外では雨が降り続いていた
俺は君にとある事を思い切って頼んでみた
ていうかその話を聞いた時から赦せなかったからだ
どうしても
拒まれることも覚悟の上だった
そしたら君はあろうことか
左様なことでございましたですか
そもそも始めから其れも契約に含まれていると思っておりましたですのに
というか、あなたが私を左様になさらないがゆえ、寧ろおかしいなぁとは思っておりました次第でございますのですが
え?いいの
いいも何も、始めから言ったはずでございますですが
お気の済むまま食われたり抱かれたりしてやりますです、と
「食われる」って最初から明言してるじゃないですか
君は、今夜の夕げの献立でも語るかのように、何でもないこととして言葉を続ける
あなたは羅刹さんなのですゆえ、そりゃ稀血の私は普通に食べたいでしょうに
私は不死身なのです
いずこをどれだけ食まれようとも復活するのでございますです
じゃあ、お言葉に甘えて…
俺は喉の奥で、じっとりと生唾を飲み込んだ
すると、君は少しだけ困ったように眉をひそめる
あ、
な、何?
傷口舐めるのだけは無しでございますですよ?
ほんのりと頬を桜色にはにかませて、君はそう釘を刺した
――――その後、君のすべてを骨の髄まで美味しくいただいたのは言うまでもない
君と来たら鎖骨も肋も脇腹も膝裏もどこの肉を食んでも蜜のように甘くて蕩ける
すごく、すごく美味しい
流石は最上の稀血なだけある
普通の人間では到底あり得ない
五感を狂わすほどの香しさと甘美さ
この世にこれほど美味な存在していたなんて奇跡のようだ
だからこそ、赦せない
(君を毎日毎日、玩具のように味わっていた他の羅刹がいただなんて!)
よってたかって三名もの同胞が君を毎日食らっては新しく生み出されるその極上の肉を我が物顔で独占していただなんて
(だめだよ、竹刀ちゃん)
君は頭からつま先まで全部全部、俺のものだ
俺だけの女の子だ
他の誰にだってたった血の一滴すら譲らないよ
ただ、一つだけ欠点がある
頸動脈くらいならまだ可愛いものだが、心臓をはじめとする各内臓や脳、あるいは顔面、いわゆる人体の急所を食らうと君は一時的に仮死状態になってしまう
口元が無くなれば、俺を蕩けさせて止まない可愛い悲鳴も聞こえ無くなってしまう
一拍ほどの間を置いてから、君の瞳と同じ鮮やかな黄緑の光を放ちながら一気に再生はしてくれる
けれど、それが完了するまでの僅かな時間、俺は一時的に俺の世界から「君」という愛おしい存在を失ってしまうことになる
それが、どうしょうもなく堪え難い
そういう意味ではやっぱり普通に肉として食べるよりも熱くまぐわう方が俺は好きだった
君の愛らしい反応のすべてを俺の目で、耳で、舌で、鼻で、皮膚のすべてで、ありありと感じられるからだ
情事の最中、君の身体が小さくピクピクと震える度、「ああ、イッたんだね、気持ちよかった?」と愛おしさが昂る
君の控えめだけれど、熱い吐息が溢れるのがとても、とても愉しい
君は贔屓目を完全に捨てて、どれほど厳しい目で見定めても、世界一の美少女だといって相違ない
だからこそ、そんな極上の女の子を俺が思うがままに蹂躙しているのだと自覚するだけで、下半身が凶暴に反応してしまう
ああ、俺の竹刀ちゃん
君の何もかもは俺のものだ
俺しか触れちゃいけないし、知ってもいけない
そして君も俺以外の誰も知っちゃいけないんだ
君の知らない快楽は、全部俺が教えてあげる
初めて会った日に君が言っていた、「純愛」とは流石に形が違うのだろうけれど
でも、ここにあるのは間違いなく、狂おしいほどの確かな愛だ
だって本当は、君だって俺の事が好きなくせに
持ち前の意地っ張りと気高い矜持のせいで、それを素直に言葉にできないだけなんだから
やっぱり君は俺の可愛い、可愛い竹刀ちゃんだね
愛してる
相変わらず、すべての行為が終わると疲れたように滾々と眠る君のまだ熱の灯る唇に、俺はもう一度だけ、口づけを落とした