイミングで、その話をするのかをエルに聞いた。

エルは数秒無言になりやがて

 

「アリアと関わってからのトウヤマはどうだい?」

 

「質問を質問で返さないでよ」

 

アタシの質問には、答えず、次の質問をしてきた。

今は答えられないってことね。

 

「普通に、話しているようで何処かアリアを怖がっているようにも見えるけど………時々、私達家族(ファミリー)に向ける目もするのよ」

 

家族(ファミリー)……か」

 

此は、悪魔でアタシから見た勝手な印象だ。

遠山は、前にアリアに会ったような気がすると言っていたし、アリアの事を思い出そうとすると酷い頭痛に襲われると………確かに、遠山はその様な素振りを見せていた。

だけど、一つ気になるのは、何故バスでアリアを庇ったのか?だ。

あの時点ならまだ、エルからの話も無く神崎かなえの存在だって遠山は知らなかった。

あの時点なら遠山は、爆弾をアリアに押し付けて殺そうとしただろう。

少なくとも、家族(ファミリー)を傷つけた相手を遠山は許さない。

 

イギリスで会ったことがあるとか?

いいえ。だったら私も会ってるしエルも会ってるだろう。

遠山は、興味ある人物の名前と顔は確りと覚えてるのだ。

興味がなければ直ぐに忘れる。

もし、遠山が隙を見て私達の所から離れてアリアに会ったと言うのなら覚えてる筈なのだ。

 

では、『ベルセ』になり忘れた?

私達の事を忘れた時みたいに?

 

尚更無いわね。

遠山は、そうなる前は、ずっと離れなかったもの。

『離れるな』と『金次』として、命令したから。

遠山はこの事には『解除』と言われなければ離れる事は出来ない。

 

此は絶対なのだ。

誰にも覆す事は出来ない。

本当の意味で此を使えるのは、ユキちゃんでも無いエルでも無い。

HSSのその根本を理解する事で使う事が出来る―――アタシだ。

 

(ま、此も今の所何でしょうけどね。旧鼠の説明も何処か胡散臭いし)

 

「其は、そうと、何でまた急に東京武偵高なんかに来ようと思ったんだい?本来なら帰るつもりだったんだろう?」

 

エルの質問には、アタシも答えない。

其は向こうも分かっていようだ。

聞いてみただけとお互いに、納得出来る。

エルは、初めて此方に視線を合わせて

 

「『ブラド』がこの武偵高に忍び混んでいると言う情報が確認された」

 

「この学校のセキリティはどうなってるのよ?」

 

夾竹桃に理子恐らくもう行動を開始しているであろう魔剣(デュランダル)にブラド。

此でイ・ウーのメンバーがこの学校には少なくとも4人も潜んでいることになる。

ほんと、気が重くなる。

だが、エルの言った言葉に思わず、笑みが溢れそうになる。

ブラド、其は遠山とエルが狙い初めて多くの注目を集めるだろう化け物。

お宝の匂いがプンプンするわね。

遠山と、知り合って初めて妖や超能力者(ステルス)なんかに出会って来た。

最初は目を疑うような光景にも今では、こうして当たり前の様に冷静に考える事が出来る。

此が、弟の言う普通じゃないって奴ね。

良いわねとってもゾクゾク(興奮)する。

初めてパパとママに連れられて遊園地に行ったときの様なそんな感覚が、また蘇る。

本当に金次って―――最高よね。

何時もこの感じを味会わせてくれるんだから。

 

「と言っても、ボクは無断だからね。バレ無いように最新の注意を払わなければいけない訳だ」

 

「あ、やっぱりそうなんだ」

 

まぁ、此も何時もの事よね。

その癖、向こうには適当な理由を言って動かしてしまう。

ワトソン家の方も段々昔の様に影響力は回復してきてるみたいで暫くは安心出来るわね。

もう驚かないわよ。

 

「今ごろ、あちこちでトウヤマの映像は更にブラドと君達に注目を集めるだろう」

 

「はたして周りがどう解釈するか……ね」

 

出来れば、良い意味で捉えて貰いたいものね。

ポケットから取り出した、電子煙官(キセル)を取り出して、口に加える。

たまには本物が吸いたくなるわね。

遠山の鼻がこう言うのに弱いから余り吸わない様にしてたのと医者のエルに止められたからだけど。

 

『こぉら!ネクラ!あんた護衛対象の下着で何してんのよ!』

 

『此は違う!大きな誤解だ!話し合おう!話せば分かる!』

 

『アリア自分が大きく無いからって負け惜しみはやめて!』

 

『何が負け惜しみよ!そんなんじゃない!此れから大きくなるのよ!』

 

突然の叫び声に振り向くと、弟が、タンスの中に入っていたらしいユキちゃんの黒ブラを握りしめながらアリアの銃撃を交わしていた。

大方、ユキちゃんの荷物の中に変な物が入れられていないかチェックするようにアリアに言われてしぶしぶ開けたらたまたま勝負下着が出てきたところを目撃されたとかそう言った所なんでしょうね。

何やってんだが。

 

「そろそろ戻ろうか」

 

「そうしましょうか」

 

あの二人からは、何処かパパとママの面影を感じる。

普段のやり取りが、本当にそうなのだ。

ユキちゃんの一途な所や遠山に見せる笑顔もママに似ているし。

遠山は、パパの影響を受けているからだろう。

癖も、話し方も考え方も土下座の仕方も段々似てきている。

其でも、アタシの可愛い弟と親友には変わりはない。

アタシは、少し笑って三人の所へと向かった。

 

まずは、あの三人を落ち着かせるとしましょう。

アタシにとって何時までも世話の掛かる弟なんだから。




最近やたらティシュを使う。

鼻の話ですよ?
かみすぎて鼻血が出てしまうなんて事も。
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