ある日、うちに俺の専属の仕立て屋が来ていた
俺はいつもの袈裟や着物を仕立ててもらう約束を取り付けたが、時間がだいぶ余ってしまった
君はもうすっかり、外へと出掛けてしまった後だったから、俺はかねてより温めていた計画を遂行することにした
首尾は上々
仕立て屋は、快く子ども用の最上の巫女服を仕立ててくれると約束してくれた
上等な香を焚きしめて、仕上げてくれるのだそうだ
問題は、採寸だった
とはいえ、眠らせて測る方法なら、以前シノハユちゃんの時に心得ている
(あの時は結局、着てくれなかったんだ、今回の竹刀ちゃんにも同じように断られたら流石にちょっと凹むなあ…)
まあ、とにかく
君を眠らせる方法なら、すぐに思いつく、そして確実に成功するやり方があった
というわけで、実はもう、採寸自体は既に実行済みだったりする
君は情事が終われば、必ずひどく疲れたように深い眠りに落ちてしまうから、その隙に測ればいいだけだ
以前、シノハユちゃんに採寸をさせた時は、服を着たままで氷人形たちにやらせたけれど、全裸となると、流石に俺がやるしかない
いくら俺の分身相手とはいえ、君の裸を見せるなんて絶対に嫌なんだからね
眠る君を、俺は普段あまりまじまじとは眺めないので、なんだか新鮮だった
口を開けば俺への文句しか言わないし、俺が好きかと問えばどこまでも天邪鬼
そんな君も、眠っている時ばかりは全ての精気を失ったかのように不気味なほど静かで、安らかな寝息だけが、今ここに君が存在している証明となっていた
こうして測ってみると、本当につくづく小さな身体だなと思う
同じ年頃の子どもでも、これほど小さくはないのではなかろうか
普段は元気いっぱいというか、よく俺をぶっ飛ばすくらい凶暴だから…
あまり気にもならないけれど、こうして見ると君は透き通るように白くて、病弱な深窓の令嬢だと言われても信じてしまいそうだ
少しは陽の当たる生活をしていれば、もう少し健康的な赤みが差してもいいと思うのだけれど、雪のようにどこまでも白い…
まあ、陽に当たらず白いのは、羅刹である俺も同じことだけどね
羅刹には真っ黒いのもいるけれど、俺のように白いのもいる
俺は後者だ、いや、最近は君に付いて行って外に出掛けることも多いから、俺の肌も少しは人間らしい色合いになっているのだろうか
自分でもよくわからないけれど、たかだか十数日程度でそれはおかしいかな
さて、採寸もだいぶ進んだ
胸だけが不釣り合いにでっかいが、まあ、これは人外生物特有の身体の造りか何かなのだろうし
そこもとりあえず測ってみたけれど、うん、やっぱり身の丈に対して規格外の胸囲だ
(重くないのかな、これ…)
こんな極端な数値をそのまま仕立て屋に申告したところで、タチの悪い冗談としか思われなさそうだ
仕方ない、誤魔化すためにも、今度写真の一枚でも撮らせておくとしようか
でっかいことだけは伝わるだろう
ああ、でも君の顔を知る人間は少ない方がいいのも確かか
なら、適当に顔だけ塗りつぶして胸元だけ強調した写真にしておくか
…なんか、とっても妖艶でいかがわしい絵面になりそうだけど大丈夫だよね?
だったら、そうだ
ついでに、記念に二人で並んで撮ったらいいかもしれない
勿論、君には嫌がっても、これでもかと笑顔になってもらったやつをね
うん、そうすれば俺の宝物がまたひとつ増えるね
ふふ、楽しみ♪
――その後、仕立て上がった巫女服を渡した時、君には勝手に採寸したことは元より、「趣味に合わない服を勝手に作ったこと」を大層怒られた
良いじゃない
俺だって、君から服をもらったこと、あるんだしさ
…正確には、服じゃなくて「夜着」だけどね
君はもう、そんなこと遠い記憶の彼方に忘れちゃっているのだろうか
もしそうだとしたら、ちょっと悲しいな…
あの夜着は、君の、不器用な俺への優しさに触れた、俺にとって初めての大切な思い出だったのにな