不沈艦息紀伊の咆哮   作:あーくこさいん

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呉鎮守府付近にて漂着した謎の艦娘。
警戒の為集まっていた艦娘達は大和の説得もあって警戒しながらも艤装は工廠へ、件の艦娘は空腹で倒れていた為ある場所に連れて行かれた。


第一話 謎の艦息(かんむす)【紀伊】

ここは呉鎮守府。

深海棲艦の魔の手から人々を守り、海を解放する為に戦う15ヶ所の鎮守府の中でも横須賀鎮守府に次ぐ規模を誇る日本海軍(旧海上自衛隊)の一大拠点である。

無論鎮守府内にある各施設も充実しており多数の艦娘が居住している【艦娘寮】、戦闘で傷付いたり疲労した艦娘を癒す総合保養施設【入渠施設】、艦娘の建造や艤装を製造している【工廠】など様々な施設がある。

 

その中でも艦娘達に人気なのが給糧艦【間宮】と【伊良湖】が経営している【食堂】がある。

給糧艦【間宮】と【伊良湖】が営む食堂において提供される料理はまさに絶品の一言であり、戦艦や正規空母などの大食艦やデザート目当ての駆逐艦達など鎮守府の中でも一番人気なのも過言では無い。

 

今日も食堂には様々な艦娘達が訪れ、食事を楽しんでいた。

そんな艦娘達の中に1人の艦娘が海軍カレーを一心不乱に食べていた。

その艦娘は黒髪のショートヘアに測距儀の付いた海軍帽を被り、茶色の瞳が似合う程比較的容姿端麗である。

服装も菊の紋章が付いた艦首を模した金属輪を首元に付け、赤と白のカラーリングで彩られたセーラー服に黒の短パンとボーイッシュな見た目である。

 

その艦娘こそ呉鎮守府付近にて漂着した謎の艦娘であり、大和以上の艤装を持つ割には背丈は駆逐艦並みが特徴である。

彼女?は空腹で倒れており、鎮守府に連行した後腹を満たす為に食堂に連れていった。

彼女?に何を食べるか聞いた時、丁度金曜日だった為海軍カレーを頼んだ。

彼女?は海軍カレーの美味しさと初めて肉体を得て食べたかった物を食べれる事に感動し、一心不乱に食べ進めていた。

 

「んぐ…はぐぅ……!美味しい…!艦の頃から食べたかった海軍カレー、こんなに美味しかったとは……!ビバ、受肉…!」

 

「すごい食べっぷりですね…」

 

「余程人の姿になって食事出来るのが嬉しかったようですね…」

 

謎の艦娘の近くに座っているのは巫女服のような白い着物に袴を改造したフリル付きミニスカート、頭部に艦橋と電探を模した金色のカチューシャを付けた4人の艦娘…金剛型の【金剛改二丙】【比叡改二丙】【榛名改二丙】【霧島改二丙】である。

彼女達4姉妹が謎の艦娘の付き添いとして一緒に食堂に来ていた。

余談だが彼女?がカレーを食べる事を決めた際に比叡がカレーを振る舞うと意気込んでいたが、残りの3人に必死に止められた。

 

そんな中彼女?がカレーを食べ終えて満足げな表情になったタイミングで金剛が口を開く。

 

「そういえばYouのお名前は?」

 

「あ、自己紹介がまだだったね。初めまして、僕の名は【紀伊】。艦級は()()()()()()だよ。」

 

「私は金剛型戦艦のネームシップの金剛デース!Hum、Kii……聞かない名前デスね?霧島はドウ?」

 

「私も聞いた事は……え、大和型四番艦?確か建造中止になった筈では?」

 

「というか……本当に戦艦なんですね!」

 

「あっでも…頭に被ってる海軍帽、大和型の測距儀ですよね……?」

 

紀伊という艦名に首を傾げ、彼女?の口から語られた大和型四番艦という艦級に疑問が浮かぶ。

そして何より彼女?が戦艦である事が判明し、背丈から駆逐艦と思っていた周囲の艦娘達は驚愕しヒソヒソと話し始めた。

 

「えっ⁉︎あの子、戦艦なの……⁉︎」

 

「背丈からして私達と同じ駆逐艦じゃないの…⁉︎」

 

「というかあの子、見ない子ね。ドロップ艦かしら…?」

 

「そういえば近くの海岸に漂着したって聞いたけど…」

 

周囲のどよめきが大きくなり、謎の艦娘は一気に注目の的になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、呉鎮守府工廠には漂着した艦娘の艤装が運ばれていた。

戦艦・正規空母総出で運ぶ程重く、工廠自慢のクレーンが悲鳴を上げるレベルである。

艤装をここまで運んだ戦艦・正規空母組はスポーツ飲料をがぶ飲みして渇きを癒す。

 

「ふぅ…こんな重い艤装運んだの初めてよ。クレーンが折れるかと思ったわ。」

 

工廠の主である工作艦【明石】はそう呟きつつ、目の前に鎮座している艤装を見る。

その艤装は煙突が付いた中央部に左右の艤装には大口径の三連装砲と変わった砲身の30cm連装砲がそれぞれ4基ずつ搭載され、後部には大口径三連装砲1基に多数のコンテナ、【H】と描かれた甲板が備わっている。

また艤装の各所には四角く角張った発射台(ランチャー)と変わった砲身の連装機銃、そして円柱状の物体が針鼠の如く複数搭載されている。

 

「すっごい…!この艤装、調べがいがありますね!」

 

「その通りよ!技術者としての心が躍るわ!」

 

「ほら、少し落ち着きなさい。因みにだけど、この艤装を軽く見て2人がどう思うか簡単でいいから教えてくれない?」

 

見た事が無い兵装のオンパレードに明石と工廠仲間の軽巡【夕張】は技術者としての血が騒いだ。

そんな2人を軽巡【大淀】が一旦落ち着かせると、明石と夕張は早速調査に取り掛かる。

5分程艤装を見渡し、2人は感想を述べた。

 

「ます兵装の方は三連装砲が5基、副砲として30cm連装砲が4基とかなりの重武装だね。しかも三連装砲は砲身が長いし、何より多数の対空火器を針鼠のように配置している事から防空能力も尋常じゃない程備わってるね。」

 

「あと、対空火器について興味深い事に四角く角張った発射台は近接対空ミサイル【RAM】、円柱状の物体は近接防空火器【CIWS】、そして四角い蓋が沢山付いたコンテナは垂直発射装置【VLS】、つまり護衛艦に搭載されていた現代火器を艦娘サイズまで小型化している。こういう現代火器を艦娘に搭載する試みはあったけどどの国も失敗して頓挫した筈……」

 

「うむ、つまり何かしらの実験で現代火器を搭載する事に成功した艦娘という事か?」

 

「そうかしらね…」

 

明石と夕張の説明に戦艦【長門改二】と【陸奥改二】が憶測を述べる中、大和が何かに気付く。

 

「…この三連装砲、見た所私と武蔵が扱う51cm砲より大きくないですか?」

 

「む?そういえばそうだな…」

 

大和の問いに武蔵が同意し、明石が資料を見て確認する。

 

「確かに、うちが扱っている最大の砲は【51cm三連装砲】だけど、どう見てもそれ以上に大きいわね……」

 

「ちょっと待って下さい。今計算しますから……」

 

そう言うと大淀は電卓をカタカタ打ち込み、計算結果を出す。

その結果に愕然とすると、恐る恐る口にする。

 

「計算によると…恐らく、60cmクラスの砲かと……」

 

この言葉に皆唖然する。

それもその筈、世界最大の戦艦である大和型が46cm、計画段階で終わった超大和型ですら51cmが限度であった。

例外としてドイツの列車砲が最大80cmクラスだが、艦砲で60cmクラスなど何処の国にも計画すら存在しない。

 

「この60cm砲ですが、見る限り従来の45口径ではなく75口径とかなりの長砲身です。」

 

最早驚きを通り越して混乱の領域である。

口径…つまり砲身が長ければ長い程、主砲の射程・貫徹力が向上する。

事実アイオワ級戦艦の主砲は16inch(40.6cm)砲だが、口径は50口径と長砲身故、射程・威力共に前級のサウスダコタ級を上回っている。

 

「つまり、あの艦娘はこれだけの火力が必要だから、あんな規格外の主砲を装備しているという事か……」

 

「…いや、どう考えても鬼級や姫級相手じゃオーバースペックでしょ。」

 

武蔵の推測に信濃がツッコむ。

謎の艦娘が持つ『61cm75口径三連装砲』は規格外級の大口径かつ長砲身砲であるが為、火力・射程・貫徹力共に【大和改二重】や【武蔵改二】を軽く凌駕するといえる。

それは深海棲艦の上位個体である鬼級・姫級すら相手にならないと推測するには十分過ぎる程、常識を超えた代物であった。

 

「…一体、()は何と戦っていたのでしょう……」

 

異様な沈黙が満ちた工廠内に大和の呟きが響いたその時、食事を終えた件の艦娘と金剛型4人がやって来た。

 

「Hey!New Face 連れて来マシタ!」

 

「あっ、大和お姉ちゃん!」

 

その艦娘は大和を見つけると一目散に駆け出し、彼女に抱き付いた。

大和はそれに驚きつつも、あの時呉にて感じた気配と同じ艦娘だと確信する。

 

「やっぱり…貴方だったのね。あの時呉にて建造中だったのは……」

 

「うん、そうだよ!大和お姉ちゃん!」

 

「な、なんだ?」

 

「この子、大和姉さんの事を知ってるの?」

 

大和と謎の艦娘の関係に姉妹艦の武蔵と信濃を始め周囲の艦娘達が困惑する中、謎の艦娘は自己紹介をする。

 

「改めて紹介するね。僕の名前は紀伊…大和型四番艦【紀伊】、よろしくね。」

 

謎の艦娘…【紀伊】はそう自己紹介する。

紀伊という艦名に周囲の艦娘達は首を傾げる中、明かされた艦級に武蔵・信濃は驚愕する。

 

「な…⁉︎大和型四番艦…だと⁉︎」

 

「という事は、私達の妹って事⁉︎」

 

武蔵・信濃の言葉に周囲の艦娘達が驚愕する。

もし彼女?の言ってる事が本当なら解体された筈の大和型四番艦が実際には建造されているという事に他ならない上に、仮にそうだとしても艤装は大和型のを遥かに凌ぐ性能を秘めている。

そんな中、ある人物が工廠内に入ってくる。

 

「なるほど、貴方が大和型四番艦【紀伊】ね。」

 

声のする方を向くと、将校の服を身に纏う長い黒髪の女性が秘書艦【瑞鳳】と共にやって来た。

彼女は呉鎮守府提督【君塚仁美(きみづかひとみ)】少将。

20代と若手ながら呉鎮守府を束ねる凄腕の提督であり、日本最大の巨大複合企業(コングロマリット)である【君塚グループ】の令嬢でもある。

 

「えっと、貴女は…?」

 

「初めまして、紀伊くん。私は君塚仁美、この呉鎮守府を纏めている提督よ。」

 

「君塚……もしかして君塚艦長の孫娘さん⁉︎」

 

「ええ、そうよ。紀伊の艦長を務めた私の祖父から話は聞いているわ。じきに貴方が現れるだろうって。」

 

「えっと…提督?」

 

「すまん、何が何だか分からないのだが…」

 

「説明してくれる?」

 

まるで紀伊の事を知っている提督に大和・武蔵・信濃は疑問を抱き、提督に対し説明を求めた。

 

「…そうね、特に同型艦でもある貴女達に彼の事を知ってもらう必要があるわ。」

 

「……ん?彼?」

 

「彼女では無いの…?」

 

「ん〜、漂着した時から感じたけど、【女の子】というよりどっちかというと【男の子】という方がしっくりこない?」

 

「確かに…私も違和感を感じました。」

 

提督の指摘に大和が同意すると、一同は驚愕する。

艦娘とは読んで字の如く『艦』の『娘』、つまり『軍艦の魂を持った少女』なのだ。

にも関わらずこの紀伊という艦娘は『男の子』……つまり『艦息』といった方が正しいか、まさしく例外といえる存在である。

 

一方で紀伊は今まで自分の性別を認識してなかったのか、少し驚くと自身の身体を隅々まで見て最終的にズボンの中を除く。

そして納得したように述べた。

 

「…あっ!ちゃんとおち◯ち◯付いてるし、男だ!」

 

紀伊の発言に周囲の艦娘達は吹き出し、ズッコケた。

 

「ちょ、ちょっと紀伊!確認するとしてもそこはもう少しオブラートに謹んで!」

 

「…なぁ信濃、改めて見ると雰囲気からして男という認識は正しいと思う。」

 

「同感よ、武蔵。まさか弟を持つなんて思ってもみなかったわ…」

 

そんなやり取りの中、提督はコホンと咳払いをして話し始める。

 

「…さて、紀伊についてだったわね。結論から言えばこの子は正真正銘、私の祖父で旧海軍の将校だった【君塚章成(きみづかあきなり)】によって秘密裏に建造再開させ大戦末期に完成した大和型四番艦にして大和型を超えるべく魔改造された超大和型戦艦……それが【紀伊】よ。」

 

「そんな戦艦があったのか…!」

 

「でも、そんな話聞いた事無いわね。」

 

「それもそうよ。何せ紀伊を日本の存亡に関わる切り札だと判断した祖父の独断によって極秘裏に建造が再開されたのだから。」

 

提督が明かした衝撃の真実に周りは驚愕する。

大和型四番艦が密かに完成された事もそうだが、個人の独断によって建造が再開されたなど夢にも思わなかったからだ。

 

「独断って……当時の政府や軍の上層部には?」

 

「無論許可は取ってない。建造費用は戦費から横領する形で調達したし、人員も大陸から徴用したわ。もちろんこの事が露見したらタダでは済まないから、作業は細心の注意を払いながら行われた。こうして紆余曲折ありつつも大戦末期に完成し、祖父によって艦名は【紀伊】と名付けられた。そして大和を旗艦とする第一遊撃部隊の出撃から2日後の夜、紀伊も密かに出撃したわ。」

 

「あの日の…2日後⁉︎」

 

「そう。その際に紀伊に関する資料や建造の痕跡は抹消され、戦後も大和型四番艦は建造途中で解体された……と、紀伊の存在は闇に葬られた。」

 

「…だが、出撃したのなら敵に見つかってる筈だろう?何故それらの情報が皆無なんだ?」

 

武蔵の疑問に提督は少し言い淀み、話す。

 

「…それが分からないの。私も調べたのだけど、当時の米軍でもそのような情報が不自然な程に無かったの。まるで隠蔽しているかのように。祖父に聞いても詳しくは話してくれず、詳しい事はいずれ現れる紀伊本人に聞けと言われた。ただ、死の間際にこんな事を言ってたわ。」

 

「こんな事?」

 

「……『紀伊は数多の()()()と戦い、最後は強大になり過ぎた自艦が新たな超兵器として悪用される事を防ぐ為に自沈した誇り高き戦艦だ。』とね。」

 

提督の言葉に皆『?』を浮かべる。

そもそも紀伊の存在を知らなかった上に、大戦末期にそんな戦いの記録など無いのだ。

そして【超兵器】という聞き慣れない単語に艦娘達は益々困惑する。

 

「数多の超兵器と戦い、自沈した…?」

 

「というか超兵器とはなんだ?」

 

「紀伊、どういう事?」

 

大和・武蔵・信濃からの質問に紀伊は意を決して当時起こった事を話した。

 

「第一遊撃部隊の出撃から2日後の夜に出撃した僕は幸運にも沖縄周辺が低気圧に覆われていた事もあり、敵と接敵すること無く進み続けた。そのまま進んでいると電探に複数の艦影をキャッチし、それが戦艦を主力とした打撃部隊だと判断した。戦闘配置を整え砲撃戦に入ろうとしたその時……」

 

紀伊は語る。

突如として計器類が狂い始め、針が振り切れたり硝子面にヒビが入って割れてしまった事…

そして前方に白い光が迸り、その光が紀伊を包み込んだ事…

しばらくして光は収まり、気付けば未知の海域に来てしまった事…

 

彼の口から語られる突拍子も無い現象に皆唖然となる。

 

「そんな馬鹿な…!」

 

「SF小説じゃあるまいし、ありえないわよ!」

 

「信じられない気持ちは分かるけど、実際に体験した事だよ。光が収まると僕の前方に多数の艦影……それもさっきのとは数も段違いに多い艦隊を電探にて捉えた。双眼鏡で確認するとそこには多数の駆逐艦と巡洋艦がいた。艦形はドイツ海軍の艦船に酷似していたんだ。」

 

「ドイツ海軍の艦船…?でも確か……」

 

「そう、僕が出撃した時にはドイツ海軍は既にボロボロであんな数の艦船が残ってる筈が無いんだ。おかしいと思いつつも前方の艦隊に所属を明かして交信を試みたんだけど、返ってきたのは……砲撃だった。」

 

周囲の艦娘達は絶句する。

謎の現象によって訳も分からず未知の海域に来たばかりか、謎の大艦隊に接敵し交信するも砲撃されるという不幸の連続に彼女達は言葉を失った。

 

「突然の砲撃に戸惑っていた艦長達だったけど、ただでやられる訳にもいかず素早く反撃に移った。当時の僕は大和型譲りの装甲と砲安定装置などの新技術を駆使して更に接近する前に数を撃ち減らしたんだ。ある程度敵を撃ち減らして海域から離脱を図ろうと動いたその時、戦艦3隻を含む敵増援部隊が現れた。その戦艦はシャルンホルスト級並の大きさの割には三連装砲2基6門と武装が少なかったからそこまで苦戦する事は無いと考えたけど……その3隻の戦艦によって僕は窮地に立たされたんだ。」

 

「何故?」

 

「その戦艦は一気に増速し、最終的に60ktの速度で僕の退路を塞いだの。」

 

彼の言葉に皆驚愕する。

日本海軍最速である駆逐艦【島風】ですら最大40ktなのに、戦艦で60ktとは常識外れもいいとこである。

 

「戦艦ながら島風より速いだと…⁉︎」

 

「計測違いでは無いの?」

 

「当初はそう思ってたけど、何度計測しても間違いはなかった。しかも主砲の威力も無視出来なかった。砲の大きさは28cmと比較的小さいけど、砲身が長いのか僕の装甲にヒビが入る程貫徹力が高かった。このままではジリ貧になる……その時対空電探に多数の機影をキャッチした。突如として空から現れて機体が殺到する現状に艦長達は覚悟を決めた。対空火器を起動し迎撃の準備をした………けど、それは杞憂に終わった。」

 

「え?」

 

「どういう事だ?」

 

「殺到した機体群は僕を素通りして敵増援部隊に攻撃を仕掛けたの。敵増援部隊は空からの攻撃に気を取られてこっちの追撃どころでは無かった。訳がわからず困惑していると、別の方向から謎の艦隊が砲撃しながら突撃してきた。」

 

「謎の艦隊?」

 

「うん。敵艦隊がドイツ海軍の艦船で統一されているのに対し、現れた艦隊はイギリス海軍やアメリカ海軍の駆逐艦に日本海軍(ウチ)の最上型に酷似した巡洋艦、ドイツ海軍のグラーフ・ツェッペリン級より一回り大きい空母など色々な国籍の艦船が所属していたんだ。」

 

「…随分と多国籍な艦隊だな。」

 

「中でも目を引かれたのは艦隊の旗艦を勤めていた戦艦で、船体や4基の主砲の形状からアメリカ海軍の戦艦なのは間違いないけど、艦中央に飛行甲板を持ち艦橋の形も位置も空母のような艦なんだ。なんというか、戦艦も空母を足して2で割った戦艦だなぁ…って。」

 

「それって改装航空戦艦って事?」

 

「確かに【伊勢改二】と【日向改二】の例があるが、アメリカで航空戦艦は聞いた事が無い。」

 

「とにかく航空隊が敵艦隊を引きつけている間に艦隊から通信が入った。内容は…『突破スル。我ニ続ケ』。何が何だか分からないけど、この艦隊について行く他にない。僕は謎の艦隊と共に敵艦隊の追撃を振り切り、海域から離脱した。そのまま随伴していると艦隊旗艦から再度通信が入った。」

 

ーーー『コチラ【解放軍】第七戦略機動艦隊旗艦【キアサージ】。貴艦ノ所属ヲ答エヨ』ーーー

 

「解放軍…?」

 

「キアサージという艦も聞いた事が無いな。」

 

「艦長達も聞いた事のない軍隊に首を傾げながらも自らの所属を明かしたんだ。しばらくした後、『話ハドックニテ話ソウ。ソコマデ案内スル』という通信が返ってきた。艦長達は不安に思いつつも随伴し、地下ドックまで案内されたんだ。」

 

「地下ドック?」

 

「うん。岩盤をくり抜いて造られた感じで、複数の艦を収容出来るドックに大規模な物資集積所があるなど結構大規模な施設だった。こうして地下ドックに収容された僕はそのドックで修理を受けた。艦長達は解放軍首脳との接触を図り、解放軍司令【アルベルト・ガルトナー】元帥と面会した。そして彼の口から語られたのは艦長達にとって想像を絶するものだった。」

 

紀伊は一声おいて語る。

紀伊自身が迷い込んだ異次元世界(パラレルワールド)の事を…

そして異次元世界(パラレルワールド)を支配する軍事国家【地球帝国(ガイア・エンパイア)】とそれに抗う軍事組織【解放軍】との戦いを…




次回、異次元世界(パラレルワールド)を支配する【地球帝国(ガイア・エンパイア)】とそれに抗う【解放軍】の歴史が語られる。

乞うご期待ください。
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