竹刀ちゃんと狩衣くん   作:星が好き

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20回目-28 後朝

食事が終わると君は出してたもの全部胸元の異空間にしまってうちの継子も仕舞った

 

俺は一応、えーそこに入れるのと尋ねたが

 

  はい、あなたに任せても餓死させそうでございますですし

  私の可愛い子もあなたに言ってた通りそもそも最初溶けてたですよ?

  

詰られたのでそれ以上は何も言わなかった

 

因みになぜ俺に食事を用意したのかと尋ねると

 

  そりゃあ私を三食啄まれても身が持ちませんですし、回避策は

  必要でございましょうです

  後は私が単純に料理が好きで今まではただ余らせるだけでしたがね

  あなたが食べてくださるならば渡りに船

  三食全て私が面倒を見て差し上げましょうです

 

君は結構やる気みたいだった

俺としても断る理由がない

君と下らない話しながらの食事が存外気に入った

 

何より君は笑わないまでも料理を褒めるとはにかんだようにふっと表情がやや綻ぶ

それを見るのが醍醐味とも言えた

 

但し、交換条件も突きつけられた

 

  あの…

  実は食材がかなり底を尽きかけてるのでございますです

  ゆえにあなたのお屋敷の食糧庫の食材を一部いただくことはできませんです?

 

そのくらいなら全く構わなかった、何せうちの宗教は金持ちだ

 

  わかったいいよ、俺の食事作ってくれるならいくらでも出してあげる

  ああ、現金の方がいいかい?

 

  いえ、あの其れは流石に

 

悪いですゆえ…と君は力なく言うが別に構わないんだけどなあ

 

あ、そうだ、じゃあこれはどうだろう?

うん、良いこと思いついた

 

  ならさ、竹刀ちゃん

 

  はいです

 

  うちで働かない?

 

  は?

  あなたのお屋敷…

 

  と言うか琉堂教でだよ

 

  えーと…?

 

君は露骨に困惑している

 

  俺の助手とか補佐やってよ

  君の生字引染みた知識量なら全然いけると思うから

  昨日初めて聞いたときは普通の人間と誤認してたから君が三億冊暗記してるとか

  普通に冗談だと思ったものだけど特殊な術が使える君のことだ

  なんか裏があるんでしょ

  でなきゃ俺の羅刹百五十年の生に匹敵するほど、いやそれを悠に上回る知識量

  持ってるはずないし

 

  まあ、ええ

  嘘じゃないですよ

  記憶力は多分持ち前の化け物の方の特性で一度頭に入れた知識を忘れることは

  なく後はあなたも仰った通り、神祷術にてたくさんの本を一気に読んでしまう

  ことが可能ですゆえ

 

  反則だなあ

 

  別に読書量で勝負してるわけでもないでしょうに

 

  それはそうだけどさ

  単純に悔しいや

  逆立ちしたって敵わないって思わされるの

 

  私を同じ土俵にいない化け物と認識していただいたらそもそも

  比較するって発想が出ないと思うのでございますですが

  いかがでございましょうです?

 

  えーそれだけは嫌だ

 

  なにゆえ?

 

  俺は別に軽口で君を化け物呼ばわりする事はあっても本心でそうは

  思ってないもの

  竹刀ちゃんは竹刀ちゃん

  俺の下に堕ちてくれた可愛い俺だけの女の子だよ

 

 

左様に屈託なく笑うあなたを見たら

ドキン――――ッ

胸が高鳴った

 

(私を普通の女の子扱いしてくださるなんて、なんて、無謀な…)

 

得難い、経験…

 

顔がなにゆえか熱くなった、悟られまいと俯く

 

  ……す

 

私は聞こえないほど小さい声を発していた

 

  え、なんだって?

 

  ……です、

  あり……とござ……ますです

 

 

顔をちょっとだけ上げた君は無表情は無表情でも真っ赤だった

 

その顔を見た俺も思わず釣られてほんの少しだけ赤くなった

そのまま綺麗な黄緑の瞳を引き寄せて本日既に二度目となるキスをした

 

(でも足りない)

 

いくら君を求めても足りなかった

正直衝動のまま押し倒しそうにもなったけど耐えた

 

そしてどこか遠い意識で俺は思った

 

(これから毎朝こんな事になりそうだな、俺)

 

君はがさつで暴力的な割には意外と純情で乙女な面があり調子を狂わされる俺だった

 

  あ、そうだ

  忘れるところだった

  竹刀ちゃん

  はい、これ

 

  ん?木簡?

  

  うん俺に竹簡とあと針だらけのこの着物くれたでしょ

  お陰で着た瞬間血だらけになったよ

  大したことはないけどそのお礼

 

  ああ、服、言われてみればというか

  言うのすっかり忘れてたですが其れ、夜着として縫った物でございますですよ?

  しかも赤基調の着物着てるあなたの好みではなさそうな青い着物

 

  別にそれはいいよ

  手作りなんだね

  夜着なのはわかってたけど脱ぎたくなかったし折角君が贈ってくれた物なら

 

  いや、深い意味はなく

  単に朝から全裸でお布団から這い出してるあなたを見たら思わず

  私まで寒々しくなり衝動のまま縫ったのがいきさつでございますです

 

  それは尚更ありがとう優しいね

  でも針は仕込むんだね

 

  別に優しくしてやる義理もございませんですゆえ

 

  やっぱり態となんだね

 

  態とでございましたですが何か?

 

  うん、そういう事なら後で覚えててね

 

  ちょ!まっ!

 

  後はちゃんと木簡も読んでよね

  一応君のやたら辛口の添削くぐり抜けられるように頑張ったんだけど?

 

  え…

  

君は裏返して読み始めみるみるうちに顔が赤くなったり青くなったりして面白い

 

  で?感想は?

 

  …ひと言ではダメだししにくいですゆえ

  一旦保留とさせていただきますです!

 

  じゃあ会心の出来って思っとくよ

  ついでにこの竹簡はちゃんと持っとくね

  肌身離さずに

 

  い、いや、あの

  其処までの代物じゃ其れは、な…

 

  嫌だよもう決めたから

 

  え、いやあの

  本当に…

  

横目で様子を伺うとやっぱりね

君はまた真っ赤だった

 

本当に素直じゃないなあ…

 

  あだ人の 情けに驚く 夜深きに

  夜の幻と 言ふにやあらむ

  

俺が意地悪言いつつもかっこよくて優しくて遥かに誠実でびっくりしただなんて感想

わざわざ平安京の雅人じゃないんだから君が詠んだ卒ない風流な一首に乗せて伝えてくれなくても良いのに

 

本当に天邪鬼だよね君ったら

 

俺は初夜を終えた朝に君が贈ってくれた綺麗な白いすみれの花付きの小さな竹簡をまるで宝物を扱うかのように懐に大切に仕舞った

 

君はと言えば俺が贈った木簡を胸元の異空間に仕舞って歩き出したので俺もそれを追いかける

君の速度なら俺を置いてけぼりにするなんてわけないだろうに君はゆったりとした足取りで多分俺に合わせて歩いてくれたんだ

 

俺の詠んだ歌の内容?

 

  幻と 言ふにやあらむ 夜の小鳥

  手に留まりしは まことなりけり

 

可愛くて小さくて小鳥みたいなくせに強くてがさつで優しい君へ

これからよろしくね取り敢えず昨晩はとっても可愛かったよ

まだ季節柄蕾すらも結ばないが小鳥が止まり木にしやすい梅の木の枝を添えて




※流石に和歌はAI頼ってます。
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