播磨――――
着くには着いたが、もはや午前中からどっと疲れている
結局あなたに振り回されっぱなしだ
しかも首筋も胸元もあなたの痕だらけ
独占欲と束縛感を感じざるを得ない
彼程小さな傷とも言えぬ物は流石に自動修復対象外らしい
(其れにしても、「奥さん」とはね…)
意味合いは分からないでもないでございますですが、ではあなたは私の「旦那様」?
乗り換え、左様な言葉はどうしたって頭に浮かぶが其れは失礼なため一旦保留とした
あ、
心臓…
グッ
ガハッ
はあ、
本当にダメな身体…
其れに、
子宮…
確実に
違う
今までと
…
…
<<ねえ、竹刀ちゃん
俺の子産んでくれる?>>
…
…
あなたの声が聴こえた気がした
けれど私は、化け物だ
(其う、まさに斯様なところがね)
竹刀は自身に宿った可能性のあるまだ弱い弱い命の灯火をふっと掻き消した
その瞬間発作は今までで最も早く治まったがいつもの無表情に色濃く影が落ちた
なるほど
斯くはあなたをあと少しの間だけ欺き続けるのに丁度良い
ねえ、あなた
後悔してくださいませね
私は化け物なのでございますです
其してあなたが見ている私は幻
私はもう、とうに此の世の者ではございませんのです――――
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宗祖様…?
筆頭は今朝の講義の最中に突然口が止まり、暫く遠くを眺めてぼやっとしている狩衣を見兼ねて声を掛けた
え、ああ、ごめんごめん
えーっと今のお釈迦様のお話しの解釈はね…
(いけないいけない)
君も遠くでお仕事?お勉強?を頑張っているんだもんね
竹刀ちゃん…
狩衣は一瞬とても悲しい気持ちに襲われ、無性に竹刀に逢いたくなった己を叱咤した
うーん
昨日からの非日常でちょっと疲れてるのかな
でも慣れないと
だってこれからはその非日常こそが俺と君との甘い日常になるんだからね
…できる限り俺を殺す準備とやらゆっくりにしてくれると有難いけどそれは望み過ぎなんだろうな
そう遠くないうちに俺も君も終わるんだ
そうしたら俺達何も遺らないね
元より覚悟の上だ、でも、本当は君ともっとずっと一緒にいたいのに知り合うのが遅過ぎたかな
いやでも君は結局羅刹狩りなのだから俺といつ出会えても対決するだけか
そもそも昨日互いの正体が露見するや否や俺は君を殺しに掛かったしね
君は制約で殺せないだけでそれさえなければ俺を殺してたのだろうし
そりゃあ確かに平行線に決まってる
夫婦か
軽々しく言うべきじゃなかったかもな
(でも仕方ないじゃない)
これはシノハユちゃんもそうだったけど羅刹にならなきゃ人の寿命じゃ俺は君には決して出会えてない
また死んだら今回のように繰り返しの生があるとして、俺はきっと君に出会うためだけに羅刹に堕ちる道を選ぶだろう
その選択は未来永劫代わりはしない
それはつまり突き詰めれば、君と決して長くはいられない不幸と短くても一緒にいられる幸福を俺が選択し続ける事に外ならない
停滞を選んでいるのと同義だが他に道はない
でもなんだろうね
竹刀ちゃん君の中にある凄い力はそんな停滞も断ち切ってくれるようなそんな希望を持った物だったりするのかい?
でももしそうなるとこの繰り返しもきっと、いやまさに次には終わってしまいまた俺は君と離れ離れに…
あれ、今変な事を考えたな
なんで昨日知ったばかりの君に「また」なんて言葉を使ったんだろう
俺おかしくなってるな
でもそうだ、なんでだか君に会った瞬間に直感したんだ
この子は俺を受け容れてくれるし俺はこの子に会いたかったんだって
顔を見たら途轍もない美少女でそりゃ驚いたけど、でも安心感も覚えた
そう、顔が見えなくても君は美人に決まってるってそう思ってたからだ
もしかして、俺は「いつか」君に会ったことがあったんだろうか
なんて思ったところで何の記憶も無い以上は無いのと同義
もし、仮に俺の記憶外の預かり知れぬ範囲で君との出会いがあったんだとしてそんなの神様でもなきゃ分からない話だ
そんな遥か高みになんて俺じゃ到底手は届かないから無駄な空想は止めよう
俺はただ君との今を甘受するだけだ
それは神様にだって邪魔させやしないのだから