日が沈み切り、狩りの時間となったので君も俺も名残惜しく身体を離し、それぞれ脱いでいた服を着直す
今夜はどこだい?
当たり前ですが、まず上空はあり得ませんですね
ひとまず下方へ参りましょうです
なんでも君は「面倒くさいので」という、ただそれだけの理由で大和の雪国中を結界術で閉じ込め、雪を溶かしただとか
相変わらずやる事が大胆でズレてる
まあ本当は雪で埋まった家々を哀れに思った結果だろうことはわかってるけど、それにしてもそんな力使ってよくピンピンしてられるな、この子は
神祷術は聖浄気を通じて神様の祝福を借り受ける術
空間術はきちんと範囲計算されていれば然程は消費いたしませんのです
今回は対象も分かりやすく、広範囲ではあっても、細かな指定不要の純粋な地上面積に過ぎませんでしたですゆえ
大したことはないと宣う君
それってどういうことなの、と尋ねたが
空間術や結界術は中に何を閉じ込めたいかの明確な定義が必須でして
今回などはただ範囲を指定して閉じ込めたいだけ
封印しなければならない物や懲らしめたい対象がいるわけでもない
ただ薄く天幕を張るだけと考えれば楽な感じはいたしませんです?
対象範囲が広すぎて全く楽な理屈は分からなかったが、そういうことらしい
(君はやっぱり化け物なんだなぁ)
いや、そう思ったらまた君を傷つけてしまうかもしれない、とちょっと冷やっとしたが君は何でもないことのように俺を見ている
昨日ほどは俺も動揺した顔はしていなかったらしい
狩場は真下に降りたらすぐだった
始めからそれを見越してすぐ上空に拠点を構えたんだろう
ひとまず君の韋駄天の出番は無さそうだ
数は?
四十程でございましょうかね
ん?少ないね
増えますでしょうしね
確かに昨日もそうだった
狩ってるそばからどんどん増えたのだ
君という極上の罠に釣られてのこのこやって来た哀れな俺の同胞達
「稀血」
今夜も同じだった
昼間、俺は自己犠牲的な戦い方は止めてくれと言ったばかりだが、確かに他にこれほど有効なおびき寄せの手段もあるまい
そこで妥協策として、匂いを制御できるみたいだから、常には発しないでほしい
あとちゃんと一つ一つの攻撃から身を庇うようにしてほしい等のことを伝えた
君は露骨に面倒そうだった
わかった、もういっそ庇わなくていいから匂いだけちょっと緩めて
君を守るのは俺がやるから!
それでやっと折れてくれた
君は言えば伝わりはする子なんだ、頭がいいし俺の事も考えてくれるし
なのにどうして、そんな自虐的ともとれる戦い方を選択するのだろうか
君の抱えている俺たち羅刹への「恨み」の感情
それは果たしてどのようなものなのか
知りたいけれど、まだ聞けない
しかも聞いたところでどうしょうもないことなのかもしれなかった
此れにて、殲滅かんりょー
素っ頓狂な声が響き渡る
狩りは終わった
一応、まあ俺も君を庇えたと思う
そして昨日と同じ返り血たっぷりでベタベタの服
お風呂入ろうね
まあええ、戻りましょうかね
あ、ちょっと待って
ん?
君は可愛く首を傾げる
流石にあんな雑魚いくら倒しても俺も戦った気がしない
しかも今日は屋敷から結構近い
運動不足も良くないしねえ、竹刀ちゃん良かったらこれから俺と…
俺の発する気配に即座に応じてくれた
流石におっとりしてても強者なだけはある
心無しか君の綺麗な黄緑の瞳が光った気がする
あら、素敵なお誘い
殿方は私をえすこおとしてくださるのでございますですね
死ぬ気のえすこおとになりそうだね
いえいえ
私も少しは殿方に身を任せることといたしましょうです
じゃあ
いざ
「『勝負!』」
俺達は手合わせを始めた
とはいえ、君が今みたいに全力で手抜いててくれないとお話にもならないんだけどさ
一刻ほどそうしていた
俺達は互いに汗だくになった
では斯様なあたりで本日は
うん、そうだね
何手合いもやり取りしたけど、ほとんど君の圧勝
俺は、せいぜい君の気が抜けた時にちょっとだけ白星を拾う程度だった
まあでも
次は負けないから!
ええ、望むところでございますです
(これもある種のでえとだよね?)