皆さんこんにちわ。
続くか分からない系作者、五月雨と狐です。
言いたいことは分かります。
吸血鬼の方は学校のタブレットに保存していて、いま没収中のため、しばらくお待ち下さい。
箸休めと言うか書きたかったモノがこちらになります。
―――――――――あぁ、なんで。
自分の目の前で倒れ伏した、黒髪の彼女を見て、漠然と頭のなかによぎったのは、そんな言葉だった。
頭が白く遠ざかっていく。
なのに、それを何処か冷静に眺めている自分がいることに、どうしようもない嫌悪を覚えた。
心を支配するのは、抑えきれず暴れ回るような怒りと、取り返しのつかない喪失感。
―――怒れ
不意に"それ"が頭の奥底で嘯いた。
耳元じゃない。もっと深い場所。
思考の底を直接撫でるような、不快だがどこか安心を覚える声。
それを振り払うように僕は地面を蹴った。
倒れ伏した彼女の元へ駆け寄る。
「スバルっ、大丈夫!?」
大丈夫なわけがない。
そんなこと、見ればわかるのに。
それでも―――みっともなく奇跡に縋る自分がいた。
腹が裂け、そこから溢れた血が石畳の隙間に広がっていく。
鉄の匂いが、鼻の奥にまとわりついて離れない。
それでも、まだ諦めきれない。
「スバル、スバル、スバルっ…!」
呼び枯れる声が震える。
その声に応えたかどうかは、分からない。
でも、かすかにスバルの唇が動いた。
「さ、てら……は?」
―――この状況で、なお他人を心配するのか。
そう思わなくもないが―――それが彼女なのだろう。
なら答えない理由なんかない。
「大丈夫っ、さっき貧民街から出ていったはずだ!だからスバルも早く―――」
そう言いかけた、その瞬間。
「ス、バル?」
聞こえるはずのない声が背後から響いた。
思考が止まる。
なんで―――?
そう口にしかけて、それが無意味だと悟るよりも早く。
「あら?まだいたの?」
軽い声。
けれど、その瞳は獲物を見た狩人の目だった。
刃を持った暗殺者、エルザと名乗った女は―――
躊躇いなく、サテラの首を掻き切った。
「あ、え?」
それが彼女の最後の言葉だった。
遅れて、身体が崩れ落ちる。
そうして、スバルの手に重なるように、サテラも地に伏した。
「なん、で?」
こぼれた声は、驚くほど静かだった。
怒りはある、あの女に対して。
けれど、それ以上に―――
その矛先は、どうしようもなく弱い自分に向けられていた。
守れなかった。
何も出来なかった。
―――怒れ
またソレが囁く。
頭の奥が軋む。
何かが内側からこじ開けようとしている。
きっとこれは、出してはいけないものだ。
でも……………………
「最後はあなたね………あの子達のそばに送ってあげるわ」
足音が近づく。
「一応、お名前を聞いておくわ。なんて言うのかしら?」
首筋に、冷たい刃が触れた。
―――怒れ
―――怒れ
―――怒れ
うるさい。
何度も何度も。
そのたびに、自分のなかで何かが蠢く。
押さえつけようとしていた何かが、軋みながら形を保とうとする。
でも、もう―――――
「……どうでも、いいや」
ぽつり、と呟く。
「どうでもいいんだ」
理性が静かにほどけていく。
「―――壊れればいい」
「――――ッ!?アナタ、今すぐやめなさい!!」
初めて、エルザの声に戸惑いが混じった。
何を言ってるんだ。
お前なら、今直ぐ僕を殺せるだろうに。
―――願うなら。
今度は命に変えてでも、彼女たちを助ける。
そう思った瞬間。
意識が、深い底へと引きずり込まれていく。
―――怒れ
最後に聞こえたその声は、どこか優しかった気がした。
「――――――――ッ!!!!!!!!!」
喉が裂け、肺が焼ける。
それでも止まらず、叫び続ける。
人のものではないその叫びが、世界を震わせる。
それが自分の口から発せられたと、理解するより前に―――
意識は完全に闇へと落ちた。
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