其れから、めくるめく日々
昼は狩場の下見と、見聞を広めるための物見遊山
あなたがお仕事の合間を縫って着いてくることも、珍しく無かった
あなたがいれば、真剣な下調べも実際はただのお出掛けのようなものだ
子どもの頃からほとんど遠出をしたことがないらしく、何かにつけはしゃぐあなたを制する私は、まるで子どもさんをあやす親御さん同然だった
私は今度こそ物思いから浮上し、ぬかるむ湿地の中に直立して目を瞑り、気を研ぎ澄ませる
ほんの一瞬、私の持つ稀血の臭いを解き放ち、すぐに吊られて湧き出てきた羅刹さん方を、また十数体ほど狩るのだった
暗がりさえあれば、昼間であっても羅刹さんは現れる
(あなたには、「一緒に倒したかったのに」と怒られてしてしまうかもしれませんですね、狩衣さん)
脳裏に浮かぶあなたの姿に、「でも、」と私はぽつりと漏らす
もう、あと少しで、本当の本当に終わりなのでございますですよ、あなた…
鼻についた羅刹さんたちの死臭に、私の呟きは混じって消えた
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越後の、小さなかまくらの内部では、日々黄緑の光が降り注いでは、小鳥を象った雪像に吸い込まれて消えている
時折、眩いほどに煌めく光もあったが、それもまた雪像の中にゆっくりと収まり、消えていった
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昼間の単独行動のことなどおくびにも出さず、私は夜、あなたと共に狩りをした
またもや手合わせをしてから、琉堂院のあるお屋敷へと帰る
「帰る」などと、自然に思ってしまっていた
流石に一ヶ月近くも過ごしているから、私にとっても「家」であるような感覚を持ち始めてしまっている
(此れではいけませんですね……)
たっぷりと温かい湯船に浸かり、あなたに好き勝手身体をまさぐられるが、「はいはい、いつものこと」といった調子で適当に流す
結局、これまで穏やかに湯船に浸かれたことなど一度もない
たまには放っておいてもらえないかと感じるが、あなたの底なしの性欲を鑑みれば無理からぬことだと、さっさと諦める
畢竟、私は面倒くさがりなのだ
あなたに触れられるのは、もはや何度目だろうか
とうに一万回に及ぶほど致した気しかしない
よく飽きないものだなと感心すらする
認めよう
あなたの底なしの情欲には、確かに私程度の人外の化け物でちょうど収まりが良いのだろう
湯上がり後も変わらず、お布団で行為の再開だ
たまには気を利かせてやるか、と私は珍しく、あなたに自分からキスをくれてやった
思えば、生娘だった頃の自分では考えられない大胆さだ
いや、ついひと月ほど前のことなのだが、感覚的には途方もなく遠い過去のように思える
(さようなら、初だった私よ…)
最近では、顔が真っ赤になることも珍しくなってきた気すらする
さてはて、あなたは変わった提案をしてきた
今夜は私が珍しく乗り気のようだから、「今までやっていなかったこと」をしてみたいのだそうだ
私がいかなることかと尋ねるが、何も考えていなかったらしい
となれば、あなた曰く「生き字引」であるらしい私の知識の出番、ということなのだろう
(いや、知らんですし……)
褥の手練手管を、さも熟練者のように学んでいるとか、妙な勘違いはしないでいただきたい
左様な分野はくノ一さんの子孫とかに頼るべきものでして…
と一応反抗してみたが、当然納得などされはしない。
はあ、と私は深いため息を吐いて
「仕方ない」と、此れまではしてこなかった、私なりの最大限の「いたずら」をお見舞いしてやったのだ
私が身体から眩い黄緑の光を放つと、あなたは呆気に取られたようで、なかなかの「見る阿呆」の完成だった
ならば、次は私の好きなように踊ってもらうことにしよう
私の中の力を、あなたに一部移してみたのだ
当然、最初は拒否反応が出るらしく、あなたが悶絶する光景が見えた
(ヨシ、いたずら成功!)
たまにはやり込められる私の気持ちも、思い知ったら良いのだ、
斯様な、何があっても陽気な手合いは
あなたの慌てる様子がおかしくて、私は指を差して笑ってしまった
これほど笑ったのは、本当に久しぶりかもしれない
なかなか愉快な夜だった
しかし、転んでもただでは起きぬとは、きっとあなたのこと
暫くして落ち着いてくると、どうやら私が送り込んだ力が少しは馴染んできたらしい
殊勝なお身体なことだ
実質、毒そのものであってもおかしくはないのだが
(…まあ良いか、此の際、どうでも)
其の後、仕返しとばかりにあなたは思いっきり私をお布団に引き倒し、覆い被さってきた
竹刀ちゃん、よくわかったよ
今夜は随分と刺激をお求めのようだね?
其の時は、ほんの少しだけ私は怯えた顔をしたかもしれない
――などという「茶番」があったのは、昨晩のこと
今夜の狩りの準備は、すっかり整っていた