以前艦隊これくしょん×鋼鉄の咆哮のクロスオーバー小説を投稿していましたが、この度設定や世界観を一新して新しい小説を投稿する事にしました。
大和型四番艦……通称【第111号艦】
世界最大の戦艦である大和型戦艦の中でも最後に造られた戦艦。
主砲は世界最大級の46cm三連装砲、装甲も自身の主砲に耐えられるように造られたまさに鋼鉄の城とも言える存在。
しかし、時代は航空機となりかつての覇者である戦艦は時代遅れとなった。
その煽りを受け、大和型三番艦【信濃】は空母に改装され【第111号艦】も解体の憂き目にあった………
ある海軍将校の発案の元、航空機主兵論に抗うべく【第111号艦】を大和型戦艦を超え尚且つ航空機にも打ち勝てる超戦艦として徹底的に、そして秘密裏に建造を再開した。
主砲は大和型を凌ぐ51cm砲を搭載する予定であったが、戦局の都合で開発が間に合わず三番艦【信濃】が空母に改装された事で余った46cm45口径三連装砲を流用する形で搭載。
副砲も一番艦【大和】から撤去された物を流用した。
しかし、新しく開発された砲安定装置により砲弾着弾時の散布範囲が大幅に縮小しており、命中率は格段に向上している。
本艦の特徴は何といっても対空火器の充実度であり、秋月型に搭載されている長10センチ高角砲や新兵器の長12.7センチ高角砲を筆頭に多数の機銃(弾帯給弾式)や噴進砲を航空機に対抗できるように針鼠の様な配置で備え、全ての各高角砲座と対空機銃座、噴進砲座は新たに開発された射撃統制装置と連動している為、これにより濃密な弾幕を形成する事が可能である。
防御力に関しても大和型のそれを改良した上に、元々51cm砲を搭載するにあたって装甲も対51cm砲完全防御仕様になり、以前より問題視されていた舷側水線装甲の支持構造に改良が加えられている。
さらに装甲内部にゴムとウレタンスポンジ層を仕込み、被雷の衝撃を緩和して浸水を軽減する工夫がなされている。
電探等の電子装備も最新の物に更新済みの上、新型の受像機の導入により水上・航空目標を鮮明かつ正確に映し出す事ができる。
また電探射撃装置と主砲が連動する事で悪天候・夜間問わず高精度な射撃を可能とした。
これほどの武装と装甲を備えている為、全長279m・最大幅40m・基準排水量7万5000t・満載排水量8万2000t・速力30ktと、まさしく超大和型戦艦と呼ぶに相応しい戦艦であった。
ただ唯一問題があるとすれば、この戦艦の建造再開・魔改造の件は当時の日本政府は愚か、軍上層部にさえ無断で行っていた事だ。
無論、軍の資金を横領する形で建造費用を調達した為、バレたらタダでは済まない。
作業は細心の注意を払いながら行われた。
…何がともあれ、この戦艦は大戦末期には完成した。
建造再開を主導した海軍将校は完成された戦艦の出来に概ね満足し、艦名を【紀伊】と命名した。
そして戦艦大和を旗艦とする第一遊撃部隊の出撃から二日後の夜に紀伊も出撃する。
その際に紀伊に関する資料はすべて抹消された。
幸運な事にこの時沖縄周辺は低気圧に覆われており、特攻にはうってつけのタイミングであった。
出撃からしばらくして紀伊は敵潜水艦に発見された。
一方、坊ノ岬沖海戦にて大和以下計6隻を沈めた米海軍第58任務部隊は潜水艦からの報告を受けて迎撃の準備に入るが、先の海戦とは異なり海域は低気圧に覆われ航空機による攻撃は期待出来ない。
そこで第58任務部隊所属の戦艦6隻、大型巡洋艦2隻を先行させ正体不明の戦艦を迎え撃つ作戦に出た。
その頃、悪天候の中を進んでいた紀伊は電探にて米戦艦群を発見し、米軍側も紀伊を捕捉する。
かくして太平洋戦争最後の戦艦同士の砲撃戦の火蓋が切って落とされた………筈だった。
紀伊が敵艦隊を見据え砲撃戦に持ち込もうとした矢先、突如として計器類が狂い始め針が振り切れたり硝子面にヒビが入って割れたりした。
そして前方の空間から白い光が迸り、やがてその光は紀伊を飲み込む。
紀伊を包み込んだ光はしばらくすると収束し、飲み込んだ紀伊諸共消えていった。
この不可解な現象は米軍側も目撃していたが、あまりにも非現実的な現象に米軍の連中は目を疑った。
ただでさえ正体不明の戦艦の存在だけでも半信半疑だったのに、その戦艦が謎の光に包まれて消えた事に驚愕し混乱した。
そんな非現実的な事を馬鹿正直に報告する訳にもいかず、現場の指揮官と幕僚達は考えた末これらの事象を無かった事にした。
潜水艦の報告を誤報として片付け、箝口令を敷き事態の隠蔽に努めた。
また日本側もそもそも紀伊自体が軍に黙って建造し、尚且つ出撃の際に資料はすべて抹消した為軍の上層部が知る由もなく終戦を迎えた。
終戦によって最高機密であった大和型戦艦の存在が公にされた際も【第111号艦】は建造途中で解体された……と、紀伊の存在は闇に葬られた。
だが、一部の者…紀伊の建造に関わった海軍将校の一族と
紀伊が
ここは日本海軍の拠点の一つである呉鎮守府。
15箇所ある鎮守府の中でも指折りの実力を誇る鎮守府であり、練度も装備の質も高い。
そんな呉鎮守府近郊の砂浜に4人の少女がいた。
「お〜い、こっちこっち〜!」
「ちょっと阿賀野姉ぇ!気持ちは分かるけどはしゃぎすぎよ!」
「だってだって、やっと休暇の許可が下りたんだもん!落ち着いていられますかぁ!」
「はぁ〜もう、矢矧も何か言ってやってよ。」
久しぶりの休暇にはしゃいでいる黒髪ロングの少女…【阿賀野】を諌めている茶髪の三つ編みのおさげの少女…【能代改二】は溜息を吐きながら長い黒髪を白鉢巻でポニーテールにまとめた少女…【矢矧改二乙】と海鼠色のショートボブにアホ毛の少女…【酒匂】に助けを求めるが…
「う〜ん、久しぶりの休暇だから少しぐらい羽目を外してもいい気がするけど…」
「酒匂も同じかな〜。働き詰めだったし楽しもうよ〜。」
「えぇ〜…」
「ほらほら、能代も休暇を楽しまないと!こういうのは楽しんだもの勝ちだよ!」
「ちょ、ちょっと!分かったから引っ張んないでよ阿賀野姉ぇ!」
「あっ、待って阿賀野お姉ちゃん〜!」
「ふふ…」
そんな姉妹の様子を微笑ましい表情で見る矢矧。
一見すると女子高校生にしか見えないが、彼女達4人は旧海軍の阿賀野型軽巡洋艦の魂をその身に宿す存在……【
艦娘は主に第二次世界大戦時の艦船がモチーフになっている場合がほとんどで、軽巡洋艦だけでなく駆逐艦に重巡洋艦、潜水艦に空母、そして戦艦など様々な種類の艦娘が存在する。
彼女達は世界の海を支配する悪しき存在……【
「あら、今日は矢矧達が休暇の番かしら?」
「あ、大和。」
そんな時後ろから声を掛けられ振り返ると、そこには焦げ茶色の髪をポニーテールでまとめ、首元に艦首を模した金属輪を付け、右手に3本マストをアレンジした赤い和傘を持っている女性…【大和改二重】がいた。
大和と矢矧は第一遊撃部隊からの戦友であり、矢矧自身は艦娘になってから改めて守ると誓っている。
「大和も休暇かしら?」
「というか今日も…ね。今の鎮守府は資材不足だから……」
「ああ……」
大和の言葉を聞いて、ほぼ空になった資材保管庫の前で黄昏ている提督の姿を思い出す。
先の大規模作戦において呉鎮守府や他の鎮守府所属の艦娘の活躍もあり成功に終わったが、無論資材も大量に消費し備蓄分もほとんど無くなった。
今は軽巡や駆逐艦、潜水艦の艦娘総出で遠征を行っており、資材が回復するのは早くても2〜3ヶ月掛かると予想される。
「でも流石大和型ね。今回のMVP、
「ええ、今思い返してもギリギリの戦いだったわ。最終的に私達3人の同時攻撃が決定打となり、作戦成功に繋がった……」
この呉鎮守府には最高戦力たる大和型が3人いる。
1人目は度重なる改装で【試製51cm三連装砲】と水上爆撃機【瑞雲】を搭載した航空戦艦になった【大和改二重】、2人目は【51cm連装砲】を搭載し【砲架型長10cm砲】を煙突周辺に配置するなど対空防御を意識した【武蔵改二】、3人目は改装により大和型譲りの装甲に加え飛行甲板にも装甲と耐熱性を付与したお陰で噴式機【橘花改】と【噴式景雲改】を搭載出来るようになった装甲空母【信濃改二甲】である。
大和型戦艦は旧海軍の切り札として開発されたものの、時代が航空機に移り変わった事などが影響し、大した活躍が出来ず沈んだが艦娘として生まれ変わった時は第一線の戦力として活躍し続け、度重なる改装によって更なる力をつけ深海棲艦の鬼級姫級に対抗できるようになった。
大和型三姉妹は今日に至るまで深海棲艦相手の戦いに身を投じていた。
「ッ!」
「大和!」
そんな中、突如として大和が頭を抱えて座り込む。
慌てて駆け寄った矢矧は彼女を介抱しようとするが、それを大和は片手を上げて留めた。
「この感じ……武蔵?信濃?いえ、でもこの感覚は少し違う…まさか……!」
「大和、大丈夫なの?」
「何々〜?どうしたの〜?」
「わわ、大和さん大丈夫?」
「矢矧、一体どうしたの?」
「あ、丁度いい所に、実は……」
遠くまで走っていった姉妹達が2人の所に戻ってきたのに気づいた矢矧は状況を説明しようとするも、不意に大和が立ち上がり何かに導かれるように歩き出す。
「大和!何処へ行くの⁉︎」
「…呼んでいるの。」
要領を得ない返事に矢矧は困惑するが、大和の目は一点を見つめ眼光は戦闘時のそれに酷似した色を帯びていた。
「……分かったわ、私も付いていく。姉さん達は提督に今の状況を説明して!」
「えっ、あ、うん!分かった!行くよ、能代!」
「えっ、ええ!」
「ぴゃ〜なんだか大変な事になりそう!」
矢矧の意見を了承しながら姉妹達は走っていき、それを確認した矢矧は大和の傍に付き従いながら大和が歩を進めるがままに歩いていく。
大和と矢矧は砂浜に沿って歩く。
「大和、この先にあるの?」
「ええ、私達と同類の存在を感じ取れる気配というか、存在を感じるの。…でも大きさで言えば私達大和型並み……いや、それ以上ね。」
「…まさか、こんな所に深海棲艦の鬼級か姫級が⁉︎」
想定される最悪の事態に矢矧が青ざめさせて大和に聞くと、彼女は顔を静かに横に振って否定する。
「いえ、深海棲艦特有の負の感情は無い。それにこの気配は、あの時呉軍港にて感じた気配に似ている。」
大和は語る。
彼女がまだ艦だった頃、戦局悪化や燃料不足などて呉軍港に待機続きだった当時、彼女は呉の範囲にて自分と同じ存在を感じた。
それはまだ未完成だったものの、完成すれば大和と同じ…いや大和を超える超戦艦になる逸材だった。
またその超戦艦の方も大和の存在を感知しており、2人は大和が3月28日に呉軍港を出港するまで互いの存在を認知していた。
「…その時感じた気配と似ているの。」
「当時の呉に大和と同じ存在がいたの?でも…」
「そう、その時には武蔵も信濃も沈んでいる。…私もありえないと思うけど思い当たるとすれば、一隻しか……あっ!」
そんなやりとりをしている最中、前方の砂浜に黒い物体を発見する。
一瞬岩かと思ったものの、それは鋼鉄の装甲に一際大きい三連装砲五基を筆頭に様々な兵装を搭載した艦娘だけが装備出来る着脱式兵装……【艤装】である。
「これって、艤装?なんでこんな所に…?」
「…待って!艤装の下に誰かいる!」
大和が指差す方に目を向けると、巨大な艤装の下に誰か倒れている。
否、艤装に押し潰されていると言った方が正しい。
「大変!早く退けないと!」
「君、大丈夫⁉︎」
大和と矢矧が艤装を持ち上げようとするが、その艤装は大和型と比べて一回り大きく、何よりも重い。
矢矧は勿論のこと、普段重い艤装を装備している大和ですら持ち上げる事が出来ない。
「大和でも持ち上げる事が出来ないなんて…!」
「なんて重さなの、このままじゃ…!」
「大和、矢矧!待たせたわね!」
何とかしようと手をこまねいていると、後ろから声を掛けられる。
振り返ると姉妹艦である武蔵や長門達戦艦組、同じ姉妹艦である信濃や赤城、加賀などの正規空母組、そして彼女達を指揮する呉鎮守府提督の【
阿賀野達が提督に伝え、提督が万が一を考え戦艦組・正規空母組を召集したのだ。
「提督、丁度いい所に!実は…」
大和は今までの経緯を提督に説明する。
提督は大和の話を聞いたのち、指示を出した。
「分かったわ。武蔵、信濃。あの子を大和が引っ張り出せるように艤装を持ち上げて!」
「ああ、任せろ!いくぞ、信濃!」
「ええ、武蔵姉さん!せーの…!」
こうして武蔵と信濃が協力して艤装を持ち上げようとするも、まだ重く僅かしか動かせない。
そこで連れてきた戦艦組と正規空母組総出で艤装を持ち上げ、その間に大和が下敷きになった艦娘を救出した。
「…まさか、この私がへばるとは!」
「はぁ…はぁ…一体何tあるのよ…!」
救出を終えると武蔵は砂浜に大の字で倒れ込み、信濃は座り込む。
他の戦艦や正規空母も同様の疲労振りであったので、あの艤装がどれ程の重さだったのかが一目瞭然である。
そんな彼女達を横目に大和は救出した艦娘を見る。
その艦娘は駆逐艦並みの背丈で、あれだけ大きな艤装を背負うには心許ない感じだ。
頭部に測距儀の付いた海軍帽を被り、首元には艦首を模した金属輪を付け、赤と白のカラーリングで彩られたセーラー服に黒の短パンを身に付けている。
容姿は黒髪のショートヘアに茶色の瞳と比較的端麗である。
「うぅ…」
そんな中、助け出した艦娘が目を覚ます。
その艦娘は目を開け、大和を見ると一言呟く。
「大和…お姉ちゃん……?」
まるで懐かしいものを見るような目で大和を見る。
大和の方もあの時呉軍港で感じた気配と一致しており、この艦娘が呉軍港にいた大和と同じ存在であると確信した。
(…あれ?この子……)
ふと、大和は違和感を覚えた。
抱き上げている艦娘…つまり女の子の筈だが、発した声色といい、容姿といい、雰囲気といい【女の子】というよりも【男の子】という方がしっくりくる。
大和が内心ありえないと思うと、突然その艦娘が苦しそうな呻き声を上げる。
「う、うぅ…!」
「ッ!君、どうしたの⁉︎大丈夫ッ⁉︎」
大和が呼び掛ける中、返ってきたのは………
グゥウウウウウウウウウウウウウッッ‼︎
あまりにも盛大過ぎる、腹の音であった。
「…お腹、空いた……」
そう、空腹で倒れていただけであった。
あまりのオチに周りの艦娘達はズッコケる。
「…まぁとにかく、提督。この子を医務室に、艤装は工廠に運ぶ許可を。」
「え、ええ、分かったわ。貴女が思うにこの子は敵では無いのね?」
「はい、この子は敵ではありません。この大和が断言します。」
大和の言葉を聞いた提督は頷き、同時に戦艦組と正規空母組に指示を出し始める。
戦艦【紀伊】が鎮守府に着任しました。
次回、漂着した艦娘の正体が明らかになる。
乞うご期待ください。