竹刀ちゃんと狩衣くん   作:星が好き

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20回目-51 駄々っ子世に憚る

琉堂院では今、信者達が次の講話に合わせて一人ずつ集い始め、全員が揃うと平身低頭して琉堂教の主である宗祖を待っていた

 

くだんの宗祖はすぐ近くにいることはいるのだが、困ったことが一つ

 

駄々っ子の相手が一向に終わらないのである

 

  だからさー、竹刀ちゃん

  いい加減覚悟を決めようよ

  もうここまで来たんだからどっちにしろ引き返さないでしょ?

 

  いいえ!

  やっぱりちょっと色々とあの、私、若輩ゆえに行き届かないところがあるにもありまして!です

 

  はあ、もういい

  一旦わかった

  あんまり時間かけると始まりが押しちゃうし取り敢えずまずは顔出さなきゃ

  俺が呼んだらその後でちゃんと来てね?

 

  えーと、

  多分、あの、はい、

  なんとか、其の

 

なんかゴニョゴニョ言ってるのできりが無い

俺は無視することにした

 

扉を開けて中に入り、いつもより少し長めに待たせてしまった信者達を労う

 

  やあやあ、ごめんね

  ちょっと用事が長引いてね

  あ、全員顔上げていいよ

 

  今日もしっかり如来様や菩薩様の教えについて学ぼうね

 

  それでね、今日は一つ皆に紹介があるんだ

 

  …ただ、えーと、ごめんね

  また、ちょっと待っててね

 

言うなり俺は退室する

 

もうこうなったら引っ張ってでも連れてくると決めていたが

 

(いや、あのさあ…)

 

小さな君の一体どこにそんな力あるの?

テコでも動かないんだけど

戦闘中でも使ってなさそうな膂力で全力拒否してるよこれ

 

  コラコラ、ダメだってば

  もう行こうよ

 

  無理ですー!

 

  じゃあ、周囲すべて蓮根とでも考えなよ

 

  穴開き過ぎです

  お顔ボコボコの人いたら怖いですー!

 

屁理屈言う君

 

(本当仕方ないなあ…)

 

俺は最終手段を取った

 

  そう?じゃあ

 

俺の手はよく感触を覚え込んでいる「それ」をまさぐる

 

  ちょっ

  何脈絡なく胸揉んでるですか!

 

  あれ?忘れたの?

  俺は好きな時に君を抱けるって、そう言ったのは君だよねえ

 

俺はついでに口付けもして君の舌を割り開き絡め取る

 

  いや、確かに左様なお約束ではございますですが

  いくらなんでも此方では、ちょっと

 

  って、う…ん、あっ…あっ…

  いや、あ…

 

  あ、信者達に最中の声聞こえるかもとか思ってる?

  大丈夫大丈夫、なんなら聞かせてあげようよ

  俺と君は別に変な関係じゃなくて正当な食う食われるの関係なんだから

  何も疚しいことはないし大丈…

 

  くっうっ、

  流石に今だけはあり得ませんですー!!

 

頭の中にバキィンと音が響いた

 

それに気づいた時には俺はさっきまでいたはずの廊下には無い、講堂用に誂えた意匠を凝らしてある天井を仰いでいた

 

(あれっ…?)

 

退室したはずの講堂に逆戻りしているのがわかる

 

ついでに俺の真下の床はバッキバキに割れてささくれだってやや痛いし、頭には確実にずきずきと響く鈍痛がある

 

ふと横目で見えた信者たちは大口を開けて固まっていた

 

  は?

 

おや、

軽く上体を起こすと小さな白い美しいお御足が見える

そのまま視線を上げていくと

 

なぜか仁王立ちする黒い巫女服を着た黄緑の瞳の美少女

 

  竹刀ちゃん!?

 

  ほんっとうにあなたときたらあり得ませんです!

  何考えてるですか!

  此の変態!!

 

  それはいいけど君、堂々と出てきて大丈夫なの?

 

  えっ!?

  あ…

 

周囲を見渡し、今気づいたとばかり脱兎のごとく駆け出す君

 

  し、失礼いたしましたです!!

 

  逃さないよ

 

俺も速攻起き上がり、戦闘時でもないのに君を全力で引き止める

普段なら疾風の逃げ足を見せただろうけど、先に君を少しでも熱で浮かせておけば、脚が露骨に鈍くなるのは先刻承知の上だ

 

君はあっさり捕まり

すかさず

俺は信者たちへ向き直る

 

  はい、

  というわけでこのめちゃくちゃ可愛いけどじゃじゃ馬な黒いちっちゃな巫女さんが今日から皆のお友達でーす

 

  「鳥土里神社」っていうところの神様に仕える神聖な巫女さんでちっちゃいけどとっても物知り

  当然神道だから種類は違うけど、俺と同じ正真正銘の聖職者仲間だよ

  でもうちは色んな既存宗教思想の複合型だから比較的馴染みはしやすいと思う

  

  今日から俺の手伝いしてもらうことになってるんだ

  皆、よろしくね

 

俺は一息で言い切った

 

  はい、竹刀ちゃんの方はご挨拶は?

 

  ちっちゃいは余計でございますです!

 

軽く殴られた

君は思ったよりも元気らしい

 

  はい、じゃあ取り敢えずまずはね

  竹刀ちゃん床直してくれる?

 

  ん、はいはい

 

君は簡単に穴を修繕する

 

その様子を見ていた信者達は当然驚愕していた

ここで適当に俺が説明する

 

  驚くのも無理はないけど、この竹刀ちゃんはね

  神様に選ばれた女の子で神通力が使えるんだ

  俺が神様の声が聞こえたりするのと同じようにね

  まあ、それとは全然種類が違うけど、彼女もそういう特別な力があるんだ

  だからまあそのつもりでねー

 

取り敢えずどよめきと拍手が巻き起こったので信者達もなんとなく受け容れ始めたようだ

 

良かった、俺がぶっ飛ばされたらしいことはもう一旦保留になっているみたいだった

最初は「終わった」と思ったけど、なんとか頸の皮一枚繋げられたかもしれない

 

不思議な力がある事を示せば、そちらに着目してくれる

実に単純で扱いやすい人間達だ、ご苦労な事だと羅刹である俺は冷ややかに思った

 

君は俯きがちに弱々しい声を上げる

 

  えーと、あの、

  た、只今、ご、ご紹介、にあ、預かり、ました、

  えっと、あの、鳥土里竹刀と、あ、申します、です…

  あの、其の、えっと、あの、若輩ゆえに、其の、至らぬ、ところ、多々あるやも、其の、知れません、です、が、えっと、其の、あの、えっと、頑張ります、です、

  ゆえに、あの、ゆるりと、えっと、あの、お見守り、いただきたい、所存にて、あの、お願い、申し上げます、です、

  は、ぃ…

 

もう最後は聞き取れないほど尻すぼみだった

 

  まあ、この通り引っ込み思案だけど頭が良くて知識も物凄い豊富だから、皆心配しないでね

  多分馴染めばもっとサラサラ喋れるようになってくると思うから

  俺も竹刀ちゃんには俺の足りないところたくさん助けてもらいたいと思ってる立場だからね

 

俺は信者達に喝を入れる

 

  というわけで!

  さあ今日もしっかりお勉強をしようね

  皆

 

  はい!!!!!

 

信者たちは何があっても宗祖様を絶対的に信頼しているのであった

 

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