「網倉、お前まで…」
そう言って頭を抱えながらも静かになって座った神崎くんが面白くて口を少し三日月状に歪めながら私は改めてマイクを構え、歌い出す。
「〜〜〜〜♪〜〜♪」
私が歌い始めると今まで誰が歌っても少しはあった喧騒がピタッと止み、みんなが私の歌声に聞き入っているのが分かった。
(そこまで、静かに聴き入らないでよ……恥ずかしい…まぁいいや、今は思いっきり歌お!!)
「あなたの、隣で〜」
そうやってラストを自分でも上出来と思える出来栄えで締めた私はマイクを持つ手の力を緩め、周りを見渡そうとしたそのとき、部屋のあちこちから拍手が舞い上がり、まさに万雷の拍手といえる量の数となっていた。
「ちょ、みんな大げさすぎ!恥ずかしいって!//」
私が照れながらも絞り出した声は、拍手の波に呑み込まれ、止む気配はまったくなかった。
それどころかさらにボリュームアップした拍手。もはや止められるものじゃないと悟った私は――
「ちょ、ちょっともう疲れちゃった!ごめん帰るね!」
そう言って荷物を超速でひったくり、部屋から逃げ出すことにした。
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(あーもう恥ずかしすぎて逃げ出してきちゃったよ……)
部屋のあまりの熱狂に恥ずかしすぎて爆発しそうになってしまい逃げ出した私は1人寮までの道を歩く。
(絶対顔真っ赤じゃん…もー最悪、明日なんて言われるかなぁ)
さっきまでの自身の行いを振り返って反省しながら歩き続けるとガンガンとなにかがぶつかる音が聞こえてきた。
(ん?なんの音だろ)
普段ならありえない異質な音を聞きつけ私はその音のする方向へ足を向ける。
「――野郎、邪魔なんだ―――」
(この声って…)
微かに聞こえてきた声で誰かが分かった私はまさかという気持ちでさらに近づいて行く。
「まじ消えればいいのに!あの!クソ女!」
音を追いかけた先でフェンスをガンガンと蹴りつけ暴言を吐いていたのはいつもの顔とは似ても似つかない雰囲気を醸し出したDクラスの櫛田桔梗だった。
(やっぱり櫛田さんだった…でもどうして?)
物陰に隠れながら彼女のどす黒い部分が漏れ出てる瞬間を観察し続ける私。
「アイツが!!アイツさえいなければ私は!なんの心配もなく過ごせるのに!!」
「アイツもお高く止まってんじゃねぇよ!結局自力じゃ誰ひとり救えなかったくせに!!一人がいいんじゃなくてただのぼっちだろうが!!消えろ!消えろ堀北!!」
(なかなかひどい荒れよう…コレが優等生な彼女がDクラス配属になった理由……)
「あの赤ゴリラもだ!あいつが早坂なんてやつの名前をださなければ私の地位は更に盤石になったってのに!!」
(!…私の名前…!)
「ムカつくんだよあの金髪野郎!常に自分が優位なところからしか話してこないゴミが!どうせ誰にだって股開くビッチのくせに!!」
(……)
本人に聞かれているとはつゆ知らず私に対する暴言をも含んだ罵詈雑言は収まるところを知らず矢継ぎ早に発せられていく。
(ふぅん、もう十分か)
私は手に持っていたスマホの録音を止め、彼女にバレないようにその場を立ち去る。
(その思慮の甘さをいつか後悔するといいよ)
静かに怒りを燃やしながら離れていく私を光のない目で見つめていた人がいるとはまだ私も知らなかった。
Bクラスの手札
月5万×40人分のプライベートポイント
Dクラスとの同盟
Dクラスへの命令権(1回)
櫛田の裏の顔の録音(早坂のみ)←new!