竹刀ちゃんと狩衣くん   作:星が好き

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20回目-87 まだ

俺が琉堂院に戻されて、慌てて君へと連絡を取り呼び出してもらった

 

場所は言っていた通り、東京府らしい

人払いしていなければ結構人通りがありそうな場所だった

俺も歩いた事があるような気がする

 

(丸ごと人が消えると戦闘しやすい開けた場所に早変わりってわけだね)

 

向こうに打ち捨てられて横倒しになった馬車が見える

御者も乗客もついでに馬も、軒並み竹刀ちゃんの術に巻き込まれて退散させられたんだろうな

 

(ご愁傷様だねえ)

 

俺は見ず知らずの人間達に心にもない憐れみを送った

 

今夜は結構、冬にしては温かい日だった

月がなかなか美しい、真っ白な満月だ

 

もう少し前なら赤みを差した色合いだったろうに祇園様の呼び出しがなければなあ

ちょっと二人で月見くらいしても良かったよね

 

ほんのついさっきまでは人がいたのだろう

人の肉の臭いが残香となって漂っていた

 

  ただいま、竹刀ちゃん!

  待っててくれたんだね、良かったあ

 

  ええ、まあ、どうせご近所でございますですしね、今夜の狩場は

  急いでも仕方ないかな、と

 

相変わらず返事は淡白なものだ

 

  良かった

  一緒にやろうね

 

俺は満面の笑みで提案する

 

  はい、承知いたしましたです

 

また素っ気なく事務的な返答だった

 

さて、君が稀血の臭いをばら撒くと…

 

(おやおや、湧いてきたねえ)

 

今夜もたくさん狩れそうだ

 

祇園様、ごめんねえ

あなた様が仰ってた「数十万の軍勢」って絶対もう見る影もないんだよね

 

まあ、どうでもいいけれど

俺が羅刹側陣営にいることなんて、もはや肩書だけだし

かと言って竹刀ちゃんさえいなければ羅刹狩りもしてなかったろうけどさ

 

血飛沫が舞う

俺も君も華麗に舞う

毎朝の空き時間でちょっと合わせ舞を練習してるからだろうか

俺と竹刀ちゃんの息はぴったりだった

 

しかし、今夜の羅刹は数が多いねえ

結構狩り続けているし、月も最初の位置から動いている

もしかして五百体どころじゃないかも

 

流石の竹刀ちゃんも息が切れているみたいだ

若干、動きも鈍めかなあ、珍しい事もあるものだ

 

対して俺の方はまだまだ元気だった

 

  竹刀ちゃん大丈夫?

  

念のため声を掛けてみたが、

 

  全然大丈夫でございますです

  其れよりも前方注意!でございますです

 

  はいはーいっと

  

俺は適当に頷いて、今しがた注意を受けたそれを早速狩った

今夜は頗る身体の調子がいい

 

取り敢えず君のことを、と振り返るがいつも通り、無双中だ

 

(心配なんて全く要らないみたいだね、良かった良かった)

 

それからまた四半刻ほど大立ち回りを繰り広げ、やっと辺りが静かになった

俺達が葬った羅刹の死骸も全部消滅した

今夜はここまでらしい

 

俺は竹刀ちゃんの肩を叩いた

いつも狩りの終わりといえば、竹刀ちゃんによる「今夜の狩りしゅーりょー」といった、抑揚の無い気の抜ける完了宣言が入るからだ

 

今夜はそれがまだ出てこない

忘れてるのかな?と思って尋ねてみた

 

  竹刀ちゃん、いつもの終了宣言は?

 

  …確かに、周囲は静かになったですね

 

  うん、だから宣げ…

 

  「まだ」でございますですよ

 

  うん?

 

  「まだ」いるのでございますですよ

  倒すべき羅刹さんは

 

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