超かぐや姫 ハッピーエンドを求めて私は繰り返す 作:にゃるまる
そしてその感情のまま書いてます。
文章とか久しぶりに描いたのでおかしかったらすみませんです。
「---」
もう何度この光景を繰り返しただろう。
かぐやのラストライブ。私が持ちうる全てを以て月のお迎えからかぐやを救おうとしてーー
「彩葉……大好き」
ーーもう何度、この言葉を聞いただろうか。
「ーーーーーああ、また《ダメ》か」
それ故に私は《いつもの》の様に自らの首にブレードを押し付ける。
迷いもなく、手慣れた動きで押し付けたブレード。そしてその動きは《ツクヨミ》の外ーーつまりはリアルの私にも連動されており、現実の私の手に握られたナイフが同じように私の首に押し付けられた。
それを見た周りや遠い空の上にいるかぐやまでもが何かを叫び手を伸ばしているが、私は構わずそのブレードで自らの首を切り飛ばし、そして現実の私は首の頸動脈を的確に切り裂いた。
「…いろは?…ッ!?いろはぁぁぁぁッ!!!!」
《ツクヨミ》では月のお迎えによって空の上にいるかぐやが、そしてリアルからは隣にまだいるかぐやが叫ぶ声が聞こえる。
悲痛な叫び声。普段のかぐやからは、一度も聞いたことのないその声に私はただ静かに笑い、そして心の中でつぶやく。
「(安心してかぐや……)」
ーー《次》こそ一緒にハッピーエンドを迎えるからーー
私が《現象》と命名したこの未知の出来事を説明するには、かなり時間を巻き戻さないといけない。
そう、あれはーー最初の世界でかぐやが月のお迎えと共に月へと戻った次の日の事だ。
かぐやを連れていかれた事、そしてもう会う事が出来ない事に絶望した私は、次の日の夜に《ツクヨミ》にログインしたままで、首を吊って死んだ。
せめて、あの楽しい思い出に溢れる世界と共に最期を迎えたいと願い、実行した。
ーーー筈、だった。
「---ではここわかりますか?それでは…酒寄さん」
「--は?」
素っ頓狂な変な声、それが死んだ筈の私が発した物だと理解するのに時間が掛かった。
「え?は…え?」
周囲を見渡すと其処は見慣れた学校の教室。
皆が不思議そうな面持ちで此方を見てくる中、私はただひたすらに戸惑っていた。
「…おや?珍しいですね酒寄さんが聞き逃しをするなんて。ここの問題わかりますか?」
「あ、え…あ、はい。ここでの《なりぬ》はーーー」
優等生を長く演じてきたせいだろうか。
無意識に言われた古文の問題を解いてしまいながらも、混乱は止まらない。
「(え?待って?え?え?)」
自らの首にさりげなく手を当てながら思い出す。
自らが吊るしたロープに首をかけ、椅子を蹴り飛ばした瞬間に襲い掛かった激痛と苦しみ。
無意識に身体は生存を求めて動き、けれども計算された結び方はそれを許さずに私を苦しみ続け、そしてかぐやががいなくなったあの家と、スマコンを通して見える《ツクヨミ》双方の景色を最後に私は確かに死んだはずだ。
それがどうして生きている上に学校で授業を受けているのだろうか?
「(待って待って待って!?理解が追い付かない!?)」
混乱する頭の中。けれども表にはそれを何とか出さずに過ごし、古文の回答を終える。
先生からのお褒めの言葉。周囲からの賞賛の拍手が聞こえるが、今の私にはそれに応えられる余裕はとてもなくてーー
「………すみません。少し体調が悪いので保健室行っても良いですか?」
ーー自らの人生で初の仮病を使用した。
こういう時、優等生と言うのは良いものだと感じる。
《おや?それはいけませんね。わかりましたすぐに保健室に行ってください。保健委員はーー》
《あ、その…ひ、1人で大丈夫です》
《酒寄さん?どうしました?》
《あの、ちょっと体調悪くて…少し横にならせてもらっても良いですか?》
《あらあら珍しいわね。全然大丈夫よ。先生すぐそこにいるから何かあったら言ってね》
誰1人とて仮病である事を疑いもせずに、こうして休ませていただけるのだから。
「(すみません先生方…けれども私も今はいっぱいいっぱいでして…)」
ベットの上で手を合わせ嘘をついた事を内心謝罪しつつ、ひとまず横になると同時に深く深呼吸を繰り返していく。
芦花が以前に「頭の中がぐちゃぐちゃ~って時は、一旦考えるのをやめて、深呼吸して落ち着くと良い答えが出るよ~」と教えてくれた事を思い出したのでそれを実行していく。
吸って、吐く。ただそれだけに意識を集中させてしばらく続けていると、段々と落ち着いてきたのを実感していく。まだ頭の中は混乱しているが、それでもさっきよりはかなりマシになってると自覚出来ている。
その状態でもう少し深呼吸を繰り返しながら、ひとまず落ち着きを取り戻したのを把握したうえで、状況把握を始めていく。
「(まず第1に私は間違いなくあの部屋で自分で首を吊って死んだ…それは間違いない)」
自らの首に手を当てて思い出す激痛と苦しみ。
あれが夢幻でした、なんてとてもではないが思えない。
あの痛みも苦しみも間違いなく現実で起き、そしてその結果私は死んだ筈……
「(けれども生きている。そして何故か学校にいて授業を受けていた…と)」
分からないのは此処からだ。
仮にあの時、誰かが異変に気付き私を助けたとする。
芦花か真実、案外お兄ちゃんが様子のおかしい私に気付いて助けた可能性は多いにある。
だが、そうだとすると普通病院に行くのがごく当たり前の判断で、到底ではないが死にかけの人を学校に連れて行って授業を受けさす、なんて絶対にあり得ないし、仮にあり得たとしたらそいつは単なる鬼畜外道でしかないだろう。
だがそうなると、今の状況と繋がる事が出来ないわけで……と頭を抱えつつ何か繋がる記憶がないかと思いだそうとするもーーー
「(…ダメ。やっぱり私の記憶はあの部屋で首を吊ったのが最後になってる)」
いくら記憶を呼び覚ましても思い出せるのはそれだけ。
どう足掻いてもこの現状へと繋がる記憶は、何1つ存在していなかった。
「……はは」
いったいぜんたいどういうことだこりゃ、と乾いた笑みがこぼれる。
死んだ筈なのに学校で授業を受けている、なんてあまりにも理解が追い付かない状況がまるでゲーミング電柱からかぐやを見つけた時みたいめちゃくちゃでーーーーーー
「ッ!!そうだかぐやはッ!!?」
思い出すあのラストライブを。
親友と、兄とその友達達に力を借りて挑み、そして敗北したあの戦いを。
そしてその最後に、月のお迎えと共に月へと去っていったかぐやを。
「もしかしたらーー!!」
この意味不明な状況がもしもかぐやか、または月が関係しているなら、かぐやがまだどこかに居るかもしれない。
それが希望的推測だと理解していながらも私はベットから起き上がろうとして、ふと視界の隅に入ったカレンダーへと目を向けてーーー
「--------え?」
ーー思わず動きが止まった。否、止められてしまった。
「酒寄さん?どうしたの大きな声だして?かぐやがどうとか聞こえたけれど…?」
保健室の先生がカーテンを僅かに開いて様子を聞いてくるが、今の私はそれどころではなかった。
「あ、あの先生」
「なに?どうしたの?」
自分の呼吸が乱れていくのがわかる。
せっかく深呼吸を繰り返し落ち着いていた全てが心臓の鼓動音と共に強まっていくのがわかってしまう。
けれども、それでもとわずかに震える指でカレンダーを指さす。
「せ、先生…カレンダー、間違えて…ませんか?」
震える指先、そこに示された日付はーーーーー
「え?いいえ合ってるわよ?」
ーーーかぐやと初めてあったあの三連休の前だ。