琉堂院に戻ると信者達は開口一番「鳥土里先生はおられないのですか」と口々に聞いてきたので俺は「うん!」と笑顔で大きく頷いた
信者達は露骨にがっかりしていた
さっきのあの様子だと続きはできたかもしれないけれど、まだ初日で無理はさせられない
竹刀ちゃんにはゆっくり馴染んで欲しいし
信者達のこの様子はまた後にでも君に伝えてあげることにしよう
まあまあ
そんなに気落とさないでよ、また講話はやってくれると思うからさ
ね☆
俺は片目を瞑って微笑み取り敢えず信者達を宥めたが
(はあ、勘弁してよ…)
俺だって本当はずっと竹刀ちゃんといたいよ
でも君と俺とはなんだか一定の距離があった方が上手くいく気がする
…まあ、まだ出会って三日目だしね
性急にしすぎると昨日みたいに行き違いの喧嘩になりかねないし、ついさっきも俺怒っちゃったからなんか昼時は鬼門かもなあ
君の優しさはとても良く伝わるけど、俺は君に自己犠牲はして欲しくない
どうしたって感謝よりも先に怒りが湧いちゃう
感情を知ってから早、百五十年
俺もすっかり人間(?)らしくなれたと思ってはいるけど恋愛にはまだまだ疎いなあ
けど、あんまり悠長にもしてられないよね
君が俺を殺す準備とやらを丁度、今頃してるのだろうか
気にはなったがそれは考えてもわからないので保留とした
くっ…
ガハッ
また喀血だ
はあ、ポンコツ…
だが、今は斯く長く続く痛みも受け容れよう
だって今は子宮に何もない
(良かった)
越後の空は相変わらず灰色がかったどんよりとした白だが先ほどのあなたとの情事で子ができなかった事に感謝したい気分だった
私の心中は実際の空模様とは打って変わって晴れ晴れとしていた
(だって長く続く雪だってやがては止むですゆえにね)
ようし、今日も終わりだよー
そら、鳴らさないとね〜
琉堂院の鐘が鳴る
俺の今日の務めが終わった合図だ
ちなみに、鐘は氷結の継子が鳴らしている
はい、これで講話は終わり
みんな、今日は特に竹刀ちゃんのお陰で新しいことしっかり頭に入ったと思うから忘れずにね
信者達は一斉に頭を垂れた
はい!!!
宗祖様ありがとうございます
明日も頑張ろうね、じゃあ解散
袈裟を翻して、大講堂を退室した
廊下から外を見ると夕焼け空だった
(ああ、昨日もこの時間に君に呼び出されて仲直りできたんだったな)
そんな事を考えていたら、案の定、夕日鑑賞のお誘いが来た
(でもさっきは猛吹雪だったけどなあ)
取り敢えず、また君の転送術で俺は召喚された
さっきの場所とも違う上空みたいだ
おや、これは凄い…
驚きましたです?
特別でございますですよ
猛吹雪の中、君の空間術で一部の空を切り取ってそこだけ赤い空と沈む太陽が見えていた
白と赤と空色の三色が同時に視界に飛び込む絶景だ
へえ
これは綺麗だねえ
ええ、大自然の迫力という物を少しは感じていただけましたら此れ幸い
君は得意そうだった
その様子がおかしくて笑ってしまう
ちょっ
笑うところじゃ
笑うよこんなの
だって君が俺のために用意してくれたと思うと嬉しくて
べ、別にあなたのためとかではなく、単に風光明び…
俺は天邪鬼言う君の口をまた塞いだ
ただ口を離すと君は微妙に俺を睨み
なんか、私の口塞げば取り敢えず勝った気になってませんです?
現実は寧ろ逆でございますですよ
言い合いに負けそうになるからと物理的に封じようとするのはちょっと下策にござ…
もう一度キス
だからあ…
俺は舌で口周りを舐め回し
だって論破云々関係なく君の可愛い赤いお顔が見たいだけだよ?俺は
なっ!
ほらやっぱり真っ赤になった
(今回も俺の勝ち♪)