竹刀ちゃんと狩衣くん   作:星が好き

27 / 31
20回目-27 団欒

程なく君達は戻ってきた

両手にたくさんのお皿を抱えてって

 

(え?)

 

  お待たせ致しましたです!

  大寒の弐番さん

 

  あ、いや全く待ってないけど

 

  其れは何よりでございますです♪

  

君は歌でも歌い出しそうなほどの上機嫌だ、まあ顔は相変わらず恐ろしいほどの

無表情なんだけど

 

  本日はなかなか会心の出来でございましてです

 

君は術で祭壇一式を取り出し料理皿を次々にお供えしていく

そして祝詞を捧げ、奉じる

この辺りは流石に神社の巫女さんだ

堂に入っているし日課なんだろう

 

  よーし

  此れにて今朝の供物の奉納しゅーりょー

  

でもやっぱり余韻全部ぶち壊し

流石だね

 

  さあて、と

 

君はそう言ってまた胸元から茶卓と椅子と敷物ととか一通り取り出して置いていく

あのさあ君何でもその胸元に仕舞う癖どうにかなんないのかなあ

 

いや、わかるよ?間違いなくだだっ広い異空間がその先にあるんだろう事はさ

たださ、なんでそこ入口に設定してんの?

意味あるのそれ

なんて言葉にならない叫びが俺の中でこだまし続けるけど取り敢えず黙って成り行きを見守るしか無かった

 

  できましたのです

  さあさあ

  あなたもどうぞ

  

竹刀ちゃんは俺を椅子に座るように促した

 

取り敢えず座ったけど…

目の前にはたくさんの色とりどりの料理

 

(これは一体?)

 

戸惑う俺を見て君は説明を始める

 

  神様への毎朝の供物の奉納は私の日課でございますです

  たくさんのお料理作っても

  ご覧の通り余るですゆえ食べてくださいませです

 

  いや、俺羅刹だから人肉以外食べないんだけど…

 

  多分大丈夫でございますです

 

  ほら、あなたの分身さん方見てくださいませです

  さあさあ、皆さん食べますですよー

  お手々は洗いましたですか?

 

  はーい!

 

  はい、良い子でございますですね〜

  ではいただきまーすです

 

  いただきまーす!!

  

君が手を合わせると氷結の継子も追従した

あれ?君の胸元にいた氷結の継子だけじゃなくていっぱいいる

 

  一体の子からなんか情報伝わったらしく他の子達も食べたいと言うですゆえ

  多めに作るようになりましたです

  大食漢さん方でございましてです

  まあ、西洋菓子しか食べないですが

 

確かに明らかに西洋菓子を食べている

ああ、昨日君が食べさせてたのはこういうことか

 

  なんか世話してもらっちゃって悪かったね

  俺は一応保護者?いや分身を作り出した本体?として君に詫びる

 

  別に、賑やかになって大変良いことでございますです

  何せこの子達はあなたと違って人殺しなんてまるでしてない

  いい子でございますです!

 

「俺と違って」

そこを強調したいらしい

全く君と来たら…

 

  はいはい悪いのは俺だけね

 

  やっとわかったでございますですね

  

勝ち誇る君

ちょっとムカついたのでほっぺたを軽く抓っておいた

 

  うわあぷにぷにしてるね

 

  ふぁにふるのふぇふぉふぁひふぁふ(何するのでございますです)

 

何言ってるか分からないのでほっぺたは離してあげた

 

  さてじゃああなたもどうぞ

  ああ、手を洗う水栓はそちら

 

取り敢えず手は洗ってみたけど

 

  いや、羅刹だから食えるわけないけど

 

  あの子達がお菓子思いっきり食べてますですゆえ大丈夫でございましょう

  です

 

まあ確かに、改めて並べられた品を見てみる

本当にがさつそうな君が作ったの?と言いたくなるけど、そういえば君は昨日は掃除、今朝は裁縫、とひと通り家事は得意そうだった

 

じゃあ俺もと、取り敢えず手を添える

 

  いただきます

 

  どうぞ、召し上がれです

 

  あれ?君は食べないの?

 

  自分で自分作ったもの自分で食べても味はわかってるですし

  私ご飯食べなくても平気な身体でございましてです

 

もう三年くらいまともに食事してないと言う君に俺は目が丸くなる

だからちっちゃいんだよと言ったら殴られた

 

(理不尽だ)

 

  関係ございませんです!

  数え十一歳なら別に取り立てて低くもないでございましょうです

 

  いや低いよ、君身丈五尺もないでしょ

 

  無くても困りませんですし

 

  とにかくちゃんと食べなきゃ

 

  えー

 

君はまだ気乗りしなそうなので仕方ない無理やり腕を引っ張って座らせた

俺の膝の上だ

 

  あの、なにゆえ此処

 

  良いでしょ特等席

 

  あなたが私の胸揉んでなければ悪くはないお膝の抵抗感でございますですね

 

  そこも俺の手専用の服の切れ込み

 

  朝から半殺されたいのでございましょうかです?

 

  だって後ろから手回すと調度君の服の切れ込みに手が届くんだから

  もうこれは一種の運命でしょ

 

  やっぱり殺しますです

  

俺の手は君のどこにそんな力が?と言いたくなるほどの怪力で捻られたので渋々引っ込めた

 

  良いから普通に大人しく食事なさいです

 

  けど俺箸の持ち方一つ覚えてないし

 

  なんだ

  左様な事でございましたですか

  

君はさじを取り料理を一掬いし俺に向き直る

 

  はい、あーん

 

  え…

 

  はい、あーん

  

繰り返した

仕方ないので俺も口を開ける

 

瞬間口いっぱいになんだろう、不器用な君の愛情?が広がる気がした

しかもちゃんとまともに料理の味が感じられる

 

  美味しい…

  

思わず口に出ていた

君は無表情だけど紅潮しているように見えた

 

  じゃあ次は此方

 

俺は結局君に介助されながら食事する事になったけど、得も言われぬ幸せが込み上げてきてちょっと泣いたら口に合わなかったのかと心配された

 

  違うよ

  俺人間だった時にも誰かと食事した記憶なんてほとんどなくて

  しかも毒見された後の料理だから冷めててさ

 

  こんな温かくて愛情たっぷりの料理なんて初めて食べたんだなって思って

  多分この涙は驚きの表れだよ

 

  べ、別に私は愛情とかなくて単に捧げ物の余りを…

  其りゃあ、あなた今は羅刹さんですし要らないでしょうね

  毒見なんて

  

君は最後に、口に合わないので無いならば良かった…と安堵を零した

 

これが「団欒」というものか

子供の頃から宗祖然として育つよう特別視されて育てられた俺には人間の頃から

縁遠い物だったが初めてそれが実感できた

 

竹刀ちゃん、いつか君と俺とそして俺達の子供と

 

(ねえ、俺はそれを望んでも良いのかな?)

 

昨夜、眠りに落ちた君を眺めながら込み上げた感慨がまた静かに復活してきた

 

取り敢えず困ったらしい君は俺の涙を拭いてくれた

結構乱暴だけど優しいよねありがとう

 

俺の人生初の誰かとのまともな食事はまだまだ食べるのが大変なほど量があって

でも辛いとかは無かった、嬉しさしかなかった

君と共にある幸せってこういうものだろうか

 

俺は幸せの形というものを少しだけ実感した

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。