いつも通り、暗闇の中私は目を覚ました
(おや、なにゆえお布団、昨夜は野宿しなかったのでございますです〜?)
はっ!?
全裸だった
(ちょっ私、服脱いっえっ…?)
大きい腕…私をすっぽり包む
すうすうと安らかな寝息
何気なく真横の様子を伺うと昨日の出来事が全て蘇ってきた
(あ、其うか、私は此の殿方に飼われ…)
はああああ…
何もかもを思い出した
最悪の寝覚めだった
そして当然ながら相手も全裸だった
悪夢かと思って叫び出しそうになったが流石に起こすのは悪いので黙った
(其れにしてもなにゆえ羅刹さんのくせしてばっちり眠ってるんでございましょうかです)
昨夜私をめちゃくちゃに嗜虐したくせに眠ってる様子だけは子どもさんみたいにあどけなくも穏やかでイラッと来たがほんの少しだけ可愛いとも思ってしまった
何せ黙っていれば大層な美丈夫なのだ
(いえ、私ときたら何をば考えて…)
とは言え、冬の朝方だ
まだ日も昇ってはいないが
(寒い、かもしれませんです?)
お布団はすべて私の方へ掛かっていたようであなたは一糸纏わぬ状態だし
ただ、冷気使いさんな上、羅刹さんは身体が人間とは違う構造をしている可能性もあった
(ただでもやっぱり、一応見てて寒々しいですしね…)
私は胸元の異空間に手を突っ込んで青い布地ともこもこふわふわの羽毛地と針子一式を取り出すのだった
(此れでも食らえです!)
縫い終わったふわもこっとした夜着を頭から引っ被せておく
取り敢えずささやかな嫌がらせとしてあちこちにまち針は仕込んだままとした
最後に一応術を使い、あなたを這い出ていた布団から元の位置に戻して完成だ
他には…
あなたを起こさぬように布団からそっと這い出て私もいつもの黒い巫女服を着て昨夜あなたの自室だと紹介された部屋の隅々を見廻すと文机が目に止まる
薄暗かったからか昨夜の掃除で目につかなかった物だった
やっぱりボケていたなと思いつつも取り敢えず汚れていないか確認した
私はまあまあ綺麗好きだ
(おや、斯くは…)
文机の上に蒔絵が描かれた高級そうな箱がありその中にはたくさんの
書きかけの木簡が入っていた
悪いかと思いつつも一枚ずつ取って中身を改める
(其うだ、良いことを思いつきましたです!)
いたずら決行だ
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暗闇だ――――
…なさい
ごめんなさい…っ
誰かが俺に謝りながら俺の手を取り大粒の涙を零して泣いているのが聞こえる
ああ、覚えがある
これは俺が前の生で子どもの時にしょっちゅう見てた変な夢だ
今生の始まりは羅刹になった後だったため、羅刹は寝ないから夢なんて見ていないが辛気臭い夢で子どもながらにずっと嫌いだった
俺は夢の中で目が開けられないし泣いてる誰かは俺にひたすら謝ってくるし子どもの頃は俺に謝って泣く女なんて母親しかいないと思っていた
その夢をまた見ているということは
(うん、俺今寝てる?羅刹なのに?なんで…)
泣く女は無視してそんな事を考えていたからだろうか
やがて全ての音も暗闇も遠ざかった
ガバッ
布団から飛び起きた
やっぱり寝てたみたいだ
ふあ~あ、欠伸も出てきた
羅刹でも疲れると眠るのかなあ
記憶の限り初めてだけど
まあ昨日は、色々普通じゃないことが…いやなんだっけ…?
そうだ、そもそも俺なんでシノハユちゃんの部屋に寝てないんだ?
当然隣にシノハユちゃんいないし
昨日何が…
あっ…そうだ思い出した
もうシノハユちゃんはいないし俺の事を覚えていないし
代わりに君が、君が!
竹刀ちゃん!!
君がいない!!!
なんで!?
俺を置いて出ていってしまったのかい?竹刀ちゃん…
俺は絶望に打ちのめされたが
横を見ると見慣れない物が目に入る
青い服?
なんだろうこれ
よくわからないが君の匂いがした気がして着てみた
い、痛…
竹刀ちゃん、針だらけだよこの服、絶対態とだよね
でも凄く温かい、天邪鬼な子だなあ君は
だけどどこに行ったんだろう書き置きくらいあっても…
うん?なんとなく文机を見上げると綺麗に片付けてあるはずの木簡が裏向きでバラバラになっていた
(ナニコレ)
しかも覚えのない竹簡まで参戦している
全部表に返してみたところ
添削だった
俺の持っていない朱交じりの墨を使い、性格のよく出ている惚れ惚れするほど見事な美文字で書かれた竹簡で
俺がたまに心に移り行くよしなし事をそこはかとなくかき綴っている歌や句の木簡に対し基本的に辛辣な添削文言を書いた、わざわざ矢印でどの木簡のことを指しているか示す親切且つ意地の悪い仕様
(君は朝から他人を怒らせる天才か何かかな?)
俺は面白くなかった
朝から君に逃げられ
竹簡で罵倒され
おまけに多分お手製だろう服には針を仕込む嫌がらせ
いや、服はちゃんとした生地に見事な卒ない縫製な上に温かいのでありがたく
いただくが
多分君からの不器用な贈り物ではあるんだろうし
嫌味たっぷりだけど
そうしてあれ、そう言えば
他にも木簡無かったっけと蒔絵の箱を開いたところ
見慣れない竹簡が姿を現した
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私の朝はまず聖域の聖水にて身清めから始まる
服を脱いでさっさと聖泉に飛び込む
すると
(あーやっぱり…)
下半身から絶対あなたの精液だろうものが溢れてきた
汚された
もう言っても仕方ないが、だって神様が本気で私が純潔でなくなると巫女として
まずいなら絶対止めてくれた筈なゆえにだ
だが、一つだけ懸念がある
(妊娠したらどうしようでございますです)
いや、まずあり得ない、
理屈に合わない、私は…
(…いやでも、今の私の状態ってなんなのでございますです?)
自分のことなのに訳がわからなかった
清めが終わり
あなたに入念に付けられたらしい昨夜の情事の痕も全部消えた
聖水の力は凄いのだ
服を着直したところ、私は蹲る
うっゲホッ
発作だ喀血した
そりゃそうだ
病気なのだ
実は昨日のあの対決の時、態と冷気を吸い込んだ節もある
そうすれば悟られずに済むと判断した為だ
木を隠すなら山の中
病気の症状を隠すなら、あなたが放った同様の症状を齎す能力に肖るのは当然だった
発作が収まると
いつものように私は術を使う
さて、本日の神様へのご奉仕の始まりである