空気も肌も乾燥してます。
ついでにまたしても風邪を引きました。
↑全く懲りてない。
「やっと見つけたぁ~」
その男は笑う。
私の目の前で、無くした物が見つかった人の様に嬉しそうに
「身長も違う。胸の大きさも違う。仕草も違う。そしてなにより匂いが違う……幾ら廻りを騙せても、俺は騙されない」
妙に失礼な事を言いながら。
其でも、その男からは肌に無数の針が刺さるようなチクチクとした殺気が伝わって来る。
「だが、其処は中々頑張った方だと思うぞ。………“気に入った”」
ニタァと底意地の悪い、そして、先程とは違う新たな玩具が見つかった子供のような――そう
「本来なら3秒だが、特別に5秒やる」
例えるならば、罪悪感の欠片もなく無邪気に地べたを這う虫を踏みつける子供の様な笑顔で
そして、同時に私には大きな疑問が頭の中で渦巻いていた。
「だからさ~」
何故―――何故――何故?
どうして?
この日本に、この武偵高にいるんだ?
―――何故?
「精々逃げてみろよ」
★ ☆ ★
『アリアの中の緋弾―――正確にはその中に宿る者。この子は、恋と戦を好むの。どちらが欠けても目覚める事は無い。けど、其を強制的に目覚めさせる事が出来る手段がある。
此は、本当にごく一部の限られた人しか知ることが出来ない。数十年―――数百年に来るか来ないかの、様々な戦いを経験した記憶を持つ憑依者………この人を、緋弾の所有者に殺させる事で目覚めさせる事が出来る―――他にまだあるらしいけど残念ながら此処まで、頭痛や耳鳴りは貴方の危機的本能から来るものなのかもしれないわね。実際に過去の緋の贄となった憑依者にも似たような症状が合ったと記されているようだし………後、非常に嬉しい提案だけど今は頷けないわ。今出たらあの子を困らせてしまうもの』
(緋鳥に啄まれ新たな生を受ける者か)
だが、此で俺の頭痛や耳鳴りについては解決だ。
やっぱり、色金だったと言うことだ。
俺なりの解釈で言えば、色金アレルギーと言う事だ。
其に俺が、アリアに殺される事もアリアの様子からしてそんな大層な物を持っているなんて自覚も無いし問題無いだろう。
戦は、あるかも知れないが、恋?馬鹿馬鹿しい。
彼奴はそれどころじゃ無いんだと断言しているし少なくとも俺達と組んでいる間は問題無いだろう。
その後は知らん。
過去の記憶がどうとか言われても、今さら思い出してどうしろと言うのか?
大切なのは今である。
だが、此処で気になるのは、レキの事だ。
何故、レキの目の前で頭痛がしたのか?
其処だけが分からないままだ。
何れ聞くとして
「なぁ、金次よ~」
そんな俺の思考を中断させたのは、意外にもミイラ男であった。
全身包帯グルグル巻きの、ハロウィンのコスプレの様な事になっている武藤である。
きっと任務で事故か、犯人によってこんな姿になったのだろう。
お前も大変だな武藤。
全くどんな奴にやられたんだろうね。
「……何だよ?」
ヒソッと、隣の武藤に小声で話しかける。
「お前鏡高とケンカでもしたのか?」
「あー、なんと言うか、其より恐ろしいことだ」
「はぁ?」
確かに右隣からは物凄い視線を感じるのだ。
絶対に逃がさんと言わんばかりの。
と言っても、横を向いてのガン見では無くギョロリと目線だけが此方を向いている。
いやまぁね………此は昨日の夜に逃げ出した俺が全面的に悪い。
だが、学校ならば、まず襲われる事は無いだろう。
だから、俺は今久し振りに学校に来ている。
少なくとも部屋よりは安全だ。
「其より武藤、お前は騒がないんだな」
「男には興味ねぇよ」
男ねぇ………
先程から俺のずっと目の前、黒板の所に立ち、女子からキャーキャーとまるでアイドルのような黄色い歓声を受けている
俺はその歓声に紛れて話していた為菊代にバレる事はなかった。
だが、今の俺は他の事に興味を引かれていた。
其が目の前の転校生である。
(なんで、男装なんだよ)
綺麗な字でエル・ワトソンと書かれ、隣では、そのライブ開場のような歓声に女の担任が教壇から足を踏み外して、床に座り込んでしまっている。
どうやら、マンチェスター武偵高からの転入生として来たと言う。
何処ぞのフランスパイロットの様に。
だが、端から見れば確かに完成度は高く
「それでは皆さーん!スペシャルゲストの転校生を紹介しまーす!マンチェスター武偵高から来た、とーってもカッコイイ留学生ですよー」と、言うだけはある。
爽やかイケメンと言うやつだろう。
または、可愛い系男子(エルいわく男の娘とか言うんだったか)だ。
因みに、武藤から聞いた話だが同じように爽やかイケメンとか呼ばれていたらしい不知火は海外へ長期任務の為何時戻るかは不明と言うことになっているらしい。
帰って来るなよ永久に。
「エル・ワトソンです。これから宜しくね」
少年ぽさを出したいのか少し高めに声で言いそのまま一番後ろの席についた時、タイミング良く朝のホームルームの終了チャイムが鳴り其を待ってましたと、わー!キャー!と女子達がエルの席をマスコミの様に囲む。
その後は、もうドラマやアニメでもお馴染みの光景で
「前の学校では専門科は何処だった?」のと言う質問にたいし「ニューヨークでは
「王子様みたい!」と目をハートマークした女子からの言葉に「家は王家じゃない。子爵家だよ」と冗談めかして言えば、キャー!キャー!と更に盛り上がる。
先程まで目をハートマークにしていた女子含め数名が今度は\マークに早変わりしている。
「肌綺麗!女子より綺麗!」と誉められると僅かに動揺し「……ありがとう」と白い歯を見せ笑顔になっているが僅かにうっすらと冷や汗が流れている。
まぁ、エルは女だもんな。
だが、そんな事は知らない女子は、今のエルに黄色い声を上げ何人かクラッと来たらしくフラついて……衛生科や
「ワトソン君は、何部に入るの!」
「予定は無いよ」
その言葉に女子達は目の色を変えて其々の部活に勧誘し始める。
「水泳部に来てよ」
その単語が出た瞬間先程まで友達に囲まれているような気安さで上手くあしらっていたのだが
「あー、ごめん。ボクは何処の武偵高でもクラブ活動はしないんだ。特に水泳はNGで――」
ガタン!
流石にこれ以上は無限ループだろうと俺は、勢い良く立ち上がり、全員の視線を集める。
静まり返った教室の中そのまま、エルの所まで歩き
「次は移動だ。案内するからついて来い」
クイッと親指で扉の方を指す。
武藤から聞いたが、男女別の授業があり女子は教室男子は移動だそうだ。
男子は授業と言う名の肉体労働だという。
女子はそのままアドシアードの準備。男子は
既に男子達はもう移動済みだった。
「そうだね。其じゃボクは此で失礼するよ」
そう言いエルも席を離れてそっちの方向へと向かうが、其でも文句垂れる女子どもがエルの後ろをピク○ンみたいについきやがる。
此じゃ意味無いな。
仕方ない。
ボフン!
「きゃああああああああ!!」
「来いエル!」
「うわっ!」
俺は、菊代以外誰も見ていないのを見計らってポケットから煙弾を出して地面に素早く思いっきり叩き付ける。
クラス中に突然広がった煙でクラスが戸惑っている隙を伺いシナモンの香りをたどりエルを抱き抱えて走り、屋上まで向かう。
その間に、ある程度の状況の理解をしたエルが抱えられた状態で
「こう言う時の君は本当に強引だな。最方法は幾らでもあっただろう?」
と、少しの……いやかなり呆れた様子で肩を竦めてヤレヤレとわざとらしく言う。
「あのまま行けば質問の無限ループだ。其にお前もああ言うのは望ましく無いだろう?」
実際部活やらに入ればそれこそ着替えやふとした瞬間にボロが出るだろう。
特に水泳は、水着だ。
隠せるものも隠せやしないだろう。
「ボロが出るからね」
「だったらわざわざ『
其に、エルは男装は好きでは無いだろう。
リバティー・メイソンでも何処でも男装する必要はあったが、日本でわざわざなんて事は余程重要な何かが
「其は、実に簡単な理由さ」
この状態では格好もつかないがエルは妙に意味深な言葉と顔を作り此方を向く。
やっぱり何か訳が
「男と言うことにすれば、今現在、唯一、一人部屋と言うことになっている君の部屋に正式に住めるじゃないか」
エルはキメ顔でそう言った。
「今すぐ裸に引ん剥いて女子達の目の前に放り投げるぞ?」
「そ、そう言うトウヤマだって今戻ったらキクヨに見つかるんじゃないのか?」
今すぐ窓から投げたい衝動をグッと堪えてせめてもと思い言った皮肉は、正論で反撃された。
「気付いてたのか?」
「なんと無くね。今朝から二人とも様子が変だったから」
「そうか」
「何かあったのかい?」
「まぁな。だがケンカじゃねぇぞ。俺が、一方的に避けてるだけだ」
心配そうな顔から一転物凄く以外だと、驚き口を両手で押さえる。
「以外な事もあるんだね。君が姉を避けるなんて、何時も行動を供にしているのに、明日は銃弾でも降るのかい?」
なんだよそれ、物騒過ぎるわ。
「せめて雨にしてくれ。………俺だって心苦しいが今はそうするしかねぇんだ」
エルは、暫く考え込んでから
「分かった。君にも何か考えがあるんだろう。何か有ったら言ってくれボクに出来る事なら協力する」
そう、妙な納得の仕方をしてくれた。
「流石だ。持つべき者は友だな」
「親友の頼みだ。タダにしとくよ」
「何時もそうしてくれ」
お互いにニヤリと笑い、かつてイギリスで行動を供にしたようにトントン拍子で此れからの話が纏まって行くのだった。
エルを途中で下ろし、その場で一時解散となり、俺は一人で屋上に来ている。
エルには、初日と言うのもあり、授業には出てもらい集合は昼休みとなった。
その間に俺は服やら靴やらから出てくる発信器を全て外して探索を混乱させる為にそこら辺にばら蒔いてきた。
すまん白雪。
すまん菊代。
今回は見逃してくれ。
「いや、疲れたよ。肉体労働はボクには似合わない」
そう言いながら、女子からの差し入れだろう、スポーツドリンク数本と、タオルを首に掛けたエルが入って来た。
「二人に見られて無いよな」
「あぁ
うわぁ、俺脱走したペットみたいな扱いされてるよ。
まぁ
この件が終わったら次は体に埋め込まれるんじゃ無いだろうか?
ありそうだ。
只でさえ、ボディーガードがボディーガードされそうだと言う前代未聞の状態だと言うのに
「其でトウヤマ、昨日は何処に行ってたんだい?」
気付いていたのか、菊代から聞いたのか。
エルには話しても問題無いな。
「新宿警察署」
「ブフッ!」
飲みかけていたドリンクを喉に詰まらせたのか、少しの吹き出す。
全くもう少し落ち着いて飲めばいいのに。
暫く咳き込んでからエルは此方を向いての
「き、君は何をしているんだ!そんなの自首しに行くようなもんじゃないか!」
自首するほどの事をしてきた覚えはありません。
「何も真っ正面から乗り込んだ訳じゃねぇよ。裏口からこっそり入って監視カメラの映像をリアルタイムで見てカメラ避けながら、一応念のために制服拝借して、会いに行っただけだ」
反省すべき点があるとすれば菓子の一つも持たずに行った事だな。
今度会いに行くときが合ったらももまんでも持っていこう。
選んだ理由は、娘さんの好物ってだけだけど。
其に制服もちゃんと着せてイスに座らせてあげたし。
借りたら返す。
此れ常識。
気絶させた見回りも何があったかなんて理解はしてないだろう。
あの夜は何も無かったのだ。
その後でエルには、俺の事は控えて神崎かなえの事だけを話した。
「ふぅん……だとすると少し奇妙だね」
「奇妙?」
エルは何処か腑に落ちないと顎に手をやり考えるようにして聞いてくる。
「そうだ。何故、神崎かなえは君が来ることまで把握していたのかだよ」
なるほど、確かに其は誰もが気になる事だろう。
「俺の顔と、其と来るかもしれないと教えた相手がいるってだけだ」
「誰だいそれ?」
「不知火だよ」
キョトンと、エルは思い当たる人物がいないのか、瞼をパチクリと僅かに動かす。
まぁ、無理も無いだろう。
エルはあの時が初対面だし、顔は変な仮面で隠れてたしな。
「ほら、いたろ?あの変態仮面の男だよ」
そう言うと、あの飛行機の出来事を思い出したのか、恐る恐ると言った感じで口を開いた。
「……0科の?」
「元な」
そう、『元』だ。
他ならない不知火の手によって、0科は、壊滅している。
直ぐに、補充しようにもその候補もそのまた候補も全滅。
イタチゴッコになるくらいなら、暫く0科を封印するしか無いだろう。
『貴方のお友達の仮面の人にも宜しく伝えてくれる?』
エルとの何気ない会話で、昨日と言うより今日か。―――その時のある一言を思い出す。
不知火は一度会っているのだろう。
その不知火によって俺の顔と事を知り、俺が、来ることも予想されていた。
そんな所か。
因みに言うと、俺は神崎かなえにある提案をしていた。
勿論断られると分かってのなんちゃって提案である。
簡単に纏めると、『顔も名前も人生も何もかも変えて娘と自由に暮らす気は無いか?』と。
此はハッキリ言って可能だ。
アホらしい提案だが、神崎かなえが、OKすれば、一日で終わる。
俺は、アリアから母親を自由にしろとしか言われていない。
つまりやり方は此方に任せると言うことだ。
実際にそう言う事が出来る奴もいるし、そう言う手続きが得意な奴が隣にいるし、今は、0科もその手の奴まで、不知火によって消えたと言う。
今が絶好のチャンスなのだ。
そのチャンスすらも自ら断ったのだ。
断った事に意味がある。
実際に実行する気は、今のところ無い。
出られて隠居されても今度は此方が困るしな。
―――と、俺はエルに伝えた。
「なるほど、って結局それボクがやるんだよね!?」
エルの叫びとも言える訴えを、置いて有ったもう一つのスポーツドリンクの蓋を開けながら聞く。
「元々お前の持ち出した提案じゃないか。其に、婚約者だろ?だったら、その母親を助けるのは当然だろ?」
「元だ!其にあれは結局ボクの父様が言い出した事だし、その父様も、もういないじゃないか」
ボケにツッコミで返してきたと思ったら、今度は、顔を伏せて、悲しそうな演技をする。
演技である。
俺は騙されん。
俺が、一生もんのトラウマ、クロメーテルなんて吐き気のする格好で骨抜きにしたあと乗り込んで来て飛びっきりの笑顔で全身に何十発も撃ち込んだのこの目で確りと見てるからな。
まぁ、もしあのままだったら下手すれば俺が、アッチの意味で危なかったからな。
その辺りは感謝するよ。
其に、思い出してるのか、ちょっと口元笑ってるぞ。
「其で、そっちはどうだったんだよ」
「あぁ、どうやらもう動き出しているらしい」
エルは鞄から取り出した一冊のノートをパラパラと捲りながら本題を言う。
「後は、ボクの脚本通りにって事さ」
つまり、もう役者は揃ったと言うことだろう。
迎えに行きますかね。
その最後の役者を。
その日の放課後。
アリアは、白雪のボディーガードを朝から付きっきりの為此処にいなくて本当に助かった。
白雪の気も今はそっちに行ってるお陰で菊代からだけ逃げてる状況になる。
此処にアリアの桁外れの勘と、白雪の占いが入ったらと考えると、恐ろしいものだ。
閉鎖されたステージにハンター100体いるなか一人取り残されたようなもんだ。
絶対捕まる。
特殊部隊に囲まれる方がまだましだ。
さて、エルが、言うには、今日この日いや、正確にはここ数日、白雪が二人いたのだと言う。
同時刻に、何人かの生徒が別の場所で白雪を見かけているのだ。
此れだけ情報が有ればもう十分だ。
大体この辺り
ドン!
「きゃ!」
警備員の見回りの様に同じ階をグルグルと何周もしていると、胸辺りに大きな衝撃が走る。
ぶつかって来た、人を見ると巫女服に、黒髪。
見る目の無い人が見たら白雪だと錯覚するのだろう。
だが、全く違う。
「あ、ご、ごめんねキンちゃん。怪我はない?」
「違う」
「え?」
声の高さが違う。
白雪はもっと声のトーンが高い。
匂いが違う。
白雪の香りは、もっと優しく甘い桃のような香りだ。
だが、お前からは、草原の若葉草のような香りだ。
記憶の中から一応白雪の妹にこんなのがいたのか探るが、勿論いない。
つまり
(ビンゴ)
ラッキー。
俺は、目当てのお宝を見つけた時のような嬉しさで変な風に笑うのを防ぐため、グッと堪えるが、逆に口元がつり上がる。
「ヒッ!」
目の前の何かが、悲鳴を上げるが知った事じゃない。
でも、良かったな。
此処が武偵校内で、そして恐らく
お前は、エルのシナリオ通り
「やっと見つけた~」
俺と、『鬼ごっこ』するだけで良いんだからな。
勿論俺が、鬼役で。
ただの鬼ごっこだよ。
平和だよ。