竹刀ちゃんと狩衣くん   作:星が好き

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20回目-81 二人の冬の歳時記―手の温度と子の名の話

俺が小腹が空いたと言うと、君は自らの手の甲を差し出し、俺の口元に噛ませてきた反射的に、君のその甘い皮膚を味わう

 

手首を引きちぎるほど食らいついてはいないから、君も流石に痛みは大して感じていないようだった

戯れだろうが、俺に白い手首を預けながら、君はこんなことを言ってきた。

 

  ご存知でございましょうかです

  手が冷たい方は心が温かいそうでございますですよ

  …まあ、あなたには全く以て当てはまりませんですがね

  ねえ、冷たい手をお持ちの殿方さん

 

俺は十分、その血と肉を味わったので、竹刀ちゃんの手首を口から外す

そして代わりに、俺の術でその傷を綺麗に治癒しておく

 

  ふーん

  じゃあ、手が温かい君は、俺より優しくないのかな?

  治療している間、しっかりと握りしめていた君の体温を感じながらそう言ってみた

 

  さあ?でも確実に言えるのは、あなたのような人殺しの羅刹さんに、優しくする義理など微塵もないことでございますですね

  

  酷いなあ…

  

  事実でございますですし

 

そうは言うけれど、今、君がこうして大人しく俺に手当てされているのは、君が俺に優しさを見せてくれたからだろうに

相変わらずの天邪鬼っぷりだった

 

「そんな殺生なー」と心にもない返答をして、俺は暫し考えてから、君に提案してみる

 

  じゃあさ

  俺と君の体温が混ざれば、丁度いい温度ってことだよね?

  

  左様かもしれませんが…って、また下ネタなんじゃ

  

  違う違う

  って、あー…いや

  違わない、かもだけど…

  

  却下

  

  えー

  

  あなた今、状況を分かって仰ってますです?

  次の講義まで、もう間もなくの時でございますですよ!

  

  竹刀ちゃんは今日も可愛いなあ

  

  はあ、うざいのでございますです…

  話、全然聞いてくれないじゃないですか…

 

がっくりと項垂れる君

君は俺をいつも邪険にする

でも、そんなところも可愛いなと思う俺は、我ながらベタ惚れなのだった

自分でもどうかと思うが、好きなものは好きなのだから仕方がない

 

  ねえ

  俺たちの、子どもが産まれたらさ

  

俺は唐突に、そう切り出した

 

君は一瞬だけ、戸惑ったような表情を浮かべたけれど、それをすぐに消して、いつもの無表情へと戻る

 

  はあ? ありえないのでございますが、です

  さっさと斯く会話、切り上げてもよろしいでございましょうかです?

  

  まあまあ、そう言わずにさ

  ねえねえ、竹刀ちゃんはどんな名前がいいと思う?

  

  いや、だから、次の授業――

 

そう言って俺を睨んでいた君は、やがて諦めたように大きなため息を吐いた

 

  ああ、もういいです

  其れで何なんです? 名前って

  

(やっと向き合ってくれたね、ありがとう)

 

  うん!それでね…

  君は俺の可愛い小鳥ちゃんだからさあ、それに因んだものがいいと思うんだけど、どう?

  

  なにゆえか、また私を小動物扱い…?

  最早、腹しか立たないというか、やっぱりいつも通り私を馬鹿にしているだけでございますよね!

  話を聞いてやったというのに、斯く仕打ちは何事でございますですかー!

 

 

――で、またお約束のように、お空へとぶっ飛ばされてしまった。 別に馬鹿になんてしていないのになあ。

 

  ほら、俺たちの体温が混ざり合った子が生まれたら、きっと丁度いい体温もった温もりある子になるなあって、さっき本気で思ったんだよ

  それでねえ、

  もし、女の子だったら――

 

なあんて、その名前が呼ばれることは、きっと生涯一度たりとも無いのだろうね

これは単なる俺の空想妄想…そしてあり得るはずなき、理想の未来

 

俺はあの時、本当は、そう思っていたんだ

 

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