■きっかけはキミが映ったスフィア
赤い飛空艇セルシウスの甲板に、
柔らかな風が吹いていた。
雲の切れ間から差す光の中で、
ユウナは静かに一つのスフィアを見つめている。
古びた表面は淡く輝き、
まるで何かを語りかけるようだった。
リュックが背後から顔を覗き込む。
「ねえユウナん、
そのスフィア何が映ってたの?」
ユウナはゆっくりと振り向いた。
瞳がわずかに輝いている。
「“ラア・メン”…って言ってたよ。
アルベド語じゃないよね?
古代の料理みたいなんだよ」
「へぇ、料理?
アルベド語じゃないな」
パインが腕を組んだまま眉を上げる。
「全然、聞いたこともない」
ユウナは小さく笑った。
「でもね……
すっごく美味しそうだったの。
わたし、作ってみたい!」
リュックが飛び跳ねる。
「いいじゃんいいじゃん!
未知の料理探検ツアーだー!」
こうしてカモメ団は、
古代の謎の料理――“ラア・メン”
再現の旅へと出発した。
■謎のレシピ
スフィアを再生すると、
古代語の象形文字が空中に浮かび上がる。
麺束:1000
祈り子杯:ザナルカンド3号どんぶり
具材:海と山の恵みを惜しみなく、刺激も適宜
※供物の儀式に用いるべし
沈黙。
最初に声を出したのはリュックだった。
「“1000”って…なんて読むの!?
習ったことないよ。
知らない言葉?これ記号だよ〜」
「祈り子杯って何だ?容れ物か?
容量はどれくらいなんだ…」
パインは真顔。
ユウナは決意の笑顔を浮かべた。
「うふッ、とりあえず…
ユリパで力を合わせて、
材料を集めてみよう!」
いつもの冒険の始まり方だった。
■食材集めの旅
ビサイド島の青い澄んだ海が揺れる。
しかしその海面が――突然、爆発した。
巨大な魚が跳ね上がる。
「待って、食材になるんだから落ち着いて〜!」
ユウナが説得を試みる。
「ユウナん、そいつ食べる気なの!?」
リュック絶叫。
魚は暴れ、船を揺らし、
波を巻き上げる。
最終的に三人は全力で捕獲した。
ユウナは満足そう。
「とにかく新鮮が一番!」
続いて、キノコ岩街道。
地面を歩くキノコ。
全力疾走するキノコ。
逃げるキノコ。
「追いかける料理は初めてだ」
パイン冷静。
「待って〜!
あなたは“メン・マー”になるの!」
ユウナが必死。
リュックは笑いながら追いかける。
笑いキノコでも食べてしまったのだろうか?
結果――大量捕獲に成功!
そして、雷平原に向かった。
空が光る。
大地が震える。
雷の中で浮遊する液体。
「これ絶対スープじゃないよね!?」
リュック叫ぶ。
ユウナは神妙な顔。
「でもスフィアにはね。
“雷の恵み”ってあったよ…!」
パインがため息をついた。
「(雷?あったっけ)
まあ…持って帰るしかないようだな」
それから、ベベル地下遺跡。
ここでなんと!
古代製麺機、発見。
シンラ君に年代測定してもらったら、
1000年くらい前のものなんだって。
起動。
暴走。
麺が無限に噴き出す。
「麺束:1000…これで達成だな」
パイン目線の独断的な分析。
「止めろー!もう十分だぞー!」
セルシウスが麺で埋まりかけた。
さすがにアニキさんに怒られた…リュックがね。
ダチさんも、ごめんね。
■食材も揃ったみたいだし、調理開始!
セルシウスの厨房。
ちゃんとハイペロさんに許可をもらったよ。
巨大な鍋。
大量の材料。
ユウナが真剣に調理する。
スフィアで見たとおり、やってみる。
麺を投入。
スープを合わせる。
具材を山のように入れる。
(完璧、たぶん)
リュックが震える声。
「ねえユウナ…鍋が…鍋が膨らんでるよ…?」
「おかしいね、
スフィア通りに作ってるだけなんだけど…」
パイン静かに言う。
「これは…嫌な予感しかしないな」
次の瞬間。
ボンッ――爆発。
白煙。
そして現れた。
巨大ラーメン生命体。
(なにこれ?)
時間がかかったら、
伸びて伸びて、
増えちゃったよ!
■フードファイト開戦
麺が触手のように暴れる。
チャーシューが牙をむく。
スープが咆哮する。
「これ…料理じゃなくてボス戦だよね!?」
ユウナ驚愕。
「食べて、食べて、やっつけるしかないよ」
「味は悪くなさそうだが、
[[rb:攻撃力 > カロリー]]が高すぎる」
パインの栄養士視点の冷静評価。
「ほらほら、スープがブレス吐いてるよー!」
ユウナが覚悟を決めて、深呼吸する。
(さっき、間食しちゃったからな…
あんまり、お腹へってないよ〜)
箸を握る。
それから、ドレスチェンジ。
超激レア・食戦形態。
「フードファイター」
[uploadedimage:23738639]
「じゃ、いただきますッ!!」
麺を斬る。
すする。
かみ砕く。
[[rb:食べる=攻撃 > フードファイト]]。
数時間後――
完全完食。
「ふぅ〜、ごちそう…さま、でした〜」
静寂。
真実のスフィアが再び輝く。
古代の祈り子の幻影が現れた。
「我ら祈り子に捧ぐ供物“ラア・メン”。
海山の恵みを集め、巨大なる器に盛り、
我らの眠りを慰めるために供せよ」
「え?食べちゃいましたけど?」
ユウナが静かに呟く。
「供物…だったんだ」
パインが呆れ顔で頷く。
「巨大なのは正解だったわけだ」
リュック目を丸くする。
「じゃあ、ユウナん、
祈り子用のご飯を作って、
食べちゃったってこと!?」
ガガゼト山の祈り子群が微笑む。
「かまわない、どうせ、見るだけ。
わたしたちは食べられない。
もう、このカラダではな…」
「久方ぶりの供物…確かに受け取った。
初めて作ったわりに…悪くなかった」
ユウナ、照れ笑い。
お腹はパンパンに満腹。
■エピローグ
スピラに“ラア・メン”ブーム到来。
誰が広めたか、誰が訛ったか。
“ラア・メン”は、
ラーメンと呼ばれるようになった。
やがて、ご当地ラーメンが次々と生まれた。
ビサイド:海鮮ラーメン屋台村
ルカ:ブリッツ試合観戦・幕内ラーメン
アルベド族は、
全自動ラーメン製麺機の開発に乗り出した。
太麺、細麺、ちぢれ麺。
そしてセルシウスの甲板は、
今日も賑やかだった。
風が心地よい。
リュックが笑う。
「ユウナ、次は何作る?」
パインが言う。
「古代の供物シリーズか?」
ユウナは遠い目をした。
「でも……しばらく麺は見たくないかな〜」
三人の笑い声が空へ広がる。
セルシウスは静かに飛び続ける。
ちゃんとした新しい冒険が待っている、はずだから。
完