しばらくこの書き方にします。
気づくとシノハユちゃんは綺麗さっぱり消えていた
俺は一応尋ねた
これから彼女はどうなるの?
ちょっと微妙な辻褄合わせは自動でなされるはずですがまあ大怪我負って
三ヶ月眠り続けたみたいな筋書きに変わるかと
ふーん便利な術だね
神様にお願いするようなものでございますですしね
神祷術というのは
俺も神頼みしちゃったのかあ無神論者の俺が
左様な事実も無かったことにできますですが、いかがなさいますです?
止めてよ、冗談
俺は君と出会えた記憶を消されるなんて御免だよ
俺は改めて君に向き直る
ねえ、竹刀ちゃんこれで俺は名実ともに婚約者を永遠に失ったよ
どうしてくれるんだい?ここからさ
私に言われましても、選ばれたのはあなたでございますです
ふーん?じゃあいいんだ
これから俺が散々暴れて羅刹狩り組織壊滅させに行っても?
なんと?
身が綺麗になったってことはもう何かに遠慮する必要がない
そりゃ君には伸されちゃうけど君は究極的には俺を殺せないし
俺の回復を縛り続けるなんてこともしてきてないよね?さっきから
できるかもしれないけどそれをしてこない理由はなんとなくわかるよ
君は本当は嫌なんだろう?
俺を縛るって行為が
それも多分何か深い理由からって言うんじゃなくて君の甘さ
きっと俺への優しさ、あるいは負い目かな?
でも俺は羅刹だからさ
君の親切心を反故にしてでも人食いに走ることができちゃうんだよ
俺をちゃんと見張っておかなくていいのかい?
別に羅刹さんであるあなたが誰かを食べるのは普通でございましょうです?
私は誰かを犠牲にする酷い話を何でもないことのように話す
それが君の想い人のシノハユちゃんでもかい?
君は明確に固まる
ああ、ついでに、これから氷結の継子達に組織に戻ったシノハユちゃんを
見張らせて彼女の想い人とやらを特定して二人仲良くあの世に送ってあげるのも
いいねえ
ねえ、竹刀ちゃん俺とっても親切でしょ?
何せ君の恋敵葬ってあげるんだから
で、できるわけ…!
氷結の継子は一体だけじゃないよ
冷や水を浴びせるようにピシャリとあなたは言い放つ
此の場合、実際に氷のお人形さんが他にいるのかは問題では無い
脅しとして使えるか私の反応を見ているのだ
(くっ卑怯な、…)
ふんふんなるほどなるほど
君は俺が人食い、対象が仮にうちの信者としてそれだったら放っておくけど
シノハユちゃんや羅刹狩り達だと放っておけない、と
うわー、うちの信者可哀想
君に見捨てられてさ
どの口が言うか!と思ったが合ってはいる
自身が殺せぬ二十四節巍達が当然日夜多くの人間達を食らっているだろうことはいつも鎌首を擡げる手痛い問題だったのだ
だからこそ、いや、尊い命を見捨てる言い訳には違いない、だが、それでも
私は羅刹さん達を滅亡させるという目的のため動いてるですが、私にだって
その過程で犠牲になる命があることは承知しておりますです
けれど食われずに残るのが羅刹さん狩りであるのに越したことはないので
ございますです
彼らが生き残った方がより多くの人々を助け、守る事ができるがゆえでございますです!
竹刀は己の力を過信していない
羅刹狩りの、仲間?いや距離感的には認識は同業者程度だが、とにかく存在自体は
とてもありがたいと思っている
一人で羅刹狩りを続けたいとは思っていない
一人では守れない命を他の誰かが守ってくれる事に恩義を感じて当然だった
しかし、今彼女が大寒の弐番から投げかけられた問いはまさにその心理の弱みを
ついた物だ
命の価値に高いも低いも無いと思うけどねえ
君が言ってるのは詭弁のさながら神の傲慢だよ
ねえ、だからさあ
君も俺も幸せになれる素敵な提案あるんだけど聞いてくれる?
……なんなんでございますです
簡単だよ
君が望むなら俺はもう誰も食べない
もちろん君の仲間もシノハユちゃんも襲わない
ついでにうちの信者も襲わないし食べない
誰も傷つけない
え?なにゆえいきなり正道に落ちたです?
頭打ちましたのでございますです?
酷いなあ
そんなんじゃないよ
でも羅刹さんであるあなたが食事を止めるということは死と同じ
何も食わずに朽ち果てると左様にしか聞こえませんです
もしかして私のあらゆる婉曲的な説得に心動かされ遂には自決を選ぶ
此れぞまさに戦わずして勝つ究極のはつぴいえんど…!!
さっき散々闘った上に、君が何度も俺を嬲り斬り刻んだのは全部無かった
ことにでもなったの?
私は三歩歩くと全て忘れるっていう化け物の生態でございましてです
そうなんだ、可愛い小鳥ちゃんだね
小鳥ってバカにするなあ!でございますです
はいはい、可愛いよ
でね、まあ誰もって言ったのだけ訂正する、言葉の遣い方としては間違っちゃ
いないはずなんだけど大和言葉って紛らわしいね
うん?
訂正する
君以外の誰も食べない
私、以外の?
うん、君以外の
私は食べられる、と?
うん、毎日四六時中俺の気の済むだけ提供しておくれ
その血肉と君の身体全て
あと心もね
はあ!?
それで俺は他の誰も食べない
別に君は不死身なんでしょ
傷だって回復するんだからこれで誰も損なわない結果になるじゃない
其れってあなたが勝った場合の賭けの景品の私と何の違いが?
何も違わないけど従ってくれないなら今まで以上に多くの人間殺す
嫌がらせするけどいいの?
其れ、は、
選択肢など無いではないか
くっ!
ほらほら返事は?
あ、もう夜も遅いし別に褥で聞かせてくれてもいいよ
できれば可愛い鳴き声で散々喘いでからね
此の!
変態ーーーーーー!!!!!
取り敢えず俺は君に蹴り上げられて座敷牢の部屋の天井にめり込まされた
きっとこれからもこんな毎日が続くのだろう
俺に合掌
天井を見上げて君は俺を右手で高く指差す
いいでしょう!
あなたの提案に乗っかってやりますですとも!
ただ、覚えておくことでございますです!
私はあなたよりは強者!おまけに賭けには勝ちましたですゆえ全部従ってやる
必要はございませんのです
私を食らいたければ好きなだけ食らいなさいです
けれども!!
私は先ほど先輩の記憶を消す提案をあなたにする際にした、己の決心を口にする
二十四節巍大寒の弐番の羅刹 琉堂狩衣さん!!
私はあなたを必ず殺す!
其してもちろん私はあなたを殺せない制約を破った事で手痛いしっぺ返しを
くらいますですがもはや構いはいたしませんです!!
あなたを殺す準備が整い次第、良いですか!
他の誰かではなく私自らあなたを葬って差し上げますですゆえ、
ゆめお覚悟をば!
鳥土里竹刀は高らかに宣言した
斯くして私とあなたのたった一ヶ月にも満たない奇妙な運命共同体生活が始まった