竹刀ちゃんと狩衣くん   作:星が好き

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20回目-91 竹刀の告白-1

狩衣は、暫し気を失っていたようだった

 

(ん、あれ、俺今何して…)

 

目を開けた俺の目に最初に映ったのは

 

滴る鮮血

白い肌

黒い巫女服

生気を失って半分だけ見開かれた黄緑の瞳

 

  竹刀ちゃん!!

 

俺は弾かれたように叫んだ

 

  なんで、俺君の腹に穴開けて…

  君を…

  殺した…!?

 

腕を引き抜いて君を抱える

 

  竹刀ちゃん!

  嘘だろ

  ねえ、こんなんで強い君が終わりなわけはないよね?

  何か言っておくれよ!

 

竹刀ちゃんは力なく口を開こうとして言葉が出ないようだった

俺は君の声を聞こうとして耳を口元に近づけた

 

ようやく聞き取れた弱々しい声は

 

  …あ、なた、の、

  せい、じゃ、ない、です

  ゆえ、お気に、

  なさ、らず

 

腹に風穴を開けた俺への気遣いだった

 

俺は苛立ち気味に、言葉をぶつけた

 

  何言ってるの、竹刀ちゃん

  流石にこの状況は俺が十割悪いよ

  確かに「真剣勝負」に悪いも良いもないけれど

  でも君は全然本調子じゃなかったじゃないか

 

俺は一呼吸おいて続ける

 

  今更仕切り直しも難しいけれど

  何より俺はこんなの勝負とは認めな…

 

君の小さな手が弱々しく俺の口に触れる

 

「それ以上言わないでほしい」という事か

全く、ふざけている

 

(いくらなんでも俺にだって「矜持」ってものがあるよ)

 

それにさっきの攻防は全てがおかしかった

最初は互角に見えたけれど、駆け出した時、韋駄天の君にしては何かに引きずられてるのかと思うほど遅かったし

 

それに俺が君を貫いた件もだ

 

無意識だった

何にも覚えていなかった

 

ただ、何か妙な感覚だけがあった

急に信じられないほど力が増したような…

 

いや、違う

今もだ

俺の体が変化している

 

でも不思議と苦しいわけじゃない

とても温かいものに包まれているような感覚

 

君の手が今度は俺の手を取っていた

全くこういうところは相変わらずズレてる優しさの君だ

怒りたいのに、君の不器用な優しさに触れると、怒りが氷解していって仕方ない

 

  ねえ、竹刀ちゃん、あのさ

  正直に話しておくれ

  君は何をやった?俺に何をしたの?

 

君は何か伝えたいらしく両手を力なくパタパタさせようとしている

やはり仕草が小鳥そのものだ

 

  ああ、無理に動かなくていいよ、今治療を

 

君は頭を振った

俺はまた怒りが沸々と込み上げた

 

  だからそういうところだよ、竹刀ちゃん

  今は素直に俺に従ってよ

  いくら君でも、これ以上わがまま言うと怒るよ?

 

もう俺は勝手に治療した

以前と違って治りが遅いみたいだから、即、完全回復とかはちょっと厳しそうだけど

せめて口くらい、ちゃんと使えるようになってもらわないと

 

  どう?竹刀ちゃん、ちょっとは喋れるくらいになった?

 

竹刀ちゃんは口を上下左右に少しずつ開く

 

  あ、え、あ、あ、あー…えー…う…

  は、はい、なん、とか、

  あ、りがとう、ござい、ます、です

 

腹に空いた穴も直したいけれど、こっちはてんで効果がないね

まあ不死身な子だし、流石に放っておけば治るだろう

 

  あの、えと、申し訳、ござい、ません、です

  ちょっと、えと、「実験」を、させて、いただき、まして、です

 

  実験って何の…?

  

俺は実験台にされたらしい、なんで?

 

君は言い淀む

黄緑の瞳が露骨に曇る

 

それから少し間を置いて、全然違う事を話し出した

 

  ごめん、なさい、です

  私、私、は

  あなた、に、伝え、ないと、いけな、い、こと、が

 

俺を力なく見上げる君

 

  狩衣、さん、

  聞いて、下さい、ませ、です

  私、は、

 

  うん…

  

君の瞳がとても真剣な様子だったから俺はゆっくりと先を促した

ようやく、ずっと君の口から言ってほしかった「言葉」が聞けるのだろうか

でも雰囲気からして多分…違うんだろうな

 

いつの間にか、君は目尻に涙を溜めてしまっている

拭いてあげるべきだろうか

 

迷った俺は代わりに触れるだけの口付けをした

瞬間、君の頬に一雫が垂れた

 

  ちゃんと聞くよ

  だから…

  話しておくれ

 

俺は今度こそ君の頬を指の甲で拭った

 

君は一度、目を閉じてそしてゆっくりと開いた

俺の大好きな美しい黄緑の瞳

 

  私、は、あな、たに、酷い、事を、しました、です

  とても、「酷い」、事を、

 

  うん…

 

  あなた、の、赤ちゃん、

 

  え?

 

  あなた、との、「赤ちゃん」、できまし、た、です、

 

  え?

 

  ふた、り、

 

  え?

 

  ふたり、でき、ました、です、

 

  ええ?

 

  でも、ごめん、なさい、です、

 

  え

 

  私、私、は、私、が、こ、ろ、

 

  ……

 

  ころ、し、ました、です、

 

  ……え?

 

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