(舞の提案は受け容れられた、じゃあ次は…)
実は俺も下心が完全に無かったわけじゃない
いやこの場合は流石に下半身の欲求とは別の欲だよ
本当に別の事だからね?竹刀ちゃん!
え、
合わせ舞?
そう
俺はそもそもなぜ君に舞の稽古を提案したかって話だ
別に君が一人で舞ってる分には今ので十分美しい
俺が余計な口出ししない方が更にのびのび舞い続けてくれるだろう
それは寧ろ大いに歓迎だ
だけど
始めて君の舞を観た時に思ったんだ
一緒にできないかなって
もう一度断っておくが俺は本当に舞が趣味だ
敢えて誰かに見せるものでもないけど
まあ例えば二十四節巍が集まって祇園様の前で何か披露しろと言われたら取り敢えず俺の舞は鉄板だった
青海波とかバリバリ得意
ただ、あれは分身使わないと無理な演目だけど
後は冬至の陸番である兄妹の妹の方の舞もド定番だ
変わったところで、額で壺割芸とかやり出す雨水の伍番殿がいたりするがそれはまあ一旦置いておく
だからお稽古って言っても俺は君の今の神楽舞を何か矯正したり新しい型を教えたりする気はサラサラない
そうじゃなくて二人で舞えるように練習したいだけなのだ
しかも別に誰かに見せるつもりもないしね
あー強いて言うなら氷結の継子くらい?
それはそれでいないのと変わらないしね
なんて純粋に舞を学びたいだろう君の気持ちを利用するようでちょっと心が痛むけど、でも二人で舞う練習してるうちに当然見えるものもあるんだろうしそれはそれで悪くない提案じゃないかな、などと思っていたところ
君は得心したように
なるほど
ちょっと驚きましたですが其れは其れで
楽しそうかも、しれませんですね?
君は相変わらずの無表情で、でもその奥でワクワクしてるのがわかった
(良かった!ノッてくれた)
俺も始めて舞型を覚え始めたばかりの少年のようにワクワクしているのだった
しかし、婉曲な言い回しせずに最初から左様に仰れば良かったものを
何の話?
だってきっとあなたは淋しかったのでございましょうです
舞って一人ですものね、基本は
言われて俺は衝撃だった
趣味の舞を舞ってたのに淋しかった、俺が?ずっと?
実は本当にそうだったのかもしれない
観客がいない
一人で舞っても披露する相手はいない
もちろん俺と合わせて俺が認めるほどの腕前で一緒に舞ってくれる相手なんていない
陸番の妹は近しいが羅刹同士もなんか違う
君の舞を観た時に真っ先に思った
一緒にやりたいと思った気持ち、今日まで言えずに身悶えた気持ち、断られたらどうしようという焦燥
全部淋しさの裏返しだったのだとしたら…
じゃあ竹刀ちゃんは一人で舞ってて淋しかったの?
神様に捧げる意味合いで舞う分には左様なこと考える隙はないですが
でも確かに、終わった後の独特の虚しさには毎日襲われてたですね
(ああ、だから…)
それを打ち消すように君は全部の余韻を自らぶち壊していたのかもしれないな
虚しさに襲われるくらいならさっさと自身で蹴りをつけたい気持ちなんだとしたら納得がいく
あれ、同じことしてる羅刹狩りもひょっとして終わった後に何か嫌な気分を振り払いたかったってことなの?
あなた?一体どうし
俺は君を抱き締めた
ちょっあのまだお稽古始まっても居ないのでございますですが
天邪鬼のうるさい口は塞ぐに限る
いや、だからあ
この後ちゃんと合わせ舞の練習は始めた
何せ君も俺もとっても楽しかったんだから、淋しさなんて微塵も感じることはなかった