高度育成高等学校。未来を支えていく若者の育成を目的に政府が作り上げた学校。俺がこれから通うことになる学校だが、この学校は生徒を実力で測る学校だ。その「実力」次第では当然のように退学させられるイカれたルールとなっているが、一般にその情報は知らされていない。では何故俺がそんな情報を知っているのかというと、それは俺が転生者だからだ。
「ようこそ実力至上主義の教室へ」。前世で大人気の作品だったこの世界に俺は転生した。あまりにも前世と変わらない世界のため最初はわからなかったが、この学校の名前をテレビで見て衝撃を受けた。が、それもすぐに落ち着いた。何故ならこの世界は前世とそこまで大差ない。備えなかったせいで死にました、なんて物騒なことは起こらない。舞台となるものも基本的には学校の敷地内とあって、進学しなければ前世と同じような人生を送って終わりとなる。
気にならなかった、と言えば嘘になる。俺は前世でこの作品を追ったことこそないが、それでも設定や登場するキャラの多くに魅力を感じる程度には好きだったのだ。原作を読んでいなくともアニメの一期はしっかり楽しんだし、二期以降も時間ができた時に見ようと思っていた。原作を追いかけ、アニメは全てリアタイし、ゲームが出れば予約していた作品と比べると熱量はどうしても劣るが、それでも少なからず好きだった作品の世界に転生できた喜びはあった。だがそれでも、しばらくはこの学校を進学先にするか迷っていた。進学率・就職率100%謳っているこの学校に行くよう散々両親や中学の担任に勧められたが、生徒全員がその恩恵受けられる訳ではないことを知っている身としてはハイリスクローリターンな賭けはしたくないし、原作キャラの闘争に巻き込まれたら面倒極まりない。原作キャラに会ってみたい欲は確かにあるが、龍園辺りにボコられる可能性を否定できないのは恐怖でしかない。しかもそんな地獄を耐えきったところで、高校卒業資格しか貰えない可能性の方が高いのだ。はっきり言って、普通の学校に進学して普通に生活した方が遥かに賢い選択だ。それでも結局進学先に選んだのは、やはり原作キャラに会ってみたい欲が勝ってしまったから。
バスが緩やかに発進し、車体が揺れる振動でバタバタとうるさい音を鳴らす。なんとなく車内をぐるっと見渡してみたが、どうやら原作主人公である綾小路とは別の車両だったらしい。同じ車両なら多少舞い上がっていたかもしれないが、ホワイトルームの最高傑作であるあいつなら速攻で勘づいたかもしれないし、むしろ良かった。いきなり敵認定されるとは思わないが、ホワイトルームからの追ってだと思われたら最悪普通に殺される。ワンチャンDクラスにされる可能性があるし、見掛けてもすぐに視線を外すべきだろう。あいつは味方に付ければ最高だが、敵に回すと詰みでしかない。警戒されるような行動をしないよう注意しよう。ま、そもそも原作キャラと同じタイミングで入学できた保証なんぞないんですけどね。原作ではどうだったか知らないが、アニメでは具体的な日付けが書かれていた記憶がないので、これで入学したら先輩or後輩でしたって可能性も全然ある。1学年下だったら嫌だな。名前忘れたけどすげぇ暴力の擬人化みたいなやついたじゃん。あんな現代社会でどうやって生きてきたのかわからんやつと同じ学年とか普通に拷問だろ。一番マシなのはハイスペ会長と同じ学年だが、1年間しか主要原作キャラを見れないのは面白くない。マジで運ゲーだなこれ。
やがてバスは高度育成高等学校―――長いから高育と略すことにするが―――の校門で停まったために運賃を払って降車する。広大な敷地面積を誇る監獄じみた学校を見上げると、覚悟を決めてクラス分けを確認しに行く。Aクラス、Bクラス、Cクラスと順番に見ていき、それらに名前がなかった時点でもはや俺のクラスは確定したが、一応最後まで探してみる。すると「