越後に着きはした
(気分は、はい最悪でございますです)
命を殺す
私は簡単に其れができる化け物だ
今までずっと其うしてきた
いくらでも元人間の羅刹さんを狩ってきた
いくらでもいくらでもだ
其処には私なりの正義があった
だって「奪われた」のだ
私は何も守れはしない
間違ってもお仕えしているような万能の神様になぞ、なれはしない
けれど、
其れでも、私はできるだけのことをしてきた
化け物なりに多くの人々の幸せを願って戦い、命を殺し続ける事に何の躊躇いもなかった
だが今、いや昨日もだ
振り払おうとしても湧き上がる別の感情がある
後悔
ただ二文字が過ぎる
しかし、私が殺したというのに一体何を悔やむ余地があろうか
笑ってしまう
私はとうに殺しをして悲しんだり哀れんだり悔やんだりする段階なぞ通り過ぎた身で、積み上げた屍の数は計り知れない
いや、果たして左様な頃があったのかも最早、思い出せない
結局積み上げた屍の中に私の、いやあなたの一部が混ざっている其れがあっただけに過ぎない
少なくとも私がいとも容易く数多葬ってきたのと何ら変わらぬ命の一つに過ぎない
だが、とも考える
私の中にさえ宿っていなければ、彼らはきっと生まれる可能性だけはあっただろう
実際に生まれたのか、もしくは死産か早産か左様な事は露知れずだが
芽生えた可能性をいきなり一瞬で潰されるような不幸にだけは遭わずに済んだ可能性が高い
やはり結論は変わらない
私は命を損なう化け物だ
関わる者全てを不幸に落としてしまう
其して、今は死者でもある
早く棺に帰らなければ――――
けれども、約束したことは破れない
本日は見ず知らずの多くの人々と自ら関わる日となるだろう
もしかしたらもっとずっと長い関わり合いにだってなりかねない
(はあ、面倒くさい)
あなたと出会ったことで本来しなくてもいい筈の気苦労ばかりが増えてしまった
確実に言えることは私が母になど決してなれはしないこと
私のような化け物が命を生み落とすのは間違いであるのだ
(…きっと左様にはお考えになってくれないのでございましょうがね)
あなたは愚かだ
私などを信じる必要はない
信じれば裏切られる
其う、其れだけだ
(…私がもし、ただの「人」だったならば、左様な考えは「邪道」と切り捨てられたろうけれど)
ああ
あなたが今朝、言った通りだ
「仮定」になぞ何の意味もない
私は私であることを止められない
人の振りをいかに上手く出来たとて斯様なところで露呈する、其して思い知る
「化け物は化け物以外にはなり得ぬ」と
見上げるとどこまでも続く灰色の空
冷たい風が吹きすさぶ越後の冬
吐く息も当然白く、まるで凍りついた私の心を映しているかのようだった
(「氷」か…)
思い浮かべてしまった
悔しいな
私はどうやら依存し始めてしまっているかもしれない
裏切り続けているその口でなにゆえ言えただろうか
斯く冬空よりも其の身はとびきり冷たいくせに、どこか安心する心地よさを持つあなたに
「会いたい」だなんて――――