(いや、
斯様なまでに貶められて黙って聞いているだけとか
あり得ないです…!)
私は避けるに徹するだけだった己が身を翻して
相手に人差し指を突き付けた
フッザッけるなです!!!
黙って聞いてればなんです?
私を陵辱するだとか下半身欲求丸出しの下卑た発想!
ちょっと純愛しているのかと思いきや腹の立つ軟派な態度!
しかし彼女さんへの愛は本物なのではと思って差し上げておりましたのに
まだうら若き乙女である私に対するイカれた卑猥な誹謗中傷の数々!!
ぶっちゃけますとあなたが左様な変態さんな殿方ゆえに彼女さんからも愛想つかされてるに違いございませんのです!!!
言うや私は、
上には
上がいることを知るです!!
苦戦しているように見せていた演技はかなぐり捨て
一歩で肉薄
二刀にて斬り裂いた
数舜後——
そこには勝者と敗者のみがあった
一体何が起こったのだろうか?
周囲に氷が飛び散る空間で血反吐を吐き続ける竹刀は変わらずいる
しかし先ほどとは異なる物が一つ
肉塊だ
そうとしか言えまい
本来人体と変わりない構造をしていたであろう存在から四肢が消え胴も頸から繋がる肩口までの部位を残し削ぎ落されている
頭と頸しかない木偶人形のようだった
それは先ほどまでは羅刹と名乗っていた存在の成れの果て
羅刹は狩人の持つ特殊な刀で頸を斬られると霧散して消滅する
頸と頭が残っているため消えてはいないが一目見て虫の息だ
しかし羅刹とはそんな脆弱な存在ではない
唯一の急所たる頸が無事であればやがて身体の再生が始まるのだ
但し、今回それは非常にゆっくりとしたもののようだ
何が起きたのかわからず目を白黒させている羅刹を見るがまだ再生は始まっていない
竹刀はもう興味を無くしたのか先ほどの攻防などどこへやら特に気にした風もなく二刀を胸元へ仕舞った
代わりに別のものを取り出す
先ほどの氷人形だ
ごほっ
申し訳ございませんです
私が不甲斐ないばかりにご迷惑をばお掛けいたしましてです
恐れ入りますがお怪我はございませんでしょうかです…?
ごほっ
大丈夫だよお
ごめんね、せっかく恩返しできると思ったのに俺のせいでなんか咳出ちゃってて
竹刀のお姉ちゃんこそ大丈夫?
ぜんっぜん!
大丈夫でございますです!
ごほっ
斯様な風邪のようなものきっと温かくして寝たら治りますです!!
無理しないでね?
無理など何にも!
私の取柄は丈夫なことでございますですゆえ
ほら左様なこと言ってる間にだんだん治って…
ごほっ
多分治ってないから早く寝ようね?お姉ちゃん
ええ、左様でございますですね…
人探しが空振りに終わったばかりかとんでもない凶兆くじ引き当てたみたいですし
大人しく退散いたしましょうです
なんにせよ、あなたが大事ないようでほっといたしましたです
大好きな私の可愛い子さん!
うん!ありがとうね!
俺を全力で守ってくれて
俺も竹刀のお姉ちゃん大好き!!
氷人形は竹刀の頬へ口づけした
まあ!
ごほっ
いっちょ前にキザな振る舞いをば…
いえ、でもあなたは私が責任もって今後も育てますですゆえあんまりどこぞの軟派な殿方みたくなられてもいけませんですし
今後も品行方正に厳しく指導!して参りますですよ!
着いてきてくださいませです!!
ごほっ
うん!改めて今後ともよろしくね!竹刀のお姉ちゃん!
もちろんでございますですよ!
私の可愛い子さん!
ごほっ
人形と竹刀は固く抱きしめあい新たな絆で強く結ばれた
しかし、これは果たして敵前でするべきやり取りなのかと疑問は沸くがそこに突っ込める者は今誰もいなかった
そもそも彼女の様子からは相手をものの数として勘定することすらしていなかったのではないのかとすら思える
つまるところ鳥土里竹刀は化け物であった
だが、流石に時間経過で回復する敵を放置してよいのであろうか…?