半刻ほどが経過した
「犯ってしまった」
ようやく戻ってきた思考で真っ先に浮かんだのはそれだった
君の身体は控えめに言って最高だった
俺は羅刹だから非常に力が強くて人間との性交なんて誰とヤっても身体を食い破ってしまう
内臓も破裂させてしまうせいで普通にご無沙汰だった
性欲処理と割り切って羅刹同士でヤることも可能だが祇園様の目が怖い
当然普段シノハユちゃんとヤるにはヤるけどそれは殺さないよう極限まで力を抜いた擬似的なものに近い
俺は決して満足できないし自分で選んだ道だからとずっと自分を誤魔化し続けてきた
だから俺はどう考えても竹刀ちゃん、君を殺してしまったと思っていたけれど
俺がどれだけ激しくしても凄くいい声で喘いでくれて
その度君の強い生命力を実感できて無性に嬉しかった
初めて俺に合う子を見つけたって感動した
二人で何度も絶頂できた
俺達の身体の相性自体がどうやら抜群であるらしい
流石に二十回ほど犯ってしまったから君は力なく寝落ちてしまったけれど
その小さな身体で最後まで俺に付き合ってくれて嬉しかった
俺はもうこの子を手放したくないと本気で思った
見抜かれた通り神様なんてまるで信じていないけどこれだけは運命だと思ったんだ
最中では内臓何度も貫いては陰部から血が滴り落ちてきたのに
こうして今、穏やかに寝息を立てていられるのだから明らかに人間じゃない
(人間らしくないと言っていたものね…)
だからまあ俺より強くても納得はできた
でも別に良いかとも思った
それに…と考える
この子は本当は祇園様始め二十四節巍の仲間達に献上すべき極上の稀血だろう
(ほら見てよ、さっきの戦いの傷がもう直ってる!)
羅刹並みの回復力だ
でも嫌だ
決めたよ
誰にも渡すものか
俺は眠る君にもう一度キスを落とす
竹刀ちゃん
君は絶対に何があっても俺だけのものだ
だからさ…
シノハユちゃんとは別れるよ、返してあげる
だって君はそれを目的としてここに迷い込んできた羅刹狩りなんだろう?
腕の中の少女は先ほどの情事など意にも介した様子もなく
ただこんこんと眠り続けるばかりだ
風が吹いた
俺は見上げる
星と月が瞬いているがただの空じゃない
何か水面の奥にあるように揺らめいている
少し向こうに小高い丘が見える
今腰かけているところは君が自身を慰めていた岩場だ
夜なのに薄っすらあちこち光っていて手燭が灯っているように明るい
お陰で最中に君の端正な容貌がよく見えた
ここはどこだろうか?
地理的には俺の屋敷の裏山の中
そう、それだけのはずだ
しかし俺は生まれてから百五十年、
いや、違うか
「前の生」から数えておよそ三百年
自分の屋敷の近くにこんな場所があったなんてことは知らなかった
不思議な場所だ
慌ててやって来たのだろう君を探して追いかけなければ決してたどり着けなかったかもしれない
そうだ、そもそも君を見つけたこと自体が奇跡だ
俺はあの疾風の逃げ脚にまず追いつけない
そのままどこかへと行ってしまっていたら二度とは会えなかっただろう
なのに俺を天井へと串刺しにして逃れた君を慌てて追い掛け始めた瞬間頭にこの場所が勝手に浮かんだんだ
だから俺はここに君がいるって確信してやって来た
君は絶対見つからない自信でもあったらしく俺を見て酷く狼狽えていた
いや、それは絶対に誰にも見られたくはなかったはずの一人遊びを見られたからってだけかもしれないけど
それにあの時
君が俺を呼んでる気もしたんだ
実際ここにやってきたときに君が俺のこと考えながらシてたのは耳にした
ねえ、竹刀ちゃん…
不思議なこともあるものだよね
どうして俺は君の居場所が、そして君が俺を呼んでるのがわかったんだろうね…?
更に四半刻が経過したけど俺はその場を動く気にはならなかった
う、ん…
ふわーあ?
手元の少女が身じろぎする
おや、お目覚めみたいだね
俺の可愛い小鳥ちゃん♪
君は目覚めると青褪めた顔をしてすぐに俺を斬り刻んだ
うん、予想はしてた
でも一応抗議してみた
あのさあ…
竹刀ちゃん
流石に酷くない?
もう俺達ヤる事ヤった深い仲だよ?
あ、あなたが無理やり!
私のしょ、処女奪って!!
あ、なんだ処女だったの?
結構激しくしちゃったから血だけじゃ判別できなかったんだよねえ
それはよかったあ
正直あれだけよく喘ぐものだからとっくに喪失してるのかと…
君は刀を構え俺の残った胴体に刀を突き刺し岩場に俺を縫いつけた
減らず口が言うですね?
もう二度と舐めた口聞けないようにして差し上げましょうかです?
ああやっぱり顔が見えた方がずっといいや、無表情だけど怒ってるのがよくわかる
可愛いなあ
本当に酷いなあ…
最終的には「俺が欲しい」って迫ってきたのは君の方なのにー
ちが、あれはっ!
其の、あの、えっと、た、体質!にございますです!!
体質?
俺は繰り返す
ええ、ちょおっと厄介な私の体質でして、
其の、あなた私の傷口舐め回しましたでしょう、です
ああ、確かに…
そういえば君が悲鳴を上げて豹変したのはその後だ
私はあのように、されると
其の、身体が言うこと聞いてくれなくて!
えっと、その、え、えっちになっちゃう体質なんです!!
(何だそりゃ…)
と思ったけど取り敢えず合点はいった
へえなるほど淫乱体質、と
淫乱って言うなあ!です!!
もう真っ赤になって何度も自爆する君が可愛過ぎる
ゆ、ゆえにですよ?
私は今までなるべーく殿方には近寄らない様にしてきましたですのにっ!
あなたと来たらいちいち距離が近くて
む、胸元触ってくるし困ったです!!
そりゃ触るでしょ
そんなおっきなおっぱい全男の夢だよ?
さっきまでの煩悩ゼロみたいな聖職者の顔はいずこに置いてきやがりましたですかーーー
取り敢えず殴られた
痛いけどまあいいや
俺はふと思った疑問を聞いてみた
ねえ、竹刀ちゃん
なんです?
思ったよりも素直に反応くれる君
俺の事好き?
君は怒髪天を衝いたようだ
巫山戯るなです!
あなたのことなんか大々大嫌いでございますです
えー冷たあい
当然でございましょう?です
君は呆れたように
本当にどうしょうもなき殿方でございますです!!
これが俺達の出会いだった
ついでに初めて俺達がキスしてまぐわったこのうちの裏山の静謐な空間は俺達の思い出の場所となった