君がトラウマを告白してくれてから数日
あれから時々だけど、君は少しだけ不器用ながら笑ってくれるようになった
良いことだ
やっぱり初めて会った時から思ってた通り、君の笑顔はとても良い
凄く可愛いんだ
俺は相手が苦痛に悶えてる顔ってのも魅力的に感じる質なんだけどさ
君は特別だ
やっぱりできるだけいつでも笑っていてほしい
それだけで俺は嬉しいって思えるから
君は文句言いつつもなんだかんだ毎日俺といてくれる
君の神様がいるっていう奥羽の鳥土里神社も紹介してもらえた
端から見たらきっと阿呆みたいなやり取りの連続だろうけどとても楽しい
こういうのが心からの幸せなんだなって思える
そうそうこんな事があったね
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あの日の竹刀ちゃんの狩場は海の近くだった
話には聞いていた、白い砂浜と君の瞳にも少し似ている緑の色彩を映す琉球の海
潮騒が心地よく耳を打ち、吹き抜ける風は真冬でもやや温かく、俺の頬を優しく撫ぜた
俺は元々、人間の頃から外出ってほとんどしたことはなくて羅刹になってもあまり遠出はしなかった
だから、君に連れられ(置いてかれたくなかったから強引についてっただけだけど)生まれて初めて海を見た
夜の羅刹狩りまではまだ時間があったから
俺が一方的に二人で競争と称して、適当に海からそれぞれが宝物だとか珍しそうと思う物見つけて品評会しようって言ったんだよね
まあ俺、金槌だから当然君の術にお世話になったけどさ
でも、潜った海は君と一緒にいなくてもとても綺麗で、君と同じ目の色してる部分もあって…
やっぱり俺にとっての宝物ってどうしても君と同じ色になっちゃう
見つけた黄緑色の石
(これで優勝!)
つい子どもみたいに浮かれた
集合場所の入江に戻っても、君ときたらなかなか帰ってこなかった
迷子かな?頭はいいのに抜けてるもんね
やっと影が見えたと思ったらなんか海藻や珊瑚がしこたま絡まってるし
どこの海底林行っちゃったのかな?
すみませんです、なんか宝物?ってよく思いつかずあれよあれよと彷徨ってるうちに…
あうあう
バツが悪そうな君に思わず笑みがこぼれた
ふふっはいはい、いいよ
相変わらず天然だなぁ竹刀ちゃんは
そう言って俺は笑った
君は相変わらず無表情ででもどこかむくれて
天然じゃないです!
またバカにしてるです??
してないしてない♪
いつものやり取り
絶対してるですー
でもまあ、遅くなって其れは其の
申し訳ございませんでしたです
頭を下げる君
良いってば
で、お宝は?
あ、其うでした、えーと…
お目当てが出るまで身体のあちらこちらをまさぐり始めた
またどこにしまったか忘れてるなあ、これは
空間術の名手なのはわかるんだけどどこでも小物入れにするのやめようよ
衣服の袖に無いと見るや最終的にいつも通り胸元ごそごそしてるし…
爆乳なのは知ってるけどなんでも胸元に異空間作って閉まっておく癖は、やめようよ
無関係なもの色々出てたけど、ようやく探り当てたらしい
(はあ、やっぱ天ね…)
心の中だけで何も言ってないのに鉄拳制裁が飛んできた
水中なのに器用だね
俺いつもぶっ飛ばされるね
と、とにかく
勝負でございましたですね?
うん
君は一つ咳払いして
じゃあ、僭越ながら私から
あ、待って
せーので開けようよ
えー子どもさん染みていらっしゃいませんです?
眉を顰めて抗議してくる
君にだけは言われたくないなあ
はあ、じゃあ、わかりましたです
せーの(せーの)
あ!? あれれ?
二人とも互いのそれぞれの特徴的な目をした石をその手のひらに持っていた
へー「虹色」の石かあ
俺の目みたいだね
何何、俺の事意識しちゃったの?
竹刀ちゃんたら可愛いなあ♪
君はすかさず
ち、違いますです!!
遠洋まで行ったら思った以上に何もなくて!
其れでたまたま光ってるものあって手に取ったら、此れで…
(しどろもどろで目が泳いでるよ?)
いや、だから
左様な視線を向けないでくださいませです!
断じてあなたの目の色みたいだなとか思ってませんですゆええ!!
俺は君の色、君は俺の色
それぞれの石ってなんか特別みたいだね
はあ?
左様な感傷に浸るお年頃でもないでしょうに
あなたもやっぱり変でございますです!
っていうか率直に申しまして子供っぽい!
はいはい
俺より輪を掛けて実年齢が子どもの君が言っても意味ないよ
つい煽っちゃうと、君はまたムキになる
またバカにして〜
してないってば
まあそりゃ君は正真正銘、数え十一歳の子どもだけどね?
むう、其れ言われたらぐうの音も出ませんです
じゃあ俺の勝ち
其の理屈はまかり通りませんです
じゃあ仕方ないなあ、似たもの持ってきたんだし、品評会の方は引き分けにしてあげる
「方は」ってなんか他意を感じるです
(そりゃ、じゃれ合いの方なら俺が負ける理由がないものね?)
まあまあ、それでね
ねえ、生き字引の竹刀ちゃん
俺装飾品とかはまるで疎いけどさあ
折角だし、これ俺達の記念品にしない?
うーん、記念品…?装飾品…?
そうそう、やっぱりそういうのは君の方が、「一応」、女の子ではあるんだし詳しいでしょう?
はいです、「一応」は
とにかく何らか加工すれば良いのでございますですね?
うん
でも、何がいいだろうね
ぱっと思いつくのは、腕輪とか髪飾りとか
首輪とか
刀とか
鎖鎌
なんで物騒な方行くの?
君はキョトンとした顔をしている
え?
あなたを殺す品にするのが丸いおさまり方かと
ほら、心無し綺麗な石さん達も嬉しそうでございますです
あのねえ…
とにかく君の無駄にすごい知識量の頭で考えてよ
何か二人でお揃いで身につけられる物ないかな?
お得意の西洋知識のとかでもいいから
西洋の…
君はやっと真面目に首を捻り始めてくれた
はっ!
いや、ああ、いや、此れは、其の、あの、でも、
瞳を瞬かせて思考の海に一人で沈み始めた
いや、流石に、やっぱり
えと、えーと…
何何?なんか思いついたの?
…………えーと
西洋では
えんげえじりんぐなる習慣がございまして
ふーん、えんげ…
それ何?
契約した二人が互いに指輪を嵌めますです
なるほど、まるで俺達みたいだね
君は何でもないことのように俺に説明を続ける
左様にございますです
あなたは私を食べる
其の代わり、他の方は絶対食べない
其れこそが私達の契約
その証ってわけだね
今更ではあるけども
だったら取り敢えず指輪にしようか?
はいっ!わかりましたです!
ごく普通の装飾で良いでございますですよねっ!!
さっさと加工加工っ!!!
君は何か焦ってる様子だったが、まあ天然な子だしいつものことと思って何も気にしなかった
なんか小声で、「なるべく華美でなく、其れでいて決して西洋の方に誤解されるような物でなく…」とかブツブツ言ってるけど俺はなんだかわからない
石二つを手のひらに乗せると、それが宙に浮かび上がり、ゆっくりと回転を始めた
しかし
ピカッ
その時鋭い紫色の光が走り
思わずといった様子で、目を瞑る君
その後におそるおそる目を開け、
いつの間にか勝手に完成していた指輪の内側をしげしげと覗いて絶叫した
あれ…文字…が…
え!?
なにゆえ斯様な!?
此れじゃ…まんまえんげえじりんぐじゃないです!!
一体なにゆえーーーー!!??
竹刀ちゃん
どうかした?
様子が普通じゃないので不審に思って尋ねる
いや、なんか…
えーと
はい、加工術失敗したみたいで…
恥ずかしいですゆえ捨てましょうです
君は本当にそのまま白い砂浜に捨ててしまいそうだったので、俺は君を引き留める
えーもったいないでしょ
それは普通に嫌だよ!
いや、でも…
なんかあるの?
君は真っ赤になって
ななな、別になんにもないです
ただあの、せめてですね、嵌める指は
右手の薬指にしようかなぁとか思った次第でしてです…
なんか指輪できてからずっとたじろいでいるなあ
えんげ…って何の指とかあるの?
あー
一応西洋では正式には薬指にする習わしだとか…
…って、はっ
つい余計に喋ってしまいましたですっ
別に余計かどうかなんて俺には全くわからなかったが、取り敢えず話は合わせる
へーそうなんだあ
じゃあ俺は右手は利き腕だから左手の薬指にしようっと
流石に竹刀ちゃんは物知りだなぁ
頭をポンポン撫でる
またバカに…
してないってば★
じゃあせっかくだから互いに逆の色見つけた記念ってことでお互いに指輪嵌め合わない?
君は目を白黒させて一瞬固まった
はあ!?
ななな、なにゆえ…?
え、そうしてもいいかなあと思って
それとも西洋の方式だとなんかまずいの?
俺、そういう習慣とかまるで知らないし
いや左様な作法がだめとか聞いたことはございませんですががが
なんか歯切れ悪いなぁ
まあ良いや
とにかく竹刀ちゃんは右なんだったね
じゃあ右手出して
俺は左手出すから
え、えええ…
なんでそんなに嫌そうなの…
君は俯いてため息を一つ
無知は罪だなとか思った次第
そりゃ君の生き字引に俺が敵うはずないし
良いでしょとにかく、嵌めちゃおうよ
言うや俺は君の右手を取った
なんか凄く真っ赤だけど、相変わらず照れ屋さんなんだなあ
(いいや、ほい出来上がり)
君の右手の薬指にしっかり収まる虹色の宝石のついた指輪はよく馴染んでそれを見てると俺も不思議と気分が高揚してきた
良かった、ぴったりだ
流石によくできた術だね
暫く固まったように動かない君
本当なんなんだろうね?
ねえ、早く俺のも嵌めてくれない?
は、はい!
弾かれたように君は俺に返事をする
相変わらず顔が赤い、いや俺がいつも揶揄って真っ赤になる時よりも数段赤いような?
しかも睨んでくる…
君は胸に手を当て深呼吸してまるで何かの決意でもしたかのように、俺が嵌めてあげたばかりの指輪をちらりと見た
うん、もう全然大丈夫でございますです!
さあて!次は私の番
えと、えーと、は、嵌めますです、よ?
うん何の確認?
さっさとしてよ、待ってるんだからさあ
は、はい、ただいまー
君のぎこちない動きで嵌まった、君の瞳と同じ色をした指輪
其れを眺めて君は何か考えていたようだったけれど、急に俺に人差し指を突きつけてきた
言っておきますですがっ!
斯くは単なる契約の確認の品で!
其れ以外は何の意味も持たない!!
良いですねっ!
本日も今後も一切合切何の意味もゆかりもありはしませんですゆえっ!!
いつか然程は遠くなき未来にあなたを殺すのは私でございますです
其れをば、ゆめお忘れなきよう…
なんか顔真っ赤で勝ち誇る君が逆に負け犬のように見えて妙に印象に残った
多分、俺がまた知らないうちに君に勝利したんだろうな