竹刀ちゃんと狩衣くん   作:星が好き

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20回目-39 播磨からの帰邸

帰路――――

 

まさか、ごく普通に播磨から俺の屋敷のある東京府まで走って帰ることになろうとは

君は平然とした顔してるけど、ありえない話なんだよなあ…

 

流石に行きよりは、俺に合わせて速度をかなり落としてくれたけど、それでも君にしっかりと腕を握られ引っ張り回されてるのは変わらない

 

そのため走ると冬の冷たい空気が刺すように痛いが、なんとか話はできた

 

  ねえ、竹刀ちゃん

  やっぱりこれ無茶じゃない?

  普通に瞬間移動で良くない?

 

とか散々抗議してみたけど、君ときたら涼しい顔して「日々の修行の一環だから慣れろ」と述べた

 

竹刀ちゃんが言うには、

  【

   ・瞬間移動術は確かにあるが実質は禁術扱いとしている

   ・俺に提案したのは契約不履行にしないための最終手段のつもりで、基本的には足で移動する前提だった

   ・今後も単純移動のために使用することはない

   ・なぜならそれは脚を鍛えるのを怠る軟弱者の証明だからだ

   】

 

要するに、俺に掛ける慈悲などまるで持ち合わせてはくれない君だった

 

(まあ、確かに俺の脚もこれを毎日やるようになったら君の言う軟弱ではなくなるのかもね…)

 

  ねえ、竹刀ちゃん

 

  はい、なんでございましょうです

 

  取り敢えず返り血に汗にあと昨日からの俺達の体液とかで今、結構ベッタベタだろう?

  帰ったらご飯食べてちゃんと湯浴みしようよ

 

  湯浴み…は、まあ悪くはない提案でございますですね

  私の黒い巫女服は何もかもが目立たないですゆえ、さほど気にもしてなかったですが

 

  いや、黒ければなんでも誤魔化せると思ったら大間違いだから

  そしてこんな話は絶対俺みたいな男じゃなくて本来、女の子の君が一番自覚してなきゃいけないと思う

 

だんだんわかってきたが、竹刀ちゃんはズボラでガサツで面倒くさがりなようだ

 

  一応今朝、水浴びはしてるですがね

 

  え?

  こんな真冬の朝方っていうか、夜明け前に?

 

  日課でございますですゆえ

 

  それ聞いた俺の方が寒々しいよ

  ちゃんとお湯で温まろうね?

  天然の温泉だよ

 

  此方も一応、天然の泉ではございましたですが

 

  止めて、聞くだけで凍えそうだから

 

  あなた、冷気使いじゃないです

 

(言うと思った)

 

  それとこれとは話が別だよ!

  でもまあ確かに、俺は氷点下でも平気な身体ではあるといえばそうなんだけどさ

 

  じゃあ、いいじゃないです別に

 

  気持ちの問題かなあ

  特に可愛い可愛い俺の女の子が、俺のこといちいち邪険にするせいで、俺の心は常に氷点下だし

 

  へー

 

  まず君の反応が氷点下なんだよ…

 

などと軽口叩きあっていたら東京府の俺の屋敷に着いた

流石に道程に二刻は要し、もう日付が変わる前だった

 

着いても君は相変わらずの無表情だったが、少なくとも今夜の止まり木はここに定めてくれたんだよね?

俺の可愛い可愛い小鳥ちゃん

 

君は遅い夕食の準備をまた例の術で作った趣味空間★とやらで行おうとしていたが朝や昼とは違って俺をそこに招き入れてくれた

 

理由を尋ねると

 

  もう遅い時間でございますですゆえ、本来はご飯の時間には身体の構造上、適しませんのですが、せめて時間の経過が非常にゆっくりとなる此方にてお召し上がりになった方が、身体への障りもややマシとなりましょうです

 

俺は羅刹だから身体の障りなんて、と思うけれどちゃんと俺を個人扱いしてくれる君の優しさが嬉しくて素直に従った

まあその想いをそのまま口にしたところで天邪鬼な返答しか返ってこないのが目に見えるけどね

 

因みに氷結の継子は、と尋ねたがあれらは元々君の胸元の異空間の中でしっかりと毎食ご相伴に預かり、なんなら時々おやつまで貰う至れり尽くせりの厚遇を受けているとのことで

 

君が言うには

 

  悪い子のあなたと違って、良い子の可愛いお人形さん方は此の時間はもう、とっくにお眠りの時間にございますのです

  あなたとは違ってね

 

二度も言わなくても、と流石にイラッときたが君に当たっても仕方ないので堪えた

第一、今はご飯を用意してもらってるんだし、それに俺のために台所に立って、てきぱきと働く君を見たら俺はとても気分が良かった

 

継子も誰もいない二人きりで、美人で可愛い奥さんは俺のために手料理、なんて口にしたら君にそんなつもりはないとか言われながら二刀で斬り裂かれそうだけど、素直に嬉しかった

 

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