“アンダーウッド”主賓室・大樹の水門
レティシアは程よい喧騒と賑わいの音で目を覚ました。
あれからどれくらい眠っていたのだろう。窓から射し込む太陽の光がこの上なく心地いい。
ふとそこでベットの隣に誰かが腰かけているのに気づいた。
それはカズ―――
「ん?······ああ、レティシアちゃん起きたんだ。もうちょっと遅かったらタイミングバッチリだったのにな~。ゴメンね、僕で」
コーキは、あはははと笑いながら読んでいたライトノベルを閉じた。
私の思っていたことは筒抜けだったらしい。
「謝らないでくれ。もしかして、ずっと起きるのを待ってくれてたのか?」
彼はまだこんなに若いのに立派な医者だ。その可能性は十分にある。
「ずっとじゃないよ。交代制でみんなで待ってたんだよ。ちなみに体に異常はないよ。ただ二日ぐらい寝ていただけ」
「そうか。それは後で皆に礼を言わないといけないな。それにしても二日も寝ていたのか」
「二日も、じゃなくてたった二日だよ。レティシアちゃんはずっと働いていた上に今回のような騒動があったんだからもっと休むべきなんだよ。そうしないと、体壊しちゃうぞ!」
そんな風に軽い説教のような医者のありがたい言葉を聞いていると、コンコンとドアがノックされた。
「おっ、来たみたいだね」
コーキがニヤリと笑う。ドアを開け顔を出したのは両目の赤いカズマだった。
「そろそろ交代の時間、ってレティシア起きたんだ」
「うん。ついさっきねー。それじゃあ、カズマ来たし僕は黒ウサギちゃん達にでも知らせに行ってくるよ」
「それなら俺が――」
「いやいや~、カズマは僕が皆呼んで来るまでレティシアちゃんの話し相手でもしてて。色々聞きたいことがあるらしいし」
それを聞いてカズマは目線で「本当か?」と確認を取ってきたので私は笑みを隠しきれずにちょっと笑いながら頷いた。
流石はコーキ。気を利かせて二人きりの時間を自然に作ってくれた。
このチャンスを生かさなければ。
「そんじゃ、ごゆっくり♪」
そう言い残して彼は部屋を出ていった。
それと入れ替わるようにベットの隣にカズマは座った。
「体調の方はどう?見た感じ問題なさそうだけど」
「ああ、特に異常という異常もないな。でも、さっきコーキにはもう少し休んでろって言われてしまったよ」
「あんなこともあったし、休息をとるにも丁度良いからだろ。しかも、ここは環境が良い」
「そうだな。確かにここは緑に囲まれていたりしていて療養には持ってこいの場所だな。外が賑やかなのは復興作業か?」
「うん。それもあるが収穫祭が一からやり直されらしい。それの準備もあるからだと思うよ」
それはすごいことだし喜ばしいことでもあった。
きっと、私のせいで無茶苦茶にしてしまったからもう中止されるものだと思っていたが···。
“アンダーウッド”は力強いのだな。ちょっと安心した。
「なぁ、カズマ」
「ん?」
「私が玉座に繋がれている間に何があったか話くれないか?」
「あー、えーっと。それって中の奴から聞いてないのか?コーキがレティシアには説明してたっぽいって言ってたけど···」
「確かに白カズマからお前どんなことがあって何をしていたか簡単には聞いた」
「なら――」
「いや、それは白カズマの視点からの説明だ。私はそんな難問も突破してきたカズマ自身から聞きたい。ダメか?」
ちょっと上目遣いで攻めてみる。
カズマはしばし悩んだ後、しぶしぶと言った風に語ってくれた。
「―――人形か。確かにそう言った方が腑に落ちるが、それはちょっと自虐的だと思うぞ」
「そう思うかもしれないが、実際に俺を人間と定義するのはどうかと思う。人形と言えばやっぱりしっくりくるし、俺はこれはこれで気に入っているから俺は人形で良いんだと思う」
「でも!それでも、カズマは人間だ!····少なくとも私はそう認識するしそう思う。これは絶対だ」
そうカズマは人間だ。ここ来る前の別れた時のカズマも人間だが、今のカズマはより一層人間ぽくなっている。
雰囲気に口調、表情なんかは前の淡々としていたのから今はその全てが柔らかくなり生きている。
現に今も嬉しさ半分、呆れが半分といった表情をしている。
カズマは変わった。今目の前にいるのは無機質な人形ではなく、どこにでもいる少年だ。
「ありがと、レティシア。そう言ってくれて嬉しいよ」
「――――――っ!!!」
私はこの時のことを生涯忘れることはないだろう。
なんて優しくて柔らかい笑顔。胸の中に愛おしいと気持ちが溢れて止まらない。
「――――カズマ」
今、改めて私はカズマに惚れた。この人を好きになって良かった。
「私、レティシア=ドラクレアはカズマ・N・エノモト―――あなたのことが大好きです」
不思議なものだ。きっと想いを告げるときはもっと動揺するものだろうと思っていたが····。
実際は、頭の中はすごくクリアだった。ただ自分の鼓動とこのどうしようもない想いが溢れるだけ。
多分、私の頬は紅く染まっているだろうがそれ以上にカズマの顔が真っ赤だった。
フフ、赤面のカズマも可愛い。またレア顔ゲットだな。
「えっと、その·····俺は」
カズマは完全に混乱しているのか何かを言おうとしては口を開けては閉じる。
金魚みたいだな。
「カズマ」
「あ、え、何?」
「返事を聞かせてもらえないかな?」
直球で言った。本当はもっと考える時間があった方がいいかもしれないが、私はすぐに答えが聞きたかった。
カズマも答えが出たのか、真面目な顔になって何かを言おうとしたが、
「俺は―――「レティシア様!起きられたと聞きましたがお体は大丈夫ですか!?」」
そこで、バタン!と扉を勢い良く開けて黒ウサギが飛び込んできた。
「レティシア様お体の調子はどうですか!?どこか痛いところなどありませんか!?」
「ちょっと黒ウサギ。そんなにけたたましく質問をしたらレティシアも迷惑よ」
それに続くように、飛鳥や耀、十六夜やジンが部屋に入ってきた。
いきなり人の増えた部屋の中をカズマを探す。すると、コーキからニヤニヤされながら話しかけられているのを見つけた。
さっき赤面していたのが嘘のように淡々とした無表情に戻っているカズマ。
「レティシア様、お顔が赤いようですがお熱でもあるのですか?」
私はというと、この通り。黒ウサギは私の額に手を当て熱を測る。
「やはり少し熱があるようですね。無理をせずにすぐお休みになってください!」
「ああ、いや私は」
「レティシア様はもっと御自分を大事にしてください。日頃から色々と頑張ってらっしゃるんですから。こういう時ぐらいゆっくりお休みになってください」
そう言って黒ウサギは強制的に私を寝かせ、布団を被せる。
「黒ウサギの言う通りレティシアは少し休んだ方がいいよ」
「そうよ。貴女の頑張りはみんなよく知っているわ」
どうやらこれ以上抵抗は無意味だ。
もう一度見れば、今度は十六夜もニヤニヤしながら会話に混ざり、ジンは不幸にも巻き込まれているみたいだった。
「では、レティシア様。またお見舞いに来ますね」
「またね」
「ちゃんと休むのよ。ほら、十六夜君たち帰るわよ」
女性陣はそのまま男性陣を引っ張って退室していった。
男性陣が来た意味って何だったんだろう?
それはともかく、カズマは部屋を出ていくまで無表情のままだった。
それがどういうことかはともかく、彼のことだからあの告白の返事がうやむやになることは無いだろう。
告白····。そう私はついにカズマに好きって言ったんだ。
今更になってその実感を感じる。何とも言えない達成感と高揚感。
「えへ、えへへへへへ♪」
顔がにやけるのが止まらない。そして私は枕を代わりに抱き締めながらふと不安になった。
もし、拒絶されたらどうしよう。嫌いっていわれたらどうしよう。
失恋したらどうしよう、と急に頭の中が不安でいっぱいになる。
でもカズマは明らかに動揺していたし、脈がないわけじゃない。
「大丈夫。大丈夫。大丈夫」
私は自分に言い聞かせるように何度も口ずさんだ。
そして頭を振って不安を追い出した。
どうせなら楽しいことを考えよう。悪いことを考えるよりもそれがいい。
きっと大丈夫だ。私は頑張った。十分な対価を払ったはずだ。
だから、大丈夫。
私はそう結論づけて、カズマとどんな風に収穫祭を見て回るかなどのこれからのことに思いを馳せるのだった。
◇◇◇
目を覚ますと、窓からの月明かりに包まれていた。
どうやらあれこれ妄想している内にいつの間にか寝てしまっていたらしい。
ふと枕元を見ると一通の置き手紙があった。
差出人は言うまでもないカズマだった。
やっぱりそういうところはしっかりしているなぁ、と思いながら手紙の封を開ける。
そして、少しの間その手紙を開けるのを躊躇った。
動かなければ先に進めない。時間が経っても書いてあることは変わらない。
そう自分に言い聞かせ、私は手紙を開いた。
『前略。レティシアへ
まず、こういういう大事なことの返事を手紙ですることを許して欲しい。本当は直接面と向かって答えなきゃいけないことは分かっているが、今の俺はどうにもお前とまともに話せそうにない。
それはともかく、本題を単刀直入に言わせてもらえば
レティシアの想いに俺は応えることは出来ない。
でも、勘違いしないでくれ。俺はお前のことは嫌いじゃない。むしろ好きだ、と思う。
しかし、それはloveであるかと言われたら俺にはわからない。そもそも、俺は感情がどういうものかは知っていても、実際はどんな感じなのかはわからない。普通の人間ですら親愛と恋愛の線引きが難しいらしいが、俺はその普通の人間が当たり前に感じる感情すらわからない。
そんな俺が半端な俺がレティシアの想いに応えるのは、上手く言えないが失礼な気がする。
すまない、レティシア。でもね、嬉しいんだと思う。いや、嬉しかった。
こんな俺を好きだと言ってくれて本当にありがとう。
カズマ・N・エノモトより』
―――代価と言うものは何かと少し足りないものだ。
フッフッフ、告白が成功すると思ったあなたは読みが甘いッ!
そう簡単にハッピーエンドなんてあるわけないんですよ、なーんてね
まぁ、冗談はここまでとして
真由美さーん!
真由美:はいはーい!呼ばれて飛び出て毎度元気なチャットのメンバー、真由美さんでーす!
どうも~、今日はどうしたんですか?
真由美:今回は私たちチャットメンバーに関するお知らせがあって来たんですよ
真由美:何と、今回私たちチャットメンバーは出張して来ましたー!
真由美:簡単に言うと、他の作者さんのとこ行って来たってことです☆
真由美:蒼鋼さんという作者の舞台裏へ
ここの常連の方ならみんな知ってる蒼鋼さんの問題児原作の“魔武器と破軍将も来るそうですよ? ~営業開始~”や魔法科原作の“It's impossible to love and be wise.”、インフィニットストラトス原作の“IF・IS・FoF~Fighters over Frontier~”のキャラたちの集う活動報告の方に行って来たそうです
真由美:説明乙!そして、気になる詳しい内容は見てのお楽しみ!
ということで、真由美さん達が出張している蒼鋼さんの活動報告“舞台裏を繋げた。”も良かったら見てください!
“舞台裏を繋げた。”
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=123463&uid=81070
コーキ:ちなみに先にこっち見ないと意味分からないからこっちから見てね~!
“舞台裏は繋がっている。”
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=120238&uid=81070