勝利の女神:NIKKE 時空を超えた鬼神は何を成す 作:イオハ
申し訳ありません。
前線基地がほぼ地上にあったりなどの新情報を見て絶望していましたが、私は元気です。
うちの作品の前哨基地は地上とアークの間の浅い深度の地下にあるということでお願いします……。
色々と事象が確定している現代で話を書き始めましたが、確定しているだけに新しく話を盛り込むのに苦労しております。
それでも大丈夫だよと言っていただけるのであれば幸いです。
あ、話の時系列としては本編のチャプター8直前を想定しております。
モダニア(マリアン)と邂逅したりスノホワと共闘したり、遭難してカウンターズの面々とおしくらまんじゅうをした後ですね。
ガァンッ!
重い銃声が射撃場に響き渡る。
弾丸はターゲットの中心からやや左上に逸れて命中していた。
「……軽々と持ち上げた時にはすごく驚いたけど、まさか問題なく撃てちゃうかぁ……しかも命中してる」
「光学照準器を使って相手を狙うことが新鮮なのと、的が思ったより近くて上に逸れちゃった」
「本来であればもっと離れた距離で交戦するけど、ウチらの工房じゃ150メートルが限界やね」
シオリは銃のボルトを引いて排莢し、次弾を装填する。
銃を構え直しターゲットに照準を合わせ、間髪入れずトリガーを引く。
ガァンッ!
次は寸分違わずターゲットの真ん中に命中した。
「とはいえ……2発で真ん中に命中はすげえなぁ」
「しかも伏射や膝射じゃなくて立射で!実はニケだったりしない?」
二人とも他意はないのだろうが、自分の生い立ちのことを考えると複雑な気持ちになってしまう。
シオリは苦笑いしか出てこなかった。
「……うん。反動も問題ないし銃の癖もおおよそ理解した」
任務中に拘束が解除されれば問題なく銃を取りまわせる。
しかし、拘束が外れなかった場合のことを想定して拘束されたままの状態でも銃を撃てる動きを確立する。
今のところ戦闘になれば自然と開錠されてはいるが、拘束が外れなかった時に備えて損はないだろう。
試射も終わり、マルスとニアが神機の解析を始めようとした時、シオリの小型端末が振動する。
画面を確認するとシフティーからだった。
「こちらシオリ。シフティーどうしたの?」
『シオリさん。アンダーソン副指令から任務が発行されました。第5エレベーターに移動してください』
「了解」
通信を切り、神機の解析に取り掛かっている二人に声をかける。
「マルス、ニア。銃を使わせてもらうね」
「話は聞こえてたから大丈夫だよ」
「弾薬とマガジンは試射場出入口左側の棚にあるからそれ持ってっちゃって!」
解析で手が離せないながらも必要なものを教えてくれたことに感謝しつつ、シオリは彼女たちの工房を後にした。
――――――
ほどなくして第5エレベーターの到着したシオリ。
周囲を見回すが、特に誰かが待っているということはなかった。
(予想はしていたけど一人での任務か)
「第5エレベーターに到着したよ」
『確認しました。お持ちの端末をエレベーターの認証端末にかざしてエレベーターを起動して地上に上がってください』
指示通りに端末をかざすと、エレベーターが起動し轟音を響かせながら扉が開く。
シオリがその中に入ると扉が閉じ、地上に向かって上昇を始める。
『今回の任務は指定ポイントからの周辺監視任務となります』
「監視?」
『はい。本任務はシオリさんがアーク周辺の地理を把握するの主目的としております』
「主目的ってことは副目的もあるってこと?」
『そうです。副目的は指定ポイントから確認できたラプチャーの観察です。』
地理把握と外敵理解の任務。
難しくはないがこの世界のことに詳しくないシオリにとっては重要な任務だ。
「了解。副目的の観察は排除じゃなくてもいいの?」
『状況によっては排除してください。ですがラプチャーは音に反応しますので、集まってくるラプチャーの数がわからない状況では穏便に済ませたほうが良いかと』
「アドバイスありがとう。ラプチャーの破壊は極力避けるよ」
『頑張ってください!』
通信が切れる。
それと同時にエレベーターが地上に到着する。
端末を確認すると現在地と目標地点の座標がマップに表示されている。
アーク周辺でラプチャーと遭遇することはないと思われるが、念のために警戒しつつ指定ポイントに移動を開始した。
――――――
目標地点に到着した。
程よくアークから離れて且つ山というほどの高さではないが小高い丘になっており、周囲の地形把握にはとても良い場所だ。
「目標地点に到着。周辺地形の把握を開始する」
一方的な通信を送り、周囲の地形を観察し始める。
道中でも思っていたが、草木がほぼ生えておらず岩肌がむき出しで、やや空気が乾燥している。
身を隠す場所はほぼない。逆に言えばアークに隠れながら近づくのも難しいということ。
ほどなくして周辺地域の大まかな把握が完了した。
開けた地形だったため目印にできそうなものが少なく苦戦したが、何とか目印になりそうなものを見つけて地形把握を進めた。
把握途中で時折小規模なラプチャー群を遠方で確認したが、こちらに近寄ってくる様子もなかったので観察に徹する。
機械ではあるが車輪やキャタピラではなく、昆虫のように多数の足で自重を支えながら移動する節足動物型歩行をしている個体が多い。
(どういう理由であの歩行形式を採用しているのかはわからないけど、関節を狙えば動きを大きく制限できるかな)
接敵したときのことを想定してどう攻略するかのシミュレートする。
今所有している武器が神機とは異なるとはいえ、違うなりの立ち回りを意識すれば問題ないだろう。
制約の多い中、できる最善を尽くす。そうしなければ生き残れなかった。
「……ん?」
改めて周囲を確認して撤収の準備を始めようとした矢先、遠くの位置でわずかに土煙が立っているのが見えた。
確認するために銃のスコープを覗き込む。
土煙の正体はラプチャーの群れだった。それだけならば撤収するだけなのだが、問題は……。
「誰かが追いかけられている?」
ラプチャーだけでなく、それから逃げるように移動する人影も見つけてしまった。
以前助けた時ほど状況は切迫していなさそうではあるが、時間の問題だろう。いつ追いつかれてもおかしくない。
シオリはすぐに通信端末を起動した。
「シフティー。私の位置から数キロ先でラプチャーに追われている人影を確認。救助を行うから可能なら彼らとの通信を繋いで」
『シオリさん!?ちょ、ちょっと待ってください!状況を確認しますので!』
「それじゃ間に合わなくなる。ハウンド1、作戦目標を更新。行動を開始する。通信は継続するから通信が繋がったら教えて」
『だから待ってくださーい!?』
戦闘の意志に反応してか両手の拘束が金属音を立てながら解除される。
すぐさまシオリはボルトハンドルを引き弾薬を装填する。
照準を合わせラプチャー群の一番先頭の個体に照準を合わせて迷うことなくシオリは引き金を引いた。
――――――
件のニケ部隊のニケ達は自分たちの不運を内心嘆いていた。
先日には複数のロード級ラプチャーに襲われて担当指揮官は、命こそ助かったものの長期療養を余儀なくされる。
そして指揮官不在のニケ小隊は臨時で別の指揮官が充てがわれ、破損して交換したパーツの慣熟訓練も兼ねた資材探索任務に赴いていた。
途中までは問題なく資源を回収し帰路についていたのだが、道中で数体のラプチャーと遭遇する。
サーヴァント級ラプチャーだったため、本来であれば迅速に処理し直ぐにその場から離れれば問題なかったのだが……。
「あの程度の数なら逃げればいいだろう」
臨時指揮官は制圧よりも撤退を選んだ。
ニケたちはラプチャーを破壊して離脱したほうが安全だと具申したが、却下されてしまった。
出費を極力抑えたいのか発砲を頑なに許可しなかった。
渋々命令を受諾し、ラプチャーから離れようと退く。
しかしラプチャーはそんなことお構いなしに追いかけてくる。
逃げ続ける過程でラプチャーたちがどんどん合流していき結果……。
「だからあの時に排除しましょうといったではないですか!」
「うるさい!ここまで大規模な集団に成長するとは思わないだろうが!」
最初の数体程度のラプチャーがまで百はくだらない規模まで成長してしまった。
「これからどうなさるつもりですか!?このままではアークには戻れません!」
「どうもこうもあるか!お前達もこの状況を打破する作戦を考えろ!」
「救援要請は出されたのですか!」
「そんなもんだしたら俺の評価査定に響くだろうが!」
その言葉を聞いてニケたちは呆れかえる。死んでしまったら元も子もないだろう。
指揮官が違うだけでこうも能力やニケの扱いに差があるのか。
指揮官としてよくここまで生きてこれたものだと一周回って感心している。
「ここまでの規模になったらデコイを使っても意味がありません!」
「かといって迎撃など以ての外。物量に押し潰されるだけです。生き残るためには救援を呼ぶ以外ありません!」
「……だがっ」
「死んでしまったら評価以前の問題ですよ!むしろ不名誉な評価でマイナスまであります!」
「!?……クソッ!」
死亡とマイナス評価という単語でようやく救援要請を出した。
しかし、出すのが遅すぎて死まで時間の問題と思われた。
その時―――
先頭を走るラプチャーの脚部が破損し、転倒。
後続のラプチャーが転倒したラプチャーに巻き込まれて追従が少し緩む。
何が起きたのかと困惑している時、通信が入る。
『こちらハウンド部隊所属ハウンド1。これより援護に入る。そちらはそのまま撤退しろ』
凛々しい声が聞こえたと思った瞬間。一体、また一体とラプチャーの足が壊れ転倒していく。
狙撃しているのは分かるが、どこから援護射撃を行っているかわからない。
(この長距離からの狙撃による援護は……まさかこの前の……?)
連想されるのは先日の超長距離狙撃によるロード級ラプチャー群を殲滅した人物。
だとしたらこれほどまでに心強い味方はいない。
「資源回収部隊よりハウンド1へ。援護感謝する。こちらはこのまま撤退する」
『了解。一通り撃ち尽くしたらこちらも撤収する』
通信が切れる。
それと同時に最初はラプチャーの足を狙っていた狙撃が、コアを撃ち抜き始めていた。
じわじわとではあるが、ラプチャーの数が減っていく。このままいけば逃げ切れる。
「指揮官!今の通信は聞いていましたね!?このままこのエリアを離脱してアークに帰還します!」
「言われなくてもわかっている!」
急いでこの場を離れる。
2度も助けられた量産型ニケたちは彼女の武運を祈るしかなかった。
――――――
「了解。一通り撃ち尽くしたらこちらも撤収する。」
通信を切り射撃に集中する。
銃弾の質量に加えてほぼ無風なのが幸いして、射撃場で行った弾道調整のみで問題なくラプチャーに命中していた。
最初は頭を押さえて後続の動きを鈍らせ、次に数を減らしていく。
神機があれば楽に殲滅できたかもしれないが今はあるものでやれることをするしかない。
幸いにも以前のような大型の個体はいない。
小型の個体だけなら弾数さえあれば殲滅できる。
撃ちきった弾倉を銃から外し、弾薬の詰った弾倉を銃に取り付けボルトを押し込み薬室に弾丸を装填する。
そして再びラプチャーへの攻撃を再開する。
「シフティー。彼らと通信を繋いでくれてありがとう。」
『救援連絡が直前に来たからすぐに繋げましたが、今回だけですからね!』
「うん。ごめんね」
通信越しでもわかるくらいに怒っているのがわかる。
申し訳ないとは思うが、あの状況では一刻を争う状況だったので仕方がない。
思考を巡らせつつも手の動きは止めない。
正確にコアを撃ち抜くことでラプチャーの集団は3割ほど壊滅していた。
追いかけられていたニケ達も無事に離脱できたようだし頃合いを見てこちらも離脱しよう。
そう考えていた矢先のことだった。
『シオリさん!3時方向からラプチャーが多数接近してます!』
「銃声に引き寄せられたかな……数は?」
『およそ30です!』
手持ちの弾薬の数を確認する。10発装填マガジンがあと4つと予備弾薬が5発。
銃に装弾しているものも含めてちょうど50発。
殲滅するには弾数が圧倒的に足りない。
今いるラプチャーを倒したとしても追加でラプチャーが近寄ってくる可能性だっていある。
「シフティー。今私が発砲を辞めた場合、追われていた部隊がラプチャーに追いつかれる確率は?」
『ゼロです。部隊の方は既に党エリアを離脱が完了しており、ラプチャーの方もシオリさんの方に方向転換しています』
「わかった。今から移動して寄ってきたラプチャーをアークから引き離す」
今回の携行品は任務内容的に弾薬と多少の飲料と携帯食料のみ。
もしこのまま外で活動するとなると、頑張って切りつめても3日が限界か。
それに先頭の子も考えると弾薬が先になくなる可能性の方が高い。
『無茶です!身体能力が高いと言っても、貴女はニケではなく人間なのですよ!?ニケよりも活動限界が―――』
「持ち込んだ物資的に日を跨ぐ活動が厳しいのは分かる。」
『でしたら!』
シフティーからしてみれば生身の人間が単独で地上に出ること自体が狂気の沙汰なのである。
その上でラプチャーと戦闘しているのは自殺行為に等しい。
人がニケの装備を使えるとか、ニケに等しいもしくは匹敵する身体能力を持っているとか、それ以前の話なのだ。
シフティー自身が同じ力を持っていたとして、任務で地上に行けるわけがない。一人ならなおさらだ。
エレベーター内で発砲しない方がいいと言ったが、内心では発泡せずに帰還してほしいという意味合いもあった。
そんな気も知らずにシオリは淡々と言葉を紡ぐ。
「だから……日没までに終わらせる」
アカギの鷲巣麻雀レベルで話が進まず申し訳ない……
次からは大きく話を進めていこうと思いますので気長に待っていただけると大変ありがたいです……
次回以降はここまで長く期間を空けないように頑張ります。