さて、朝から精力満点な俺は気持ち悪いほどにっこにこだった
流石の竹刀ちゃんも「キッモー」という顔をまるで隠してなかった、というか普通に口で言ってた
とはいえ、
笑顔な理由は別に、君が朝から俺とシてくれて嬉しい!ってだけでもなくて、ようやく君の美しい神楽舞を最初から観られるってことに起因していた
何せ俺は舞には一家言ある
俺の趣味は何を隠そう、舞だ
魏術の技名にもそれは表れている
君の剣技も基本的に舞の要領だったね
まあ目を奪われるほど美しいあの剣舞は正直、君と闘う時の愉しみでもある
昨夜の手合わせもそうだった
そしてあれを初見で魅せられたらどんな敵でもまず絶対に動きを止めてしまう
君の剣筋はとにかく速くて正確
そう、正確
正確っていうのはこの場合は寸分の狂いもなく一点を穿つ的な意味合いなんだけど
別に的あてをやってるわけでもないのに、自分が君の正眼斬りの標的になったような錯覚を覚えるんだ
なんだろう、
間合いを測るだとか、見切るだとかいうのとも別
対峙させられた側に静かな圧力が掛かる
馬鹿正直に真正面を狙われてるってわかるのに、応戦しなきゃと妙な焦りを覚えさせられる
目の前の相手は途轍もない強者なのだと分からされる説得力
それが疾風の神業で迫ってくるのだからそりゃ瞬殺される
早い話が君の前に立ったら負けだと瞬間的、本能的に刻み込まれるのだ
君の強さの核はそこだった
わかっていてもなかなか勝てない
惚れた弱みとか言い訳もしたくないし、実際それは関係ない
俺は君を超えられる気がまるでしていない
おっと、今は君の舞だ
神楽舞、拍子も型も節も謡も多分自己流
いや、君の神様とやらの直伝なのかな、でもどっちにしろ俺の知ってるどれとも違う
ただ本当に美しい
神楽舞の時だけ君の服は普段の露出度よりも抑えめになる
代わりに神聖さ、厳かさが増す
さっきまで俺の下で喘いでいた君は今はそんな様子おくびにも出さずに、純真無垢な神の巫女然とした様子で舞台に立っていた
黒髪が揺れる
黒い上等な拵えの巫女服が流れる
黄緑の瞳が凛然と光る
透き通る声の謡が彩りを添え場を調える
渾然一体とはこのことだった
見惚れる、そんな表現では足りない
時間を忘れる、いや時間なんて存在すらも要らない
ただそこに君がある
なんだかそれだけで俺は信じられないものを見ているような、しかしこの上もなく見たいものを見ているような…
得難くて有難いものを心の内から感じ、俺の魂が底の底から叫びたいほど呼び覚まされているのだった
〜〜〜〜♪
終わった
終わってしまった
素晴らしい舞だった
しかし寝坊しなければきっと明日もちゃんと観られる
早起き頑張ろう
はい、しゅーりょー
そして残念なほど場違いな声でまた君自身に余韻をぶち壊され、半泣きになりたい気分の俺だった